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014 おもてなしデー


 7月10日、結婚記念日おもてなしデーがやってきた



「今日は仕事休んできましたー!」


「うちはアニバーサリー休暇があるから使ってきたわ〜」



 昼前の11時半に実千代の両親がそろって登場した


 今回の催しは当初実千代と矢部の2人で計画し始めたが管理栄養士を巻き込み佐藤医師と湊師長に企画を話したら結構な時間を矢部に割いてくれた



「きゅうりの一本漬けに焼きそば、ホタテ焼き、パイン串、チョコバナナか〜全部実千代が作ったのか?」


「きゅうりの一本漬けは栄養士さんでホタテ焼きはヒロちゃん、他は私!」


「そうか〜手作りの焼きそばか〜」


「なかなか良い出来だと思うよ!座って食べよう」


「はいはい」



 30分前からチョコバナナを作り焼きそばを炒め、パインを切って割り箸を刺して氷に並べるとあっという間に時間が過ぎた

 焼きそばとチョコバナナは事前におやつタイムで矢部と練習していたためかなりスムーズに進められたのが功を奏した



「結婚記念日おめでとう!」


「お、ありがとう!」


「パパ、また忘れてた?」


「ママ、いつも忘れてるみたいな言い方はやめてくれないかな?今回は特別さ、銀婚式だよ?ママこそちゃんと分かってた?」


「いや〜年数は忘れてたかも」



 あはは〜と誤魔化し笑いをする夫婦をみながら矢部とGGが目配せをした



「銀婚式おめでとうございます」


「矢部さんや銀婚式って何年?」


「25周年」


「スゲ〜おめでとうございます」



 GGは銀婚式知らなかったらしい



「ありがとうございます」


「私達からは場の提供しかできませんがゆっくりしていってください」


「ありがとうございます」


「ではごゆっくりと言いたいところですが焼きそばの青海苔が顔に付く前に記念写真を撮らせていただこうかなと思いますが如何でしょうか?」


「お願いしようかしら、化粧が崩れる前に」


「お願いします」


「では3人寄って頂いて写真撮りますよ、カメラを見て笑顔でぇ〜3足す9は?」


「「「じゅうに!」」」


『シャシャシャシャシャシャ』


「OKです!」



 矢部は褥瘡用のマクロ撮影可能なカメラの連写機能をフルで使った



「何で3足す9なの?」


「あれ?ミッチー知らない?

 3と9でサンキューで気分良いでしょ?」


「うわホントだ、気付かなかった」


「で、『ジュー』の口を作ると目が開き易くて『ニ』でそのまま口角が上がるのよ

 瞬きが少なくなって且つ修正しなくてもいいくらい目が開くのさ」


「最高じゃん!」


「でしょー!」



 イエーイと自然にハイタッチする2人の変化に両親は何かを感じたがその場では何も言わなかった



「ではプリントアウトしてお渡ししますね」


「ありがとうございます」


「データは実千代さんに渡しますので後で貰って下さい」


「丁寧にどうも」


「ではごゆっくり」「ごゆっくり〜」


「待った!2人も一緒に入ったのも撮ってくださる?」


「では、ちょっとお邪魔して」



 矢部とGGは5人の写真を撮ったあとその場から離れ家族水入らずの時間を作った



「ママ、結婚25周年ありがとう

 色々考えたけど3人が付けられるものでって思って指輪にしたんだ」



 お父さんは鞄から箱を出してパカッと開けて見せた



「純銀なんだ、だから身につけたら毎回手入れをしないといけない

 お互いを想い合う気持ちだと思えばそれも良いかなってね」


「パパ」


「私のはどれ?」



 うっとりママの余韻をぶち壊す実千代を見て若いってそうだよねと頷くパパ



「実千代はチェーン付きのだよ、病院はリングダメって聞いたから」


「チェーンも純銀?」


「いやスターリングシルバーっていう不純物が銅だけっていうちょっと良いやつだ、純銀だと簡単に歪むし壊れやすくなるからさ」


「へ〜付けて良い?」


「ああ、いいとも付けてあげるよ」



 パパはチェーンごとリングを抜いて実千代の首に付けた



「ネックレス初めてかも」


「実千代はあんまり飾りっ気無かったもんね」


「おしゃれする場所もなかったし」


「そうねぇ」



 お母さんはちょっと申し訳なさそうな表情を見せた、お父さんはそれを見過ごさなかった



「じゃ次はママのが見たいな」


「そうね!私はパジャマにしたの!

