表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

010 似顔絵


 そろそろメニュー決めないとかな〜


 実千代は漠然と7月10日のことを考えていた


 すでに入棟してから10日近く経ち、あと10日と予定が迫ってきていた



『コンコンコン』


「はーい」



 矢部が来るものだと思ってソファに踏ん反り返っていたら来たのは佐藤医師だった



「お邪魔しまーす」


「あ、サトちゃんだった」


「あからさまにがっかりしないでくれる?」


「そこまでがっかりはしてないけど」


「そういうことにしておくわ

 話は2つ、良い話と悪い話あるんだけどさ」


「悪い方から聞かせて」


「形状異常の赤血球が増えてる、骨髄異形成症候群の影響ね」


「体感的にはどんな症状が出る?」


「ちょっと動くと息苦しいとかかな」


「今のところ分かんないかな、良い報告は?」


「白血球数が戻ってきた、他の症状がなくてこのペースで白血球が戻れば7月半ばに退院の相談をする」



 実千代は一瞬思考が止まった



「超良い話!?」


「でしょー?と言っても赤血球の方で動けなくなったら意味がないから酸素の回り具合とかまた矢部さんに見てもらいながら動いてもらってね」


「うん!」



 じゃまたねーと軽い感じで帰っていく佐藤医師は顔には出さないが一抹の不安が残っていた


 そんなこととは露知らず『帰れる〜』と鼻歌交じりにウキウキ気分の実千代はソファの上で背泳ぎをした



「背泳ぎ出来んの?」


「うわっ!ノックしてよ」


「ノックしたよ、返事がないしバタバタしてるから結構慌てて入ってきたらこれだもん」


「それは…すみませんでした」


「で、今日何する?」



 ソファで膝を立てた実千代の足側に矢部が腰掛けた

 矢部はいつぞや色塗りした紙を既に見つけていてその話だろうなと見当はつけていた



「この前の料理、大幅変更でもいい?」


「良いと思うよ、食べたいものを食べよう」



 実千代はムクッと起きてフルコースの紙を裏返した



「焼きそば食べたい!お祭り屋台の!」


「ほ〜良いじゃん」


「でしょ?それだけで良いかなって」


「マジカヨ」


「お祭りに味噌汁は無くない?」


「そうだけどさ氷に乗っけたキンキンに冷えたきゅうりの一本漬けとかスプレッドかけたチョコバナナとか祭りっぽいのあるでしょ?」


「うわぁそれサイコー、パイン串大好き」


「イカ焼き、ホタテ焼き、玉こんにゃくとかうまいもんだらけよ」



 矢部が指折り数えながら旨いものを列挙していく



「イカ焼きとホタテ焼き食べたことない」


「イカ焼き臭いからな、小さい子には買わないかも汁が付くと取れないしさ

 ホタテは殻焼きで卵とじになってるタイプのが最高に美味いんだよ」


「ホタテ焼き食べた〜い」


「屋台風ならそんな面倒じゃないけど生の食材はGGに相談してからだけどね」


「分かった!じゃ焼きそば、パイン串、きゅうりの一本漬け、チョコバナナ、ホタテ焼きで決定ね」


「お祭りだ〜」


「当日は法被よろしくね」


「あ〜分かった病院の借りてこよう」


「病院に法被あんの?」


「地域の夏祭りで踊るからな」


「ヒロちゃんも盆踊るの?」


「盆踊ったわ」


「へー似合わなそう」


「ウルへー、法被は似合わないけど足短いから浴衣は似合うぞ、多分、ちょっと」


「私も似合うかな」


「足長いからスリットみたいになってエロスが際立つんじゃないか」


「17歳にエロスとか変態じゃん」


「よく分かったな、男は皆そんなもんだよ」


「やぁねー」



 そんな話をしながらまた矢部は絵を描いていた



「ヒロちゃんさぁ、絵めっちゃうまいよね」


「そうかな?普通だと思うけど」


「絶対普通以上」


「子供の頃はよく賞をもらったけどさ大人になってからは無いな」


「展覧会に出さなきゃ無いでしょ」


「そりゃそうだ」



 屋台風の絵を描き終えた矢部に実千代がお願いをした



「私の似顔絵とか描ける?」


「リアルに?漫画っぽく?」


「リアルに」


「OK」



 ナースステーションから一枚のコピー用紙を持ってきてクレヨンで描き始めた



「クレヨンで描くの!?」


「油絵っぽくなるから誤魔化しやすいんだ」


「誤魔化すって」


「まあまあ」



 赤、薄橙、青、緑、黑、白と多々持ち替えながら似顔絵を描いていく矢部の視線に実千代は胸のドキドキを感じていた



「出来た、まぁまぁの出来上がりだな」


「早くない?」


「そうかな、集中力続かない方だから頑張った方だよ?」


「そう?見せて?」



 矢部がクレヨンで描いた実千代は病衣ではなくマキシ丈ワンピースのような服になっており顔色も血色よく描かれ、何よりも優しく微笑む顔を見て実千代はちょっと照れた



「こんな顔してる?」


「うん、ふんわりの笑顔が可愛いよ」


「さらっとそういうことに言うんだね」


「言わなきゃ損だし、言われて嬉しくない人の方が少ないでしょ」


「そうかもねぇ〜」



 矢部の目には実千代の笑顔の方が絵に描いた微笑みよりとても可愛く儚く見えていた



「よし、またくるわ

 そろそろ隣の爺さんの足揉んでトイレ連れて行かなきゃならん」


「うん、ありがとう

 クレヨン貸して」


「いいよ、ナースステーションに返しておいてね」


「はーい」



 矢部が出ていってからも実千代は似顔絵を見てはニヤッと微笑んでいた





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