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ハッピーエンドへの道筋

 トリスタン・ルーズとルルアリア・ルーズ。二人の恩恵(ギフト)は存外似ている。


 トリスタンは、知りたいことに対してのヒントを貰える恩恵(ギフト)。そして、ルルアリアは、知りたいことに関しての情報を得られる恩恵(ギフト)


「トリスタンに、覚醒に必要な物のヒントをもらい、ルルアリアにその情報を元により精密な情報を得る。今まで達成できなかったこの考えも、ここに来て漸く効力を発揮する」


 今まで考えてはいたが、実行に移すことができなかったことを前に、アイトは興奮を抑えられない。


「じゃあ、ルルアリア姉様と、トリスタン兄様に合流しないとね………ルルアリア姉様は森の中にいる可能性があるけど………」


 アイトとレベッカの戦いを見届けると、そう宣言した姉を思い出しながらレベッカは言う。


「───本来なら、魔獣の危険性もあるが………周辺状況的に問題なさそうか………」


 レベッカとアイトの喧嘩によって、荒れ果てた森を見て呟く。

 もはや、ここら一帯は、森の原型を留めていなかった。


「湖の水位も、低くなっちゃってるし………」


 本当に、ただの喧嘩によって発生した現象とは思えないほどだ。


「だが、ここは未開拓の魔獣の森。しかもその奥となれば危険な魔獣が暴れてると認識し、俺たちがやったと言っても信じないだろうし信じたとしても注意で済むだろうよ」


 だから問題はないとアイトは言い切る。

 だが、そうだとしても


「ルルアリア姉様が無事な保証はないよ。直ぐに探しに行かないと────」


「心配には及ばないわよ」


「ひゃぁ!?」


 突然後ろから声がしたことにより、奇声を上げながらアイトの後ろに隠れたレベッカ。

 そんなレベッカの様子を呆れたように見ていたが、


「随分と、激しかったわね。でも、二人とも無事で何よりだわ」


 そんな優しげな表情を浮かべるルルアリアが珍しいレベッカはほへぇ〜としていたが、アイトはどこか懐かしそうな目線を向けていた。


「それよりも、トリスタンよ。あいつは基本的に新しい家で引きこもってるから今から向かえば間に合うはずよ」


「そうすれば、情報を得られるってことだね!」


「───いや。それは、どうだろうな」


 これで攻略に一歩近づく。そう思ったのだが、アイトは難しそうな表情をしている。


「え?どうして?」


「あの人は仮にもルーズ家の現当主。そんな簡単に頷いては、あいつにメリットは一切ない」


 メリットデメリットで動くのは、実にルーズ家らしい行動ともいえる。みんなが一丸となって戦う。だけど、そのみんなとは仲間のことであり、トリスタンは決して仲間では無い。


「で?トリスタンが必要って話しは聞いたけど、なんでトリスタンが必要なの?」


「えっと、私の覚醒についてのぼんやりとした情報を手に入れて、ルルアリア姉様にそれを元に詳しい情報をもらおうって思ったんだけど………」


 トリスタンへのメリットを思いつかなければ、それも無駄になってしまう。


「?そんなもの、私の鏡で覚醒した世界線を見れば解決するんじゃないの?」


「────────え?」


 その唐突な言葉にレベッカは呆けてしまい、アイトはどこか納得していた。


「なるほど。レベッカがどこで俺の情報を手に入れたのかと思ったが、あんたが原因か」


「私は私で思うところがあったのよ。それに、この子が生きていないと都合が悪いってことも理解したし、あの時の気持ちも、あんたが浮かばせていた偽りの姿なんでしょ?だったら、できるところまで協力するわよ」


 そう言ってルルアリアは手鏡を取り出した。


「知りたい世界を知るのに鏡の大きさは関係ない。求めるべきは情報。あんたが一番わかってるでしょ?」


 ルルアリアが差し出してきた手鏡を、レベッカが受け取った。その瞬間、アイトの気配が変わった。


「………アイト?」


 アイトから放たれる膨大なプレッシャーに、レベッカも身構えてしまう。


「糞が、幾らなんでも早すぎだろ………」


 そう言って悪態づくアイトは、手でレベッカとルルアリアに下がるようにジェスチャーした。


「来たぞ、厄災が。面倒な奴が面倒なタイミングでな!」


 アイトの視線の先には、巨大な翼を生やしながらこちらに向かってくる影が見える。


「───あれが、厄災………?」


 アイトが言っていた厄災。レベッカやルルアリアもそこまでアイトの記憶を覗いたわけではないので、詳しくは知らなかったが、なんとか目視できる距離にいるだけで、その威圧感が、プレッシャーがレベッカとルルアリアに襲いかかる。


 アイトは冷や汗を流しながら刀を構える。

 ───レベッカに吸収された分は既に戻ってきている。一時的な弱体化故に、眠ると回復するという弱点が備わっていたからだ


 ───戦える。ステラの鏃によって失われた恩恵(ギフト)も、問題なく起動できる。


「ルルアリアさん、レベッカを連れて下がってて。───あいつには、生半可な攻撃は通じないから」


「アイト………」


「レベッカは、十分な距離を稼いだらどこかに身を隠して。前哨戦とはいえ、強敵には違いない。今の状態じゃ、無駄死にするだけだ」


「ねぇ、アイト………」


「あとは、他の人達の身の安全だな。暴走したあいつがなにをするか………」


「アイト!!」


 と、あれこれレベッカに言っていたアイトの肩がレベッカに掴まれる。


「なに一人で立ち向かおうとしてるの!?」

「なんで自分一人犠牲になればいいって考えてるの!?」

「アイトはもう、一人じゃないのに!」


 ちゃんと私のことも見てよ、と。そう訴えてくるレベッカを見て、アイトは薄く笑みを浮かべる。


 ───ああ、敵わないな、と。


「───ルルアリアさん。レベッカの覚醒までどれくらいかかる?」


 だから、作戦を変更する。


「───え?確認して、それから開始するから………速くて30秒かしら」


「そうか………」


 30秒。それだけ聞ければ十分だ。


「レベッカ………」


 アイトは厄災を睨みつつも、レベッカの名を呼び。


「信じてる」


 それだけ言うと、アイトは駆け出して行った。


「ちょっと………」


 ルルアリアの制止の声を、レベッカが遮る。


「姉様、始めよ」


 レベッカのその一言でルルアリアは準備をする。


「わかったけど、本当にいいのかしら?今行ったって一人じゃ………」


「そのために、私がいるから。お願い、ルルアリア姉様。図々しいってことはわかってる。でも、最後に全力で抗いたいの」


 この理不尽な現実に。

 ルルアリアは溜め息を吐くと。


「はやくしなさい。全部、救いたいんでしょ!?」


 ルルアリアの急かす声でレベッカは準備を始める。最後の戦いのために。

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