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#8 攻略のフィナーレ! vs神獣エゴイズム後編!!

『うりゃりゃりゃ りゃあああああ!!!』


────ズガガガガドガンドンガラガッシャアアアアアアン!!!


瓦礫の雨あられがすっ飛んでくる。


知らない技が来ること自体は想定内。


相手もマジだ。新技くらい引っさげるさ。


……まあ、さすがにここまで配信者に優しくないのはシンドイが。


〈アレ、もうコレ……〉〈ムリムリわかんないわかんない〉〈上から見るだけじゃもう……〉〈大丈夫なの? てかどうなってるのコレ!?〉


「にゃっはは……そりゃワケわかんないよねー」


全面真っ白粉まみれ。


もう細かい被弾は受け入れながら苦笑する。


2カメの配信画面は既に、瓦礫と戦塵しか映ってない。もはや第三者に見せる体裁をなしてないと言えた。


ここらが潮時か。


「みんなここまでアリガト……あとはコッチでやり遂げる。あたし負けないよ!!!」


〈応援!!フレッ*⸜( ॑꒳ ॑ )⸝*フレッ〉〈負けないでフェアリーライダーズ!!〉〈がんばえー!!!!〉




同時視聴者数32500→34678!!!(HOT!!!)


視聴登録者数94000→95000!!!




……ありがとう、みんな。


声援が力になる。


じりじりと伸びる数字に勇気付けられる。


ここまでで充分。


楽した分と想いの力で捌ききる。


時に弾幕を硬い拳で砕きながら、少しずつ手応えを掴む。


「うむむ……やっぱ案外強度ないかな?」


取り巻きもそうだが、この広間の瓦礫も中々に脆い。


これくらいならあたし達の火力でも充分砕ける。


ぺろり舌を出し、崩れゆく衣服を気にしながら空をかける。


避ける。


砕く。


避ける。


砕く!


