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4 聖女の役割…絶対に嫌です‼

まったく理由が判らないままに、ルカ国王にキスされている…。


 何か変なスイッチを押してしまったのだろうか?

 文句を言おうとするも、舌で唇を舐められるので、歯を食いしばって舌の侵入を防ぐ。

 …私はあんたに何の感情も持っていないと判らせるために。

 両手でその意外と厚い胸板を叩いて押し返すと、彼はやっと唇を離した。


「…他の二人は喜んでいたが、リンは私の口づけを拒むのだな」


 …全員に良い顔してキスまでしていたんだ?…やっぱりね、そんなことだろうと思った。


「私は聖女様でもないし、国王様のお役には立てそうもありません。こういったお戯れはお止めください!」


 きっぱりと言ってやると、またフッと自然な笑顔になった。…そんな顔するくせに本当にいけ好かない!あんな作り笑いは外交の時だけにしろ!と言いたい。

 ムカムカしていたら、ルカ国王がいきなり私の夜着の胸元を引っ張る。


「ギャーッ⁈引っ張るな~!胸が見えるでしょうが!」


 今はノーブラだったことを思い出して暴れる。

 私が真っ赤になって抵抗したら「そんな微かな胸に興味ないわ、馬鹿め」と返された。


 …おいコラ‼随分と本性を現してきたじゃないのルカ国王様よ!

 その取りすました顔は私の前ではやめたのか?ムカつくわ~‼


「そんなことよりお前、昨日渡したペンダントはどうした?なぜ付けていないのだ?」


 …ペンダント…?ああ、すっかり忘れていました。


「そう言えば、昨日着ていた服のポケットに入れっぱなしだった。寝る時に邪魔だなと思って、そのまま忘れたんですよね」


 アハハと笑うが、国王はエイダにペンダントを持ってこさせると強制的に私に付ける。

 …しかも『お前はどこかへ置き忘れたり、失くしたりするタイプだから』とあらぬ疑いまでかけられて絶対に外れない…もとい外せないように魔宝を発動させた。


「これで絶対に外せまい。…貴様には首輪が必要なようだからな」


 高らかに笑いながら部屋を出ていくその背中を思いきり睨みつけて、枕を投げつけてやりましたよ…国王様が出ていった後に。

 悔しいけれど、私の今後の衣食住はあの性格劇悪国王様にかかっているのです。

これ以上アイツを刺激してはいけない…そう感じていたからね。

 その後で、私はエイダにお願いしました。


「お腹が今の騒ぎで限界を迎えております。…ご飯を食べさせてください」と…。


 勿論、心優しいエイダは「もう…今日だけですよ?」と部屋に私の食事を運んでくれたのです。


「リン様は、せめて、夜着ではなく部屋着にお着がえくださいね」


 そう言うと簡素なドレスを用意してくれた。シンプルなワンピースみたいで少し丈も短めのドレス。デイドレスって言うんだってさ。良かった。コルセットとか絶対に無理…。


 着替えた後はご飯タイムです。うーん!さすがは王宮のシェフ!いい腕しています。

 シンプルな塩の味付けですが、丁寧に素材の味を生かしているので非常に美味!

 パンくずの一つも残さず完食しました。本当にご馳走様でした。

 食後のお茶を頂きながら、この国についてエイダに尋ねてみた。


 ここはリーチェス王国。現国王はルカ・アーロ・リーチェス。25歳の若き王様だ。

 このリーチェス王国は大陸の東の端っこにある小国だけれど、魔宝石が特産でかなり財政は芳醇な国だとか。

 …ただ、ここ数年はその魔宝石の産出が減少を始めていて、このままだと財政破綻もしかねないらしい。

 そこで、今回聖女様として、異世界から聖魔力量の多い女性ばかりが選ばれて召喚された。

 魔力量は一人一人違うから後で増やすことも出来ないし、あんまり魔力量の違う人同士で結婚、妊娠すると、その子供が母親よりも強大な魔力を持っていた時、母体に負担がかかり過ぎて子供の命も母親の命も危なくなるから危険だそうだ。

