020 お通夜
一日空けてお通夜、翌日が告別式となると実千代のお父さんから実千代のSNSで連絡があった
矢部はあまりのショックに仕事を3日休むことにした
リハビリスタッフには何で?と聞かれたが話をテキトーに流し迷惑をかけて申し訳ないと伝え、病棟師長さんから1週間くらい休んでも良いと言われ少し救われた
お通夜の日、心此処にあらずといった状態で礼服を着込み暑い夕陽を浴びながら30分も歩いて葬儀場に向かった
普段なら車に乗るが気分的にも体の状態的にも事故らずに運転する自信がなかったからだ
葬儀場に付くと受付を済ませて故人の思い出の品や写真を見た
こんな顔で笑うのか
子供の頃から可愛いいな
病室ベッドにあったぬいぐるみだ
病院のお祭りの写真だ、楽しかったな
「矢部さん、もう来たの?早いね」
「お父さん、この度は…」
お父さんの顔を見たら目が腫れすぎて面白すぎる顔に泣きそうな気分の自分がぶつかり合って声が出なかった
「残念だよ、まさか娘の方が先に逝くなんて
ウェディングドレス姿くらいは見られるもんだと思っていたのになぁ」
「できればその隣に立ちたかったですね」
それ以上に会話が続かなくなり数分ぼんやり
「そうだ、実千代のスマホに写真がいっぱい入っていてね」
「よく撮ってましたよ」
「矢部さんと2人の写真がいっぱいあったよ」
「自分のにもいっぱい入ってます
アルバムにして送りますね」
「ありがとう、時間はあるなら入院中の話でも聞かせてもらえるかな」
「はい」
何故か親族席でお母さん含め3人で並んで座り入院中の話を時系列で話をした
「矢部さんのリハビリするって面白いこと言うわね」
「ホントに驚きましたけど、ちゃんとしてくれましたよ」
「あらぁそれは良かったわ」
人が集まっては来たが親族席には誰も来なかった
「パパは跡取りだったんだけど駆け落ち同然で出てきたから家族としてはあんまりね
私は一人っ子で両親も亡くなったから誰も来ないわ」
「そうでしたか」
「じゃあ矢部さんはそこにいて下さいね」
「あ、はい」
場違い感全開、親族席の3番目に座っている矢部は落ち着かない
友人は多く親族席まで友人だらけになっているがお焼香の順番は両親の次に何故か一人で立たされ、その後で友人等が焼香に立った
流石に高校生、みんな若い
ガングロギャルにヲタクっぽい学生服勢、金髪白ヤンキー、短ランツッパリ頭のお兄さん達、40〜20年前くらいかなと思うような方々が集まっていた
「明日は告別式となります、ご都合の付く方もそうで無い方も時間の許す限り顔を見ていって上げてください」
お父さんが深々と頭を下げ、閉会となった
友人等が棺の前に集まり実千代を覗き込んでは涙を流している
「矢部さんも覗いて上げて、キレイだから」
「はい」
2・3歩分下がって両親と並んでいたが友人に混じって覗き込んでみた
服は白無垢のようにガーゼを合わせており髪まで結われて三々九度の神前式にでも出るような装いだった
「ね?キレイでしょう?」
「キレイだ」
矢部の目からボロボロと涙が落ちた、もうそろそろ枯れたかなと思うほどに流した涙もダムの放水待ちだったらしい
「一人っ子だと思ってたけどお兄さんですか?」
ヤマンバギャルが矢部に聞いてきたが矢部の目が潤みすぎて声もすぐに出なかったらお母さんが答えてしまった
「彼氏よぉ〜、もうねぇ凄かったんだから
そろそろ心臓止まりそうってなったときに駆けつけてギュッとしてムチューってしちゃうくらいラブラブだったのよ
お母さんハラハラしちゃったわ」
「えーサイコーじゃないですかぁ、ミッチーマジのディスティニー!」
「ディスティニー!」
自分の顔が破裂しそうなほどに赤くなってるのが分かる
「恥ずかし」
「顔赤え!うける!でもっててぃてぃ!」
「てぃてぃ!」
最早よく分からん
「あぁ〜土産話置いて行き過ぎだわ
フレンドリーだけど奥手のミッチーが実はやることやってたってヤバめ」
「やっべてぃてぃ」
実千代はギャル達から崇められた
「化粧しないでも可愛いい実千代が化粧すっとこんなキレイになんのな、ガングロに塗り直してやっか」
「閻魔がパネェな!バイブス上がるってなっちまう」
「古ぅ!やめとっか!じゃあ彼氏さんあと任せた」
「ん、ありがとう」
「嫁に貰えなくて残念だったな」
「そうなんだよ、なんとか言ってやってよ」
「逃した魚はでっけぇなんてもんじゃない、龍んなって天高く登ってったんだ」
「それウナギ」
ウナギが掴めない〜なジェスチャーだった
「あんたじゃもう追い付けねぇ、同じ道を行くのはもっと先だ、別の道に行くしかない
大事なのはタイミング、逃したらおしまいってことよ」
「分かった、ありがとう」
ギャルの掛け合いは不明だが言っていることは至極真っ当でなんならオッサン臭ささえあった
何故か涙は収まり、ギャルの笑顔がしっかり見ることが出来た
「ミッチー、ウナギみたいな龍になったんだとよ」
笑っているような顔でただただ聞いているだけで何も喋ってはくれない
今度は近所の方々だろうか実千代を見ては「まだ若いのに」「順番変わってやれりゃな」という声が聞こえてきた、中には「白無垢、私も着たわ、アナタ似合ってるよぉ」なんていう認知症に足突っ込んだようなお声も聞こえたりもした
お年をめした方々はそのまま流れるように別の部屋の御斎の会場へ向かって行くのが見える
「では、私もここで」
「ご飯食べてって」
「あ、はい」
御斎の会場は近所の人が殆ど、お友達は数人が親と共に残っている程度だった
「おぉ、彼氏ちょっとコッチ来い」
「はい」
近所のオジサン等に捕まったが最後、苦手な酒を飲まされ即刻グロッキーで意識を失った
「コップの半分で倒れちまったんだ」
「矢部さん下戸って聞いてたけど本当なのね」
「畳に枕あれば大丈夫だろ、寝かせとけ寝かせとけ」
お母さんに枕を差し込んでもらったことすら分からずにグッスリ眠ってしまった




