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第四話 『武将』平手ユリ奈

織田ナナ緒は少々困った領主であった。


まず派手好きであり、酒好きだ。未来城の兵士が酒盛りをばかりをしているのは、城主・ナナ緒の影響も大きい。


ナナ緒の酒癖の悪さには、僕も驚いたことがある。


ある月夜の晩、いつものように、城内の酒盛り場で藤キチ郎と飲んでいると、


突然、全裸のナナ緒が現れた。小姓の美少年たちを引き連れている。かなり酔っている様子だ。


「兵どもよ、飲んでいるか!」

と、両手を上げて、その美しい裸体を見せつけるナナ緒。


兵士たちも歓声をあげて、

「うおぉーっ!」

と、大盛り上がりになる。


さすがに僕は、

「あれは、ちょっと、まずいのではありませんか」

と、目のやり場に困ったが、

「なに、いつもの事だよ」

藤キチ郎は、ナナ緒の裸を凝視しながら、笑っていた。


それだけではない。ナナ緒には浪費の癖があるため、ありとあらゆる商人が未来城を訪れ、ナナ緒の『ご機嫌』を伺う。


そして、気分を良くしたナナ緒は、宝石や高価な着物など、無駄な物ばかりを爆買いした。


ナナ緒は愚かな権力者である。未来城の財政は、いつも苦しく、結局は領民へ重税が課せられた。


その有り様を嘆いているのが『武将』の平手マサ秀だ。マサ秀はユリ奈の父親であり、ナナ緒の後見人でもあった。


「ナナ緒様、そのような事では困りますぞ」


マサ秀は常日頃から口うるさく言ったが、ナナ緒は、まるで聞かない。


思い詰めたマサ秀は、

「このままでは、領民が不幸になるばかりだ。これは後見人である私の不徳」

ナナ緒を諌めるための手紙を残し『切腹』をして果てた。


介錯をしたのは、娘のユリ奈だという。なんという壮絶な父と娘なのだろう。


「ナナ緒様、これを」

悲壮な表情で、父の手紙を手渡すユリ奈。これを機に、ナナ緒は生活態度を改めた。



だが、その頃、未来城には大きな危機が迫っていた。百匹を超える鬼の大群が、領内へ攻め込んで来たのだ。


鬼の襲撃で、いくつかの村落は壊滅したらしい。多くの人が鬼に喰われている。


未来城では即座に、迎撃体勢を整えたが『籠城派』と『総攻撃派』で意見が分かれた。


武将の柴田権ロクは、ナナ緒の身の安全を第一と考え、籠城を主張する。

「防御を固めて籠城していれば、ひとまず、ナナ緒様の身は安全。鬼の様子を見ながら、反撃の策を練りましょう」


これに対してユリ奈は、総攻撃を主張した。

「こうしている間にも、領内の人々は、鬼に喰われているのです。今すぐ、城を出て総攻撃を!」


ユリ奈は父の跡を継ぎ『武将』に昇格している。

「ナナ緒様、ご決断を」

強い視線で迫る。ユリ奈。


ナナ緒は、そのユリ奈にニヤリと笑みを返すと、

「私は、城を出て戦う。具足を持て!」

と、その場で甲冑を身に付け、


「馬だ。馬を用意しろ!」


ナナ緒は騎乗して、城から飛び出す。後に続く騎馬の武者たち。


自ら軍勢の先頭を疾駆するナナ緒。

「鬼は、今、どこにいる」

「ご案内致します」

すでに情報を収集している藤キチ郎が先導した。


足軽の僕は、64式小銃を背負って、走って後を追う。


一本道の、はるか前方。騎兵隊が村落に突入するのが見えた。



走る僕が、その村落に到着した頃には、すでに勝敗は決していた。


戦いには勝利したようだ。


村落は静かになっていて、多くの鬼の死骸が転がっている。騎乗の武者は、馬から降りて、一息ついている様子だ。


ナナ緒も自ら、大太刀で戦ったのだろう。甲冑に、ベッタリと鬼の返り血を浴びている。


しかし、こちらの被害も甚大であるようだ。至るところに、村人と兵士の死体があった。主を失った馬が数頭、ウロウロしている。


「急いで、医師を呼びなさい」

ナナ緒が、傍らのユリ奈に命じる声が聴こえた。


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