避け────


「────あだっ!?」


でも流石に受けきれない。


肩口に被弾し落馬を余儀なくされる。


「ッ……二号ッ!!!」


頼みの一号サマが遠ざかる。


そして下に落ちたら…………


「つり天井っ…………!!」


隙を逃がさない追跡。


空が落ちてくる。


一号サマは隙間をすり抜けたようだけど……狙われたあたしはそうも行かない。


手の弾幕の壁が降り注ぐ。


「や……ばっ!!」


咄嗟に転がり、壁際まで逃げる。


本来追い込まれてチェックメイトだが……さっきから崩れていた壁は結構横の隙間がある。


大き目の裂け目にアタリを付け、バックステップで転がり逃げ込む。


一瞬遅れて、ズガガガガンと墜落音が入口を蓋する。


「セェーーーーーーーーフ……」


『とでもオモってたのかい?』


「げげっ!!?」


読まれていた。


いつの間にか先回りしていた神獣エゴイズムが、穴の奥で待ち構えていた。


横穴の入口はまだ危険地帯、奥にはエゴイズム本体。


『おじいちゃんもう オコったもんね! もう二ゲバはないぞッ!!』


「そりゃお互いに……ネ!!」


いちかバチか、懐の火薬を取り出す。


『え……ソレあり!?』


「アリなんだよねー……あたしの場合はさーっ♪」


あたしの追放の原因となった忌まわしい爆薬……それでも使えるものは使う。


ここの壁の脆さに賭け即着火。


起爆。


灼熱。


「────にゃあああああああああ!?」


『ぬぉおおおおお おおおおおおおお!?』


まんま自爆の緊急回避。


なんとか亀裂を砕き広げ、亀裂の外へスポンと脱出。


「痛ッた熱ゥ……!!! ……でも生きてるっ!!」


ガツンと着弾、爆風で空いたスペースの数度転がり出ながら、さて次はどうしたものかと考えていると…………。


ピロン、と。


〈頃合いだ。思いっきり見せつけてやれ〉


コメント欄に雰囲気の違う投稿が入る。


こんなの送る人は一人しか居なく、わざわざ無言で伝えたのなら。


『…………さすがにフクロコウジで バクダンウケるのはコタエるぜ…………』


と、ちょうどノッシノッシと巨体を揺らしエゴイズムが亀裂から出てくる。


たっぷり黒くあぶられながらも、まだその闘志は消えてはいない。


『でももーそろそろ ゲンカイでしょ。 イイカゲンにケッチャク つけようぜええええ!!』


でもさすがに、近づくのはコリゴリと思ったか。


対処困難な指パッチンを構え、衝撃波でアタシを仕留めにかかる。


さすがに詰んだ……と思わせる、ために一歩後ずさりする。


拍子に。


────ぷち……………………ぽろり。


「おぉ……っと♪」


『え !!?』


決定的に服が崩れる。


半透明(スケスケ)の光る鎧の奥、胸部を守る部分が剥がれかける。


特大って程じゃないけど、なかなかのサイズで形もいいと評判の…………


『ッ!?!?! みえっ!?』


神獣サマも性欲には抗えない。


思わずエゴイズムが前のめった瞬間。




「────隙ありだ」




『……オゴッ !?!?!? !?!?!?』


エゴイズムの()()()()()()()()()()()に、光り輝く杭が突き刺さる。


「…………ナーイス、一号サマ♪」


「全く……これからは手綱だけじゃなくて、命綱も繋いどくんだな」


嫌味もどこか清々しく響く。


神獣エゴイズムを襲ったのは、地面から生えた障害物への前方不注意の大激突……つまりは避けようのない交通事故だ。


どうやら急所という概念くらいはあったらしい。手の付け根にあたる部分に光る杭が突き刺さり、苦悶の声を上げていた。


うぐぐ……と悶えるエゴイズム。その隙に自前の羽で穴から抜け出し、一号サマの元に帰還する。


「にゃはは……妖精騎兵の鎧の硬さは世界イチーーーーッ! 一号サマの匠の技、硬度10の一撃を受けた感想はどう?」


『オマっ…… きんじてツカいやがって ……!!』


「全く……さっき自分で言ったんだろうが」


一気に怒りのゲージが溜まったエゴイズムへ、さらに容赦なく一号サマが突きつける。


「ダンジョンにはルール無用なんだろ? 自分の発言くらい、ちゃんと守れよなカミサマ?」


『いって……くれるよねェエエエエエ エエエエエ!!』


さすがにキレる。


怒りとともに身体を丸めていく。


高度とともに、パワーが膨れ上がっていく。


とうとう最後の一撃が来るか。


『カクゴしろよ…………テッケンセイサイだァアアアアアア!!』


轟ッ!!! と発進。


握り拳の形態での突進。


巻き込まれた取り巻きが消し飛んでる。やはり本体には当たらない仕組みなんだろう。


確信を得た。


この時を待っていた。


ここから先は詰め将棋。


あたし達の勝利はイタダキだ。


「あと二手で決めるよ! 『フラッシュバンド』お願いッ!」


「オーライッ!!」


合図とともに光が弾ける。


光の粉がエゴイズムへ降り注ぐ。


『ぐっ……メクラマシか……いや!?』


正解だが、それだけじゃない。


粉は氷の結晶のように成長し結びついていく。


構造は糸。まるで繭かなにかのごとく、光の帯がエゴイズムを拘束していく。


その背中、もはや大安全なS席に降り立つ。


「……つーかまーえた♪」


『ぅぅっ……クソッ……!!』


「……取り巻きは近づけると消えちゃう。コレでもー弾幕は来ないでしょ?」


『クソッ!! うごけ、ウゴけってんだよ!!』


全力でもがいているがもう無駄だ。既に光の帯は壁や天井に根を張り固定されている。


この鎧と同じ硬度の拘束。いくら神獣といえど抜け出せまい。


そして握り拳と同じ構造の彼にとって、縛られるすなわちもうチェックメイトと同じだ。


「この体勢で縛り上げたら、文字通り指一本動かせない。でしょ?」


『なるほど…… たしかにコリャ『つみ』だ。 おじいちゃんすっかりワナにハマったみたいだな ……だが』


ただやられるワケがない。


機関銃みたく突きつけられている。


弾幕の厚さが桁違い。エゴイズムから離れたら、あたしはともかく一号サマはケチャップ確定だろう。


『ここから どうする!? こっちはメシ くわなくても いきてけるんだぜ!? オマエのことも にがさないぞ にごうチャン! ガマンくらべで しんじゅうに かてるかよ!!』


「どうするってもちろん……『必勝の技』を使うって言ったでしょ?」


『え?』


左手が輝き出す。


力を貯めていく。


「ここは弾幕の来ない安全地帯、おっかない本体サマも動けない……」


『まさかオマエ!? やめろ はなせ!!』


「文字通りの無敵タイム。そりゃのんびりと……大技貯めたりもできるよねっ!!」


光が極限まで大きくなっていく。


ケチな火力をたっぷり時間をかけて育てた、とびっきりの爆芯だ。


…………この戦いもようやく終わる。


「タイヘン長らくおまたせしました!! いよいよ本日の締めと参りましょう! それではみなさん御一緒に!!」


『や、やめろ……』


震え上がってももう遅い。


あたしの切り札が炸裂する。


〈〈〈3!!〉〉〉〈〈〈2!!!!〉〉〉〈〈〈〈〈1!!!!!!〉〉〉〉〉


『やめろおおおおお おおおおおお!!!!』





「……………………あくしょんッ!!!!!!!!!」




────チュドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッッッッッッッンンンンンンン!!!


『ヌァアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』


神獣サマが光に飲まれる。


取り巻き達が炎の中に消えていく。


もろとも全てを吹き飛ばす一撃。


配信画面いっぱいが、爆炎と閃光で包まれた。

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