電車の運転見合わせで一時間目休み。ラッキー
「よしっと」
レベッカは、チノの家の中の自分に譲ってくれた部屋の中で椅子に座っている。
その手には、いつかの手紙が握られていた。
「ここに………」
アイトを殺した犯人の手がかりがある。
既に条件は達成した。
〈ヴァインヒルトを実質的に殺す〉〈レベッカの指名手配を取り消す〉〈知り合いを遊びに誘う〉の三つの条件は達成された。
既に手紙にかけられた封印は解けており、あとはレベッカが封を開けるだけとなっている。
「ふぅ………」
レベッカは一度深呼吸をすると、ゆっくりと息を吐く。緊張していないわけがない。遂にレベッカが求めていた情報が手に入るのだ。これを開けなければ全ては止まる。
「えいっ!」
意を決してレベッカは勢いよく手紙を開ける。
中には一枚の紙が入っているだけだった。
「これが………」
折り畳まれている手紙を開ける。
中には場所だけが記されていた。
『思い出の、湖』とだけ記されていた。
「え?これだけ?」
思い出の湖だなんて、言われてもわからない。事実、レベッカには心当たりがなかった。
「なんの、思い出だろう………」
なんの思い出か。レベッカの思い出と言えば、ここ二ヶ月の思い出と、アイトと付き合ってから出かけた記憶、あとは虐められたことしかないのだが。
「この二ヶ月に湖には行ってないよね………」
行ったとすれば、ナイルの家やリリルナ家、海くらいだろう。
「じゃあ、実家?」
かつて家にいた頃を思い出す。アイトと付き合うまではあまり家から出て行ってなかったので、その間の記憶だが………
「あっ………」
思い出した。
「そうだ………」
レベッカは、アイトに連れて行ってもらったじゃないか。
「森の奥の湖、だよね………」
レベッカの思い出に湖なんて、その他はどこにもない。
それからのレベッカの行動は速かった。すぐに必要な荷物を纏めて、部屋から出る。
「あ、フィアラ。お昼ご飯だけど………」
丁度リビングにいたチノが話しかけてくるが、
「どこか、行くの?」
レベッカの姿を見て不審に思ったチノがそう聞いてくる。
「うん」
レベッカの言葉はそれだけだった。だが、それだけで何をするのかある程度察したチノ。
「すぐに、行かないとダメ?」
「うん。どうしても、行かなくちゃ」
でないと、レベッカのこれまでの意味がなくなってしまう。
「じゃあ、約束して」
チノは強い意志を込めながら言う。
「絶対に、帰ってきて」
その言葉に、レベッカはチノの目を見ながら答える。
「もちろん。絶対に、帰ってくるから」
そう返して、レベッカは街から飛び出し、思い出も湖に向かって走り出した。




