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41 ルカ国王の拗らせ物語①

彼女がバスルームに入ってから随分と時間が経った。

相変わらず物音ひとつ聞こえてこないが、まさか風呂でのぼせているのではないだろうか?

確か以前ものぼせたことがあるとエイダから聞いているし、少し不安になって隣の部屋を覗いた。


 …彼女はいた。

 確かにいたのだが、バスタオルを体に巻き付けただけの無防備な恰好でクローゼットの中をゴソゴソと何か探している。

 あんなに無防備な姿で…もしかしたら私を誘っているのだろうか…。

 思わず近寄って後ろから抱きしめるとリンは体を強張らせた。


「お前は、本当に何をやっているのだ?まったく理解できん」


 そう言いながら首筋に口づけると軽い抵抗はされるが、激しい拒絶はされないことに気が付いた。


「この状態だと、お前に殴られたり蹴られたりする心配が無くていいな」


 思わず首筋を舐めながら、彼女の柔らかな体を堪能した。ああ、なんて可愛いのだろう。


「ちょっと…離してください…」


 口では拒絶しても弱弱しい抵抗に、自分の欲望が膨れ上がるのを止められなくなっていた。

 首から、肩、背中へとゆっくり唇を這わせた瞬間、腕に激痛が走り、彼女に噛みつかれたのだと悟った。

 思わず呻いて離れると、リンはまさかの回し蹴りまでしてくる。

 だが、彼女が攻撃的なことは織り込み済みだ。剣術を嗜むものが攻撃を二度喰らうなどあり得ない。

 蹴り上げた足をそのまま掴んで片足を持ち上げてやった。ちらりと内ももの白さが目に飛び込み、一瞬にして興奮が高まるのを感じた。


「こんなじゃじゃ馬では調教に時間が掛かりそうだな。…あれ程優しくしてやったというのに反抗するとは。お前のご主人さまは誰なのか一度判らせてやった方が良いか」


 そう言って、床に引き倒し、上にのしかかる。


「お前…私に攻撃を一度ならず二度までも仕掛けるとはいい度胸だな…。その度胸に免じて今、ここで無理やり抱くことに決めた」


 強引に暴いてやろうと彼女のバスタオルに手を掛けた瞬間、リンが涙目で訴えてきた。


「私…いきなりここに連れてこられて不安で一杯だったんです。それに、後ろから羽交い絞めにされたから顔も見えないし、暴漢かと思って怖くて…」


 眼に涙を溜めて懇願する姿は、先ほどまでの獰猛さが嘘のように可憐で愛らしかった。


「私は聖女様候補だから、元々国王様のモノでしょう?だから、暴漢に襲われたらルカ様に顔向けできないと思って必死で抵抗したんです…さっきは噛んだりしてごめんなさい…」


 これは絶対に嘘だ。

 …判っているのに、そんな目で見つめられては信じたくなってしまう。

 …リンは元々私のモノ…そうか…。

 たとえ嘘だとしても惚れた女性が言うのなら信じたいと思ってしまうのだから男なんて馬鹿な生き物だと自分でも思う。


「ああ…そうか…。私の…、まあ、今回はいきなりだったからな。お前も驚いたから攻撃してしまったのならば仕方がない」


 彼女を怯えさせてしまったので抱き上げてベッドまで運んだ。

 毛布で包んで、少しでも彼女の不安を和らげたいと思ってしまう。


「寒くは無いか?すぐに着替えとエイダを呼んでやろう」


 そう言ってリンの手を握ったらおずおずと握り返し微笑んでくれた。

 ああ本当に可愛いな。…彼女との距離が少し縮まった気がする。


 エイダが部屋に到着すると、リンは先ほどのことが余程恐ろしかったのか、エイダに縋り付いて泣いてしまった。

 そんなに怯えたのなら私に抱き着いてくれても良いのだが…まあ、怯えさせてしまったのは私だからそこは我慢する。


「…もう、このお部屋は怖いから…元のお部屋へ帰りたいよう…」


 涙ながらに訴えられると胸が痛む。…ああ彼女は泣き顔すら可愛い…。


「…でも、以前の部屋は警備の面からいってもこちら程安全ではありませんし、隣のお部屋には国王陛下もいらっしゃいます。…国王陛下は剣の腕も一流ですし、きっとリン様を守って下さいますよ?」


「嫌だ―!絶対に嫌だー!元のお部屋へ帰るんだもん」


 エイダの言葉にも頷かずベッドの上で暴れまわる可愛い生き物に抱きしめたい衝動が堪えきれなくなってしまった。


「そうか…お前はそんなに恐ろしい思いをしたのだな…可哀そうに」


 そう言って抱きしめると震えるのを堪えながら私を上目遣いで見つめてきた。


「…お願いします、ルカ様…。私を元のお部屋へ帰してください。もうこのままでは恐怖のあまり眠れません」


 …ああ、このまま私のベッドで彼女の不安を取り除いてやりたい。

 いつまでも彼女を抱き続けて恐怖を取り去ってやりたいと思うのは私の我が儘だろうか。

 それを提案したら、彼女は頷いてくれるだろうか…。思わずゴクリと喉が鳴る。


「それでは、今夜から私がお前と同衾してやろう。一緒に休めば暴漢が出てもすぐに私が切り捨ててやれるだろうし」


 囁いて彼女を腕に閉じ込めると慌てた様子で拒否された。


「そんな…国王様のお手を煩わすことなど出来ません!ルカ様が守って下さるのなら、安心して奥の部屋で一人で寝ることも出来そうです。暴漢が来ないように厳重にこちらの部屋にも鍵を増やしていただければ…」


「それは出来ない!リンにもしものことがあった時に鍵が付いていてはすぐに助けに行くことも出来なくなってしまう。だから一緒に休めば良い話だと…」


 中々頷かない彼女にエイダが口を挟む。


「リン様は、国王陛下が公務でお疲れなのに休息の時間まで奪ってしまうことを恐れていらっしゃいます。これもひとえに国王陛下のお体を思えばこそ!ですから夜は別々にお休みいただき、昼間に心を通わせながら距離を詰められるのが一番かと思われます」


 そうか。リンは私が自分の為に体を壊すことを心配してくれたのか。…なんと健気な。

 エイダの説得は続き、リンは私の隣の部屋で生活することを了承してくれた。

 さすがはエイダ隊長だ。普段騎士を躾けているだけあってじゃじゃ馬の扱いに長けている。

 エイダのアシストもあることだし…早速、今夜はリンのベッドで触れ合いたいと思う。


自分が恐怖の対象とは思ってもいないのであります‼( ー`дー´)キリッ

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