コント「マルチ商法と下着強盗」
二人「「はいどうもー!」」
ボケ「突然ですけどね、僕あるものにはまっててね」
ツッコミ「なんですか? まさかマルチビジネスとかじゃないでしょうね?」
ボケ「いや、違いますけど。何にはまってるかは秘密なんですけどね」
ツッコミ「そこを何とか教えてくださいよ」
ボケ「仕方ないなぁ。ここだけの話ですよ。僕……下着強盗にはまってるんです」
ツッコミ「へぇ……下着……えっ⁉ 何ですか下着強盗って⁉ 犯罪じゃないですか!」
ボケ「ええ、もちろん。覚悟の上ですよ!」
ツッコミ「なんで堂々としてるんですか! それにしても……泥棒じゃなくて……強盗って……。力づくで奪い取るんですか?」
ボケ「もちろん!」
ツッコミ「だからなんで堂々としてるの⁉ で……何回やったんですか⁉」
ボケ「それがまだ、一度も――」
ツッコミ「まだやってないんですね」
ボケ「一度も襲ってもらえてないんです!」
ツッコミ「まさかの襲われる方?!」
ボケ「いつ僕の下着を取りに来るか待ってるんですけどね。いまだに来ないんですよ」
ツッコミ「そりゃそうでしょうよ」
ボケ「かれこれ一週間は待ってます。でも全然来てくれないんですよ。約束したのに」
ツッコミ「え? 約束したの⁉」
ボケ「あれは一週間前のことでした」
ツッコミ「急に回想がはじまりましたよ」
ボケ「ある日ね、おっさんが僕の家を訪ねて来て、下着をよこせって言うんですよ」
ツッコミ「ほぉ、それで」
ボケ「いきなりそんなこと言われても無理ですって言ったんです。でもおっさん、どうしても欲しいから頼むよって土下座してきたんです」
ツッコミ「それは強盗なんですか?」
ボケ「下着をくれないと殺すって土下座しながら言ったんで、多分強盗ですね」
ツッコミ「おっさん怖いな!」
ボケ「殺されたくないんで、分かりましたって、その場でズボンを脱いでパンツを渡したんですよ。でも一週間履き古したおパンツじゃないとイヤだって言うんです。仕方なく言われたとおりにすることにしました」
ツッコミ「わがままな強盗ですねー。と言うことは同じパンツを一週間はいてるんですね?」
ボケ「ええ、お風呂にも入ってません」
ツッコミ「汚いなっ! 風呂には入れよ!」
ボケ「でね、つい先日、来たんですよ」
ツッコミ「おっさんがですか?」
ボケ「パイおつボインボインの美少女が」
ツッコミ「えっ⁉ 誰⁉」
ボケ「僕も誰か分からなかったんで、先日のおっさんですかって聞いたら『はい、そうです』っていうんですよ」
ツッコミ「絶対嘘でしょ!」
ボケ「その子、先日の恩を返しに来てくれたって言うんですよ」
ツッコミ「パンツまだあげてないですけどね」
ボケ「なんでも、鍋やサプリや洗剤を買うだけで幸せになれるっていうんですね」
ツッコミ「それ、マルチ商法じゃないですか……」
ボケ「ええ、僕もそう思ったんですけど、おっさんとは約束してたし、仕方ないなって家に上げちゃいました」
ツッコミ「信じちゃった! 明らかな嘘なのに信じちゃった!」
ボケ「そしたらね、急に知らない人が沢山家に来て、みんなで僕に鍋買え、洗剤買えって言うんです」
ツッコミ「雲行きが怪しくなってきましたねー」
ボケ「僕は履いてるパンツをあげる約束はしたけど、鍋を買うって約束はしてないって言ったんです。そしたらパンツと鍋を交換しようって。ついでに契約書にサインしてって」
ツッコミ「なりふり構いませんね……」
ボケ「明らかにマルチだって分かるんですけど、でもパンツをもらってくれるんなら、やっぱりあのおっさんなのかなって、そう思って……仕方なく契約書に」
ツッコミ「信じちゃったんですか?!」
ボケ「いえ、サインする寸前でそのおっさんがやって来て、止めてくれたんですよ」
ツッコミ「おっさああああああああああああん!」
ボケ「おっさんのお陰で契約せずに済んで、嘘つきマルチの連中も追い払ってくれたんです。おかげで助かりました」
ツッコミ「その後どうなったんです?」
ボケ「改めてパンツを受け取りに来るからって、その日は帰っていきました。そろそろ約束の時間なんですけどねぇ……」
びりりりりりり!
ボケ「はい、もしもし。あっ! 今行きます! おっさんに呼ばれました! パンツを渡してきますね!」
ツッコミ「え? ちょ! ……行っちゃった。大丈夫かな?」
ボケ「お待たせえええええ!」
ツッコミ「早いな! もうパンツ渡したの⁉」
ボケ「パンツはいらないって! 代わりにこれもらった!」
ツッコミ「え⁉ 何それ⁉」
ボケ「月一で届くお鍋の組み立てキット! 初回無料だって! 残りは有料だけどお得だから契約書にサインしちゃった!」
ツッコミ「おっさんもマルチだったあああああああああああ!」
二人「どうもありがとうございました!」