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015 異変

20分間の恋人 015



 祭りの日から数日後、いつも通りに矢部が実千代の部屋にやってきた



『コンコンコン』


「はーい」


「お邪魔しまーす」


「キタ!」



 矢部がドアを閉め終わるタイミングを見計らって実千代は矢部に飛びつき、矢部はドアから手を離して実千代を受け止めて抱きしめた



「今日も運動?」


「とりあえずそうしようかな」


「いつも思ってたんだけどなんで運動するの?」


「免疫を上げる為と赤血球の変異があったから運動効果と酸素化を測る為と体重を増やすこと、あとは適応になる治療が見つかったときにすぐに始められるようにかな」



 抱かれて上目遣いで見ていた実千代がちょっと離れて目線を下げた



「治療なんてもう無いんでしょ?」


「あの脳外科の川内先生が諦めるわけがない

 医療コーディネーターにも相談してるだろうし新薬だって検索し続けてるはずだよ」


「何かあるかもってこと?」


「『かも』だけどね」


「望みは薄いか」


「日進月歩だから0になることは無いね、俺は最終的にロボットになってでも生きたいと思ってるからさ」


「コワ」


「地球滅亡して宇宙人に拾って貰って別の星で暮らすのさ」


「頭イカれてるんじゃない?」


「失礼な!ネジが外れてるだけだから!」


「同じじゃん!」



 手を繋いで病棟を早足で腿をしっかり上げて歩く…が違和感を矢部は感じていた



 左の爪先が上がってない、重心が偏ってる?



 極々僅かな変化で本人も気付いていないレベルだが手を繋いでいることもあり矢部には伝わっていた



「疲れた?」


「ううん、なんで?」


「じゃあ、酸素測ろうか」



 パルスオキシメーターで確認してもSPO2も下がっておらず脈拍数もそれほど変わりない



 脳内か脊髄に転移か?腸骨転移部の拡大か?



「足があんまり上がってなかった気がしてね」


「そうかな、いつも通り上げてたけど

 心配になるからしっかり見といて!」


「分かった!ちゃんと見る

 寝て足の筋力を見よう」


「エッチ」


「Wow」



 傍から見ればヨガマットに女の子を寝かせて上から迫っているように見えるだろう、医療行為として許してほしい、ホントに、切に願います



「筋力的には変わり無いな、喋るのに集中しすぎてた?」


「でしょー!変な心配させないで」


「ごめんね〜」



 足の筋力的には…であり矢部は明らかな低下を見つけていた



「じゃストレッチ〜」


「恥ずかしいからさ、タオルズレたら直しておいて」


「はいはい」



 7月10日以降は病衣ではなくジャージで動くようにしており開脚すると生地がストレッチされて大事な部分の形が露わになってしまうので実千代は恥ずかしがってタオルをフンドシのように置いていた



「目、というかなんだろう

 ヒロちゃんさ、なんだかエロい顔になるときがあるよね」


「そうらしいんだよ〜、マスクしててもさ看護師さんに『ニヤついてる』ってバレるんだよね」


「バレるってことはニヤついてるんじゃん?」


「まぁそうなんだけどさ、可愛い娘を見たらなるでしょ?ならない男の方がどうかしてるでしょ」


「えー仕事中は真面目に頑張ってよ」


「下心が隠しきれないんだねぇ」


「ダメ男に惚れたかもしれない」



 2人は笑った



 ストレッチが終わると手を繋いで部屋に戻り洗濯物を畳んで片付けベッドメイキングをしてソファで少し話しをしてキスをする



「毎日してもドキドキする」


「ドキドキしなくなることはないでしょ」


「そういうもんなんだ」


「夫婦になれば変わるかもしれないけど」


「20分間の夫婦じゃ喧嘩で終わりそう」


「たまには良いかもね」


「嫌だよ〜」


「じゃまたね」


「うん」



 部屋を出た矢部は一度スタッフルームに戻り佐藤医師に報告をした



「14号室の相崎実千代さん体幹に筋力低下が出てきています

 おそらく膵臓かその辺りに転移しているか腹水か」



 佐藤医師は溜息をついて直近の血液検査の結果を見せた



「分かる?」


「白血病ですか」


「違う」



 実は一桁ずらして表示していた、佐藤医師の残酷なイタズラだった




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