 3人色違いリネンのサテン生地ので気持ちいいの〜」



 お母さんは緑、黄色、ピンクの包袋をそれぞれに渡した



「コレは気持ちいいな、これからの時期に最高だ〜」


「なにこれ!スッゴ!ツルツルじゃん」


「でしょ〜、一目惚れしちゃったのよ」



 3人がパジャマパーティ状態になったときに矢部が戻ってきた



「うわぁ〜いつの間にかパジャマパーティ」


「あっ、恥ずかしいところを見られた!」


「矢部さん、出来上がりはどうでした?」


「最高の写真ですよ、ここに置いていきますね」



 キッチンカウンターのところにA3でプリントアウトして飾り付けされたアクリルフレームに入れられた写真が立てられた


 フレームには

 『パパママいつもありがとう

  結婚記念日おめでとう!ずっと大好き!』

 と描かれていた


 写真は全員がしっかり前を向きつつも両親が左右から実千代に寄りかかり優しく微笑む写真屋さんの出来上がりだった



「ヒロちゃんヤバいな、こんな写真をあの瞬間に撮れるってさぁ、凄いよね〜」


「分かるわ〜フラッシュも前じゃなくて上だったしね、前だと化粧がギラついたり顔が浮いたりするのよ〜」


「病院って一見分からないように若干上から撮ってる感じになってるのも良い具合だな

 多分何度も写真を撮る位置をシミュレーションしたんだなぁ」


「関心するわ〜」



 何故か妙なところで矢部の株が上がった



「じゃ食べましょう、せっかくの料理が冷めちゃうわ」 


「そうだ!実千代が作った焼きそば食べないとな」


「上手く出来てますように」



 実千代は頂きますで手を合わせた格好で呟いた



「旨い!お祭りの屋台の味!」


「青のりじゃ出無いんだよね〜青さ粉って指定されたときに『できる人だわ』って思ったもの〜」


「それさ、ヒロちゃんが言ってたんだけど何が違うの?」


「そのまんまよ、青のりを乾燥させると粉末になって青さは乾燥させても大きく残るの、あとは香りね〜青のりの方が強いのよ、ソースに勝つくらいね」


「へぇ〜」


「あとはお父さんの方の屋台には揚玉入っているけど入れなかったのね」


「あっ!それだ!2回練習したときにちょっとずつ足りない気がしてたけどそれか〜」


「次は入れてね!」


「任せといて!」



 お母さんがさり気なく未来の予定を置いた、願望でもあるし希望でもある確約したい予定だった



「ホタテは酒だな」


「す〜ごい美味しい!味噌の卵とじ真似する!」


「ご飯に掛けて〜な〜」



 ホタテ旨いわ〜と全員一致だ



「きゅうりの浅漬けは三五八の鷹の爪入りね

 変な元を使ってないからエグみが少ないし麹の甘みが効いてるわ〜」


「これも酒だな」


「パパ全部酒じゃなーい!」


「良いじゃないか!最近飲んでないんだから」



 お父さんは酒好きらしい



「チョコバナナ懐かしい、子供の頃にねだって食べたわ」


「俺もだ」


「私はあんまり食べた記憶ないかも」


「そうね、貴方はパインだったもの」


「パインで車の中ベタベタにしたもんな」


「記憶にありませーん」



 チョコバナナにパイン串まで食べ終えると皆お腹いっぱい、ラウンジの椅子で温かいお茶を淹れて腹を休ませることにした



「私、好きな人が出来た」


「あらやっぱり」


「矢部さんか」



 両親の返答に実千代はちょっと口が開いてしまった



「なんで気付いたの?」


「ハイタッチ、息ぴったりだったわよ」


「パパはちょっと嫉妬した」


「流石親、よく見てる〜

 でね?リハビリの時間の20分間、恋人をすることにしてもらったの」


「20分で何するの?」


「何って運動にストレッチに今回の企画に調理練習にと色々よ」


「リハビリね、一人暮らしの練習に彼氏が入ったってことじゃない?」


「ちょっと妬けるな」


「それがね、聞いてよ彼ね…」



 実千代は矢部の衝撃の話を家族にも話した

 お父さんは事前に少し聞いていたが思ったよりトラウマな内容で顔が引きつった



「そんなことがね…」


「ドラマ見たいな話だね」


「ね〜驚いたわ

 だからヒロちゃんにもリハビリになるんじゃないかって思ってさ、どうせそんなに長くないし」


「どういう意味?」



 お母さんは本人の表情的には良い方で話しているような気がして聞いてみた



「白血球上がって来たって先生が、赤血球の形が違うのが増えてきたとも言ってたけど今のところなんとも無いしね」


「退院できるの?」


「今月中頃の検査で相談かなって言ってたよ?」


「ヤッタじゃない!」


「それは頑張らないとな!」


「うん!もう少し我慢我慢」


「我慢じゃないわ、一人暮らし練習楽しんで」


「分かった!」



 その日はお母さんが泊まってくれたためこの日までの出来事を夜遅くまで色々話した


 矢部を好きになったきっかけは間違いなくココ!というタイミングは分からない、でも毎日楽しませようとしてくれたこと苦しいときに傍に居てくれたこと、毎日笑顔でいさせてくれることと語った実千代の顔は恋をしている顔だったとお母さんは後に話していた


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