『フィアラ』という少女
レベッカにとって、『フィアラ』とは思い出の塊だ。
親に裏切られ、親友が死に、大好きな人を殺し、あらゆる人を裏切った。それが『レベッカ』だった。
でも、『レベッカ』は大好きな人に手を下した人物を知りたかった。執念と言うべき執着心で、『レベッカ』は『それ』を探し続けるために今は生きている。
わかっているのだ。自分が不幸を呼ぶことを。『レベッカ』がアイトを殺したことは。
でも、原因は『レベッカ』でも、手を下した人物は他にいる。そして、その犯人が居場所のヒントをくれた。
だから、探すために行動することにした。
そして、アイトの言葉を思い出した。たまには、自分の意思で生きてもいいじゃないか、と。
パフォーマーは手段のひとつでしかなかった。だけど、『レベッカ』はどこか望んでいたのだ。自分が幸せになることを。
例え、それが許されざることでと、それを『レベッカ』は無意識にでも願ってしまっていた。
だから、『フィアラ』を創ったのだ。
自分が『レベッカ』とは違う人間になれば、少しはこの罪悪感から逃れられるという、簡単な逃げ道を作ったのだ。
それでも、『フィアラ』はまだ過去に囚われているのだろう。
愛してくれた母に、好きになってくれたアイトに、友達になってくれたステラに。『レベッカ』は囚われている。
『フィアラ』という少女は、一生、この罪悪感に囚われながら生きていくのだろう。
■■■
「それが私。全ての元凶を壊すのが『レベッカ』。その逃げ道が『フィアラ』」
だから、自分は最低な人間だと、フィアラは自虐する。
「幻滅した?」
そんな自嘲気味の笑みを浮かべるフィアラをチノは抱きしめた。
「幻滅するわけがない!」
「………え?」
「幻滅するわけない!私が、フィアラを幻滅するわけないじゃん!」
だから、その一言はフィアラにとっては予想外の一撃だった。
「なん、で?なんで、幻滅してくれないの?私は、自分の目的のために………」
「それでも、私は幻滅しない!確かにもっと賢いやり方があるのかもしれない。でも、ずっと辛い思いをしてきた子を幻滅するわけないじゃん!」
そのチノの言葉が優しくて、フィアラへの愛に溢れていて、フィアラはそのままチノの胸の中で涙を流した。
「ねぇ、フィアラ。フィアラさえよければこのまま、逃げ切ることもできるよ」
もし、レベッカのことがバレても、もうフィアラへはそうそう手出しはできない。
「それじゃ、ダメなの………」
だが、フィアラはチノの助け舟を涙声で否定する。
「私は、まだ、なにも知らない………アイトが殺された、理由も、私が嫌われ続けた本当の理由も、なにも、知らないから………」
そう言って、懐から一通の手紙を取り出す。
「ここに、全ての答えがあるから、私は戦う」
そこには、先程まで泣いていた少女の面影はなく、自分の意思でそういった。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ。それで、ね?全てが終わったら、また、一緒に………」
「うん!約束、だからね」
そう言って、二人は笑いあった。
チノは、フィアラのために。フィアラは、未来と真実のために。リリルナ家へ向かった。




