きんもくせい
木立に身を寄せると
きんもくせいが香ってきました
小さな橙の花が咲く
そんな季節になりました
その香りは遠くまで届き
時には果たしてどこから香るのか
探してみたとしても
見つからないこともあります
あるいは並べて植えられた
何本ものきんもくせいに
ついた多くの花々がその存在を強く
香らせていることもあります
きんもくせいで思い出すのは
昔々の学校の授業
それは入学したばかりの
一年生の秋のこと
クラス中が先生に連れられて
学校の外まで出かけて行って
きんもくせいの木の下で
落ちている花を拾ったのでした
それを教室に持ち帰り
画用紙の上にきれいに並べ
二つ折りして挟み込み
上から圧を掛けるのです
きんもくせいの花の汁が
見開きの模様を形作り
そしてなお増す花の香りが
教室に漂ったものです
香りは記憶を呼び覚ます
今年もまたきんもくせいの香りで
そんな昔々の出来事を
ふと思い出したりするのです
今はもうそう簡単に学校の外に出かけていく、という事は無いでしょうねえ。