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第七話 一騎駆け

翌日、日の出とともに遠征軍は行動を開始した。再び、鬼の『砦』を包囲する。


だが、士気は低い。

「あの仔鬼は、聖なる救世主ではないのか」

という噂が広まり、兵士が怯えていたからだ。


藤キチ朗は、総司令のユリ奈に進言する。

「あの、ダグゥドと名乗る仔鬼を、真っ先に討ち取る必要があります」


僕は、その役目を志願した。

「それなら出ます」

「いいでしょう。お願いします」

と、ユリ奈は許可する。


そこへ、イヌ千代が来て、

「俺の馬を貸してやる。一騎駆けをしてみせろ」


「一騎駆、ですか」


「一騎駆けは、戦場の華だ」

イヌ千代は、そう言いながら、僕の背中を、

バン。

と、叩いた。


この遠征の行軍中に、僕はイヌ千代から、乗馬を習った。だが当然、腕前は未熟である。


僕がイヌ千代の赤馬を借り受け、騎乗すると、


「おっ、一騎駆か」

「あの異世界人が出るらしい」

「出来るのか?」

「返り討ちじゃねえか」


足軽たちは、口々に勝手なことを言い出した。いつものことだ。


その足軽に向かって、イヌ千代は、

「てめえら、うるさいぞ!」

一喝する。


足軽たちは静まり返った。


静寂のなかで、

「行け!」

イヌ千代が馬の尻を叩く。


ヒヒイーン。

赤馬は一鳴きして、前足を上げ、棹立ちになる。


そして全速力走り出した。砦に向かって突っ走る、赤馬。


僕の一騎駆けを見て、

「おおう!」

味方の陣から歓声があがった。


ヒュン、ヒュン、ヒューン。


砦から、鬼の投石。


僕は砦へ銃口を向け、発砲した。


バン、バン、バーン!


砦の最上段から、投石していた鬼が一匹、転がり落ちる。


「おおーぅ!」

自陣からの歓声。


だが、砦からの投石は、激しさを増した。


ヒューン。ヒュン。ヒュ、ヒュ、ヒュ、ヒューン!


赤馬は投石の雨のなかを走り抜けて、砦の正面にでる。


僕は名乗りを挙げてから、

「一騎討ちを所望する!」

と、大声て叫んだ。


投石が止み、砦から、昨日の仔鬼ダグゥドが出てくる。

「イザ、尋常ニ勝負!」

手には『円盤型の投石』を握っていた。


僕は騎乗で64式小銃を構え、ダグゥドの頭に狙いを定める。


ダグゥドが投石を投げる、前に、引き金を、引いた。


バン!


弾丸が、ダグゥドの頭を撃ち抜く。


真後ろに倒れたダグゥドは、頭部から血を流し、ピクリとも動かない。当然、絶命したであろう。


この時、

「うおおぉぉーっ!」

地響きのような歓声が、味方の陣から沸き起こった。


この機を逃がさず、

「突撃ーっ!」

総司令のユリ奈が叫んだ。


戦いとは、時には単純だ。この一発の弾丸で勢いづいた遠征軍は、怒濤の勢いで、鬼の砦に攻め込む。


こうなれば多勢に無勢だった。


「砦の陥落も、時間の問題だ」

と、思った時、


砦から一匹の女性の鬼が飛び出してきた。豹柄の毛皮を纏っている。細く引き締まった体。綺麗だ。

「美しい」

僕は、思わず言葉を漏らした。


だが、次の瞬間。彼女は僕に襲いかかってきた。


金棒を振り回して、

「息子ノ仇!」

と、叫んでいる。


あの仔鬼ダグゥドの母親なのか。

グオォーッ!

吠えた。


彼女の振り回す金棒が、襲い来る。

バシン!

左肩を打たれた。


さらに、もう一発、

バシン!

背中を打たれる。

「痛いっ」


僕は落馬した。


なおも攻撃してくる彼女。

「死ネ、殺ス!」

このままでは殺される。


僕は跳ね起きて、筒先の銃剣で彼女顔面を斬撃した。魔剣ロンギニスが、美しい顔を斬る。


「ウギァッ」

彼女は金棒を捨て、両手で顔を押さえながら、大量の血を流す。


「止めを刺せ」

イヌ千代の声。


だが、僕は躊躇してしまう。その隙に彼女は逃げた。それでも、この直後に鬼の砦は陥落する。ひとまずは遠征軍の勝利だ。


赤馬は、僕が落馬したときに、どこかへ走り去った。だが、戦闘が終わった頃、イヌ千代の元に帰って来たようだ。

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