011 眠れない夜、君のせいだよ
夜、何故か寝付けなかった実千代は部屋を出て奥のラウンジまで歩いて外を見た
病院は基本9時消灯、外をみればまだ人が歩いておりカップルが手を繋いで歩いているのも見えた
「いいなぁ」
誰もいないと思っていたからこそ心からこぼれた一言だった
「何が?」
「うわ!?師長さん」
一言でいえば美魔女で艶女の湊師長さんが居たことに驚いた
「今日ね、夜勤なの」
「師長さんでも夜勤あるんですね」
「そうよ、月数回だけどね
なんか飲む?寝れないならホットミルクとかココア、ハーブティー、白湯とかどう?」
「じゃあハーブティーで」
「OK」
湊は二人分のハーブティーを淹れてカウンターに来た
「隣座って良い?」
「どうぞ」
窓際のカウンターテーブルに少し高い椅子があり下を見下ろせば大きいスーパーマーケットのフードコートで食事をする人達や車の出入り、一部で歩く人も見ることができた
ハーブティーはとても落ち着くいい匂いを漂わせていた
「師長さんは17歳の頃って何してました?」
「17かぁ、部活かな
バレー部で全国大会目指して毎日トレーニングだったわ」
「エースですか?」
「モテ具合はエース、ポジションはセンター、一通りやれるオールラウンダーだったわ」
「それっぽい」
「でも高校3年生の地区大会1回戦で負けちゃってね、不貞腐れたわぁ
日替わり彼氏とかね、今となっては何であんなことしてたのか分からないけどさ」
「日替わり彼氏とか小説の世界みたい」
「そう?意外と要るわよ、日替わり愛人作ったり当直日の仮眠室に若い看護師連れ込んだりクソみたいな医者もいっぱい要るわ」
「川内先生も?」
「アレはモテナイからキャバクラで煽てられて終わりよ」
「あははは、なんとなく分かる〜」
全く知らないところでディスられる川内先生は今日の当直医で仮眠室で熟睡してたりする
「実千代さんはどう?ちゃんと生きてる?」
「分かんない、でも脳外科に居たときよりずっと人間らしい生活をしてる気がする」
「それなら良かったわ
何かしたいことある?ここでじゃなくてもいいわ、願望ってところで」
うーんと唸って実千代は考えてなんとなくの答えを出した
「恋愛?結婚…かな」
「16過ぎてるからできるじゃない」
「法律的にはですけどね」
「良いんじゃない?誰か良い人いる?」
「彼氏は居ないから」
「気になる人は居るってことね」
「…」
「矢部ちゃんだ?」
「え!?」
「恋する乙女の顔になってるわよ
もし矢部ちゃん落とせたらここで結婚式やってもいいわよ?料理は矢部ちゃんが作るし、カーペットとか多分病院にあるわ、ウェディングドレスは矢部ちゃん作るんじゃないかな?花屋は一階にあるからブーケはOKでしょ?客は患者さんと看護師と医者、家族と友達呼べば出来ちゃうよ」
「話が大きくなってきた、落とすも何もまだ全然ですよ」
「そう?別の部屋のおばあちゃんなんて積極的よ〜、腕を絡めておっぱいの谷間に押し付けてアーンしてるんだから」
「うわぁ、私にはできないわ」
「そりゃそうよ、認知症でリミッター外れてるからできるの」
「そういうことぉ〜」
「そうそう、でもね、元からそこまでやれる人だったってことなのよ
適切なボディタッチと距離感と私だけ・俺だけって思わせる何かが必要なのよ、私は出来なかったけど」
「独身ですか?」
「そうよ、彼氏は何人もいたけど旦那はできなかったわ
今思えば結婚して子供作って家族でなにかしてって人生もあったのかなって思うわ」
「まだイケそうですけどね」
「今子供作っても障害持った子が出来そうで怖いわ」
「えー大丈夫ですよ」
「じゃあ矢部ちゃんから種もらわなきゃ」
「種って」
「独身高齢看護師ってそんなもんよ、じゃあそろそろ行くわ
何がしたいかどうしたらいいか考えるより動くことも大事よ」
「はい」
「飲み終わったらキッチンのところに置いて、GGが明日洗うから」
「なんかすみません」
「いいのよ」
程よく鍛えられている湊師長のお尻はキュッと上がっていて綺麗だった
「あんな大人になれたらな〜」
不思議と涙が流れてきた
自分にそんな時間は無いんだろうなと思うとハーブティーの入った硝子のカップがとても温かく感じた




