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四月

作者: 武田道子
掲載日:2024/10/22

四月




入学式があった

小学校、中学校、高校、大学にも

それぞれの校門や校庭のあちらこちらに

桜の木々があった

他の木々がやっと目を覚まそうとしている頃

桜の並木は揃って

私たちを迎え入学を祝ってくれた



甘い香りがふわふわサラサラと降り注ぐ

学校の門を通る儀式

春の光で洗礼を受けた生徒の群れが

弾けるような微笑みを撒き散らす

不安に曇る思いは隠して

桜色の天蓋を仰ぐ



式典は華やかで

希望を持たせ夢を見させる

満開の桜に見守られ友達は

共に春を迎え、春に去る

花びらの行くへは・・・

その時はまだわからない



希望と喜び、期待と不安

鞄はパンパンに膨れて

花びらの舞うピンクの絨毯の上

ふわりと花びらは靴先に踊るように舞い上がる



このピンクのカーペットの上を歩くたびに

胸のドキドキで

低い踵の靴なのに

足が乱れて転びそうになりながら

そんな素振りを見せないように



五月になれば

硬い椅子が慣れてしまい

誰かの残した机のいたずら書きも気にならなくなり

六月になれば

先を担う少し不安な未来に

向き合えるようになる



七月、八月

暑い、暑いと言いながら

夏休みが来て

あっという間に入道雲が鱗雲に変われば

秋の運動会や遠足

楽しくても、面倒でも

青春はたった一度だけ



クリスマス

誰かとちょっとロマンチックに・・・

想像すること、夢みること

今はそれだけ、いつかきっと



お正月には・・・

今年も・・・

今年は・・・

どうか、どうか

願いが叶いますように

初日の出



バレンタイン

ハートに撃った槍は

当たらずじまい

外れて別なところへ

誰かからのチョコは・・・

ちょっと苦い



卒業、入試

就職、入社

時は四月

めぐる季節に

散り行く桜

一年は淡雪の如く

迎えれば過ぎていくもの



懐かしさははらはらと

庭の大きなソメイヨシノ

柿色、夕焼け色に染まった葉は舞い落ちる

落ち葉を掃き寄せると桜餅の香り

甘い切ない青春が蘇る

少しだけ心は掻き乱され

古くなった映像は陽炎のように揺らぎながら

ためらいがちに私を見つめ返す









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