スクリーンスロッシャ〜ル
「手紙を落としたら道ができた………」
比喩表現でもない、正真正銘の事実にレベッカは困惑する。
階段は濡れている様子がなく、誤って足を滑らせることもなさそうだ。
湖の水も、階段を避けるようになっていて、人一人が歩いて降りれるくらいの空間は完備されていた。
「降りて、みようかな………」
手紙を落として開いた階段だ。無関係なはずがなかった。
「ん。よしっ」
覚悟を決めると、レベッカは一歩づつ確実に下に降りてゆく。
やがて天井にも水が広がるが、決してレベッカには当たらなかった。水滴が落ちてくることもなかった。
「すごい………」
階段の途中には光源も完備されているため、視界は良好だ。
そして中から見る湖は、想像以上に神秘的だった。
「この先に、なにがあるんだろう………」
犯人は、なんの目的でこの空間を用意し、なんの目的でレベッカに見せたのか。もしかしたら見せる意図はなかったのかもしれないが、それでも聞きたいことは沢山あった。だから
「会わなくちゃ………」
レベッカは確かに己の意思で下に降りてゆく。
やがて、レベッカが降りていた階段は終焉を迎えた。
「………床だ」
階段は終わり、次はそこそこ長い廊下が待っていた。
階段も、途中から湖の底へと繋がっており、地中世界に突入している。
相変わらず光源は用意されているが、レベッカが気にするのはそんなことではなかった。
「奥で、待っているのかな?」
準備万端で、レベッカを待ち伏せているに違いない。
「でも、行かなくちゃ」
でないと、レベッカはずっと逃げてばかりの人生になる気がする。
意を決して奥へと歩を進める。
レベッカの歩く音だけが反射し、それ以外の音はなにも聞こえなかった。
カツ、カツ、カツ、と。それだけがレベッカの耳に響く。
それ以外の音はなく、ただシ──────ンと、そんな音が鳴るように響いてるだけ。
あまりにも変わらない光景に、レベッカの気が狂いそうになるが、それでもレベッカは先に進む。
歩いて歩いて歩いて、歩いた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
歩き続けることに疲れを感じ始め、その場に倒れそうになった時、奥に一筋の光が見えた。
「………え?」
この廊下は、確かに光源はあるが、あそこまでの光はない。つまり、
「最奥だ………」
レベッカは、ゴールが見え始めたのだ。
「行かなくちゃ………」
最早、ただの執念だけでレベッカは歩き続ける。
「つい、た………」
やがて最奥の部屋に到達し、光をその視界一杯に埋めて。
「漸く、この部屋に辿り着きましたか」
聞き覚えのある声がレベッカの耳に響いた。
「え?」
どこか懐かしい、そんな声にレベッカの頭は疑問で埋め尽くされる。
「今回は二ヶ月、ですか。それにしても少し見ない間に随分と成長しましたね」
そんな、もう二度と聞くことはないだろうと思っていた声の持ち主を見て、呟く。
「アイト………」
今目の前に確かにいる、あの日死んだはずの人物の名前を呼んだ。




