42 ルカ国王の拗らせ物語②
私室での仕事も終え、五月蠅い執事も退室した。
やっとリンの処へ行けるが、少々遅い時間になってしまった。
…彼女は待ちくたびれて眠ってしまっただろうか?
それとも、私の事を待ってくれているのだろうか?
ソワソワしながらドアノブを回すと、何か重い物に引っかかったように扉が開かない。
…これはどうしたことだろう。
隙間から覗いてみれば紐のようなものでドアノブが固定されているのが見えた。
そうか…きっと昼間怯えていたリンが暴漢避けにやったに違いない。
私が守ってやるから不要だとあれ程言ったのに、私の体を心配して頑張ってやったのだと思うと可愛くて仕方がない。
こんな紐は剣で切って、彼女と共に休みたい。…それにしても頑丈に縛ってあるな。
…こんなことなら私のベッドで眠るように提案すれば良かった。明日はそうしよう。
眠るリンは愛らしく、私が隣に潜り込んでも目を覚ます気配さえない。
「お休み…リン」
その頬に口づけて久しぶりに深く眠ることが出来た。
目が覚めた時、一瞬頭が真っ白になった。私の目の前にリンの素肌があるのだから。
昨夜寝た時にはただ隣で眠ったはずだが、どうやらリンは寝ているうちに抱き枕のように傍にあるものを抱きしめる習性があるようだ。
よく見れば夜着の開いた胸元に私が顔を突っ込んで寝ている状態になっている。
…せっかくなので彼女が起き出すまで柔らかい躰の感触を楽しむことにした。
しばらくして目が覚めたらしき彼女は私から離れようと必死に抵抗していた。
だが、当然私がガッチリと抱き込んでいるので動けない。
手を伸ばしたり上に抜けようとした挙句、体を反転させようと動くから、リンの胸のふくらみが顔に押し付けられて思わず吐息が漏れてしまった。
…危ないところだった…。寝たふりがバレたらきっと彼女は怒り狂うだろう。
だが、こんな無防備に胸をさらけ出されると何もできないのが却って辛い。
より胸を密着された時、そこを舐めあげてやった。
「ひゃ…ん…やだ…」
リンの甘い声に自身が昂りそうになって焦る。
「お前は私にそんなに可愛がられたいのだな。まったく可愛いやつだ」
ピンクの舌先を見せつけるようにチロチロと彼女の胸元を這わせたら、リンもそれを見て興奮してきたのか肌がピンクに上気してきた。
「いつか…ら起きていた…の?」
「お前が、私を『フワフワで気持ちがいいね…大好き』と言って抱きしめた辺りからずっとだ。随分と大胆に誘惑してくると思っていたが」
更に悪戯してやれば身を捩って逃げ出そうとする。
「これほどに私を誘惑するくせに、起きているときのお前は私を拒絶する。お前は素直では無いから躰から篭絡する方が良いな」
そのとたん大声で騒ぎ出したので驚いた。
「耳元でギャーギャー喚くな。五月蠅い…」
渋々回していた腕を外し、彼女から離れる。
あのバリケードはやはり彼女が作ったものだったらしいので、今夜は私のベッドで寝れば安心だからと提案してみたが、やんわりと断られた。
「今日は絶対にバリケードは作らないから別の部屋で寝かせてください」
そう言って土下座されても…一緒に眠る方が効率はいいと思うのだが…。
「あの、ここで押し問答をしているのもルカ様の貴重なお時間を使ってしまいます。さあ、急がないと朝食に遅れて他の聖女様候補を待たせてしまいますよ?エイダを呼びますね~」
そう有耶無耶にされてリンは逃げてしまった。
朝食の時間になったので、リンと一緒に手を繋いで向かった。
フフフ…昨夜からかなり私たちの距離は縮まったんじゃないか?
ダイニングルームでもリンの可愛い姿を堪能しながら食事をしていたら途中で緊急の執務に呼ばれ途中退席することになってしまった。
仕方ない…急用が終わってからリンを傍に置こうと急いで執務室へと向かった。
執務の途中で私室へ戻ると床にリンが丸まって寝ていた。
…なぜ彼女はベッドでは無く床で眠っているのだろう…?
まあ、この状態ならば攻撃されることもあるまい…。私は彼女を抱きかかえ、そのまま執務室へと連れて行った。
もちろん私の膝枕で眠る彼女を堪能するためだ。
時々髪を撫でながら彼女の顔を覗き込むと気持ちよさそうにうにゃうにゃ言っているのが判る。
こんなに可愛い生き物を手放せる訳も無く、膝に乗せたまませっせと書類を片付けていった。
何か言いたげな宰相もエイダも、私が真面目に仕事をしているので暗黙の了解のように無言を貫いている。
数時間経った頃、起きたのかリンが私の足にスリスリと顔をこすりつけてくすぐったい。
「リンは本当にペットのようだな。こちらが寄って行けば逃げ出すし、噛みつく。それなのに気分が向いたらすり寄って来るのだから」
そう言って撫でてやると慌てたように飛び起きた。
どうやら自分が置かれている状況に戸惑っているようでキョロキョロと辺りを見回して困惑しているのが判る。
「あの…ごめんなさい…。お仕事の邪魔をしてしまったようで…」
彼女が逃げ出そうとしたので、もう一度膝枕して撫でてやる。
「まだ大丈夫だと言っただろう?それにお前を撫でているのは私も癒される。仕事が捗るからここにいなさい」
「あんまり長い事膝枕をしていると足が痺れちゃいますから…そろそろ起きますね」
そんな言い訳をして離れるのは許さない。私は彼女に傍に居て欲しいのだから。
「私はそんなことぐらいで足を痺れさせるほど鍛錬を怠っているつもりはない。証明してやるからこのままでいなさい。…それとも起き上がって、私の膝の上に座るか?」
そう告げたら、真っ赤な顔をして膝枕に戻ったリンが堪らなく可愛かった。
ルカ編の方が全年齢ギリギリかなと心配しています。(なんせ初恋相手に拗らせていますから)
運営様に見逃していただけるラインを攻めていきたいと…(笑)