 ルカ現国王と交わることの出来るだけの聖魔力量を持っていて、子供を生せる女性…。


 その上聖女様になると、この国の魔宝石の鉱脈に力を与えるために一定の期間、ルカ国王と魔力の共有をしなくてはいけないらしい。

 どうやって共有するのかを聞いたら『もちろんお世継ぎをつくるための行為でございますわ』と言われ唖然とする。

 なんでも、国王とこの国の鉱脈は共鳴しているため、聖女と国王が交われば聖女の分の魔力も鉱脈に吸収されるそうです。それが聖女様に選ばれた場合の仕事…いや役割か…。


 …絶対に嫌だ…。

 私がなる訳が無いとは判っていても、万が一…いや百万が一聖女様だった場合は国中に『今日も国王様と仲良くしてまーす!私たちは子づくりしてまーす』って知られる訳でしょ?

 無理無理無理!死んでも嫌だ。…そんな辱めを受けるくらいならさっさと生活の目途を立てて王宮から出ていった方がずーっとマシだ。

 第一、あんな性格極悪国王と結婚なんて、お互いに無理でしょ?

 あの二人が乗り気だったみたいだし、私は撤退させていただこう…うん、そうしよう。


 そう思っていたら扉がノックされた。…まさか、またあの国王が⁈

 身構えた私の部屋には一緒にこの国へやってきた二人の女性が入ってきた。


「こんにちは。今、お時間良いかしら?」


 そう言いながら栗色ロングヘアの…確か日向まなかちゃん…が部屋を見回す。


「いきなりごめんなさいね?昨日も会えなかったから、少しお話ししたくって」


 ポニーテールの小野田シホちゃんもその後に続いて入ってきた。


「こんにちは。良かったら一緒にお茶でもどうですか?」


 椅子を勧めると二人は顔を見合わせてから大人しく腰かける。


「あの、一ノ瀬りんさん…でしたよね?私達は二人ともこの国の聖女としてルカ国王陛下に嫁ぐことを希望しているのですが、貴女はどのようなお気持ちでいらっしゃるのかしら?」


「国王陛下は本当に素敵な方だから、貴女ももちろんお好きだとは思うのだけれど、一応気持ちをお聞きしたくて」


 二人から詰め寄られても、私の気持ちは決まっている。


「私は最初から聖女様では無く、多分巻き込まれてきただけだと思っています。だから、お二人のライバルには絶対になりませんので、ご安心ください」


 そう言うと、逆に不審なのか日向まなかちゃんが目を吊り上げた。


「嘘を吐くのはやめて!あんなにイケメンに笑顔を見せられて、しかも国王様ともなれば贅沢し放題なのに興味の無い女がいる?」


 ここにいます…とは言いづらい…。


「えーっと…私は皆さんと一緒に行動していないので分かりませんが、お二人は国王様から聖女としての成婚の打診を受けているんですよね?」


 例えばキスとかキスとかキスとか。


 そう言うと「それは…まだ…。でも、私たちは王妃になる心構えもきちんとしているから正装で常に行動しているわ。国王様にも『綺麗ですね』って褒めて頂いたし、あなたよりはずっと彼に近い所にいるんだって教えてあげに来たのよ」


 日向まなかちゃんはツンっとソッポを向く。


「ご一緒にお食事とお茶の時間は過ごさせていただいたわ。でも、あなたは国王様と全然お話しされていない様だし、少し心配になって」


 小野田シホちゃんは本当に優しいんだな。この人が聖女様かもしれないな…心が綺麗そうだし。


「ということは、お二人とも国王様とは会話した…だけ?部屋に押しかけてこられたり夜這いを掛けられた訳では無いんですか?」


 言葉選びが拙かったのか、まなかちゃんに睨まれた。


「ルカ国王陛下は紳士よ⁈そんな下衆な真似をなさるはずがないでしょう?」


 …無理やりキスされたのは下衆な行為では無いのか…?


「とにかく、あなたがルカ国王陛下に好意が無いのなら、大人しくしていてちょうだい!私たちの邪魔をしないでね」


 鼻息も荒くまなかちゃんが出ていくと、シホちゃんも気弱そうな微笑みで会釈すると出ていった。

 …あれ?ルカ国王に二人はキスされて喜んでいたって聞いたけれど…どういう事なんだろう…?


まだ数話しか投稿していませんが、お読みいただきありがとうございます。

ルカ国王が段々おかしくなっていくのでドン引きしないようご注意ください。

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