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カラスについて



公共の場でのカラスの哲学


朝、公園に行ったらカラスと目が合った。いや、正確には「目を合わされた」と言うべきかもしれない。だって、こっちはベンチに座ってただけなのに、カラスがわざわざ近寄ってきて、まるで「お前、本当にここに座ってていいのか?」と言わんばかりの眼差しを向けてきたのだ。私はその瞬間悟った。この公園は、実は私のための場所ではなく、彼らの縄張りだったのだ。


カラスの無言の圧力


まず、カラスは何を考えているのか。彼らはいつも黙っているが、その沈黙が怖い。なんであんなに静かなのに、存在感が強いんだろう。ベンチの上に座っていたら、カラスが少しずつ近づいてくる。まるで、「ちょっと、そのベンチ、誰のものだと思ってるの?」と言いたげに、じりじり距離を詰めてくるのだ。


ここで私が恐怖を感じてしまうのは、「もし私が何もせずにこの場を去ったら、負けたことになるのではないか?」という妙なプライドだ。いや、カラスにプライドなんて見透かされるわけがないのに、私の中で勝手に「ここで立ち去るのは敗北だ」と決めつけている。だから、私は動かずに頑張った。でも、カラスはさらに近づいてきた。今度は目を細めて、何か計算しているような顔をしている。


彼らの知性の底知れなさ


よく考えれば、カラスは本当に頭がいい。ゴミ袋を突っついて中身を引き出すテクニックもそうだし、車が行き交う道路にクルミを置いて、車に割らせるなんて話も聞いたことがある。つまり、彼らは私より賢いのかもしれない。だとしたら、この状況も完全にカラスのシナリオ通りなのではないか?


「まずはこいつの近くに立つ。次に、わざと羽ばたいて驚かせる。最後に、餌を奪い去る。」そんな作戦会議を空の上でしていたのだろうか? だとしたら、私はカラスに踊らされるただのピエロだ。いや待て、もしかしてカラスにすら気づかれていない? だったらそれもそれで屈辱的だ。


公園における心理戦


そして、その瞬間だった。私がパンを取り出した途端、周りの木に隠れていた仲間たちが一斉に飛び立ち、私を取り囲んだのだ。なんだこの圧倒的な軍勢は。私は完全に孤立無援だ。「なんでお前らはこんなに結束力があるんだ!」と叫びたかったが、実際には何も言えず、ただパンを持ったまま硬直していた。


「ここでパンを差し出せば、平和が訪れるのではないか」と一瞬思った。しかし、パンを渡せば彼らがさらに調子に乗り、次から次へと要求を突きつけてくるだろう。「明日はもっと高級なパンを持ってこい」なんて言われたらどうしよう。いや、言葉は発しないだろうけど、目と行動で伝えてくるタイプだ。


カラスと人間の共存


結局、私が学んだのは「カラスとは人生そのもの」だということだ。どんなに準備していても、突然予期せぬ存在が現れ、全てをかき乱していく。そして、その存在に抗うべきか、受け入れるべきかで悩むのも人生だ。私はパンを一口食べ、残りをそっと地面に置いた。


カラスたちはそれを見て、満足げに集まっていった。私はその場をそっと立ち去った。敗北感? いや、むしろ解放感だった。カラスにパンを奪われたことで、私は自由になったのだ。次回公園に行くときは、もっと固いパンを持って行こうと思う。そして、また彼らと戦うことを誓った。


でも、次はちゃんと勝つ。もしくは、カラスが何か別の哲学的なメッセージを私に残してくれるかもしれない。

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