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35 幸せの楔

「えっ⁈ルカ…どこへ行くの⁇」


 ニコニコして機嫌がいい事だけは判るけれど、ルカの足は止まりません。

 …この方向は…まさか寝室では⁈そう思った瞬間、ジタバタと暴れてみたものの、ガッチリと抑えられていて彼の腕から抜けられる気がしない…。


「あ…あのさ、まだ昼間だし…まさかしないよね?」


「うん?何をだ?…何か期待しているのか?」


 くぅ…大好きな声で、耳元で囁かれるとドキドキして言葉が続けられません。

 いやいや、ここで負けていたら本当に昼間からエッチになだれ込む予感しかしない…。

 私は必死に会話を続けました。


「…あのね?私もせっかくですからルカの奥さんとして、少しは王妃様らしくなれるように外交とか、マナーとか勉強しようと思っているんですよ?」


「ほう…それは殊勝な心掛けだな。…それで?」


「それで…ダンスもあれ以来やっていないし、マナーレッスンとかもしないとダメだと思うの」


「何がダメなのだ?」


「いや…だから、私も甘やかされてばかりじゃなくてルカを甘えさせてあげられるようにちょっとは王妃様らしくなりたいなって…」


 言いながら自分でも恥ずかしくなってきて顔が赤くなるのが判った。

 ぅう…ルカが好きすぎて辛い…。金髪碧眼のイケメンが旦那様だなんて尊すぎて死ねる…。


 私を見ていたルカは真顔になると足を速めた。

 …あれ?急に速度が上がったけれど急用でも思い出したのかな?

 扉を蹴破る勢いで開けると、そのまま寝室に連れ込まれて覆いかぶさられる。


「リン…王妃らしくなりたいと言ったが、真の王妃とは何だと思う?」


 えっ⁈ベッドに押し倒していきなりそんなことを聞かれても。

 …うーん、真の王妃様らしさ…って、そもそも何?


「例えば…高貴で国王様の隣に立つだけの美貌を持っている…外交上手な人…とか?」


 言ってみたもののルカが求めている答えがこれでは無い事には気が付いた。


「見てくれが良いだけの貴族ならごまんといる。外交は宰相や外交官に任せれば良いだろう?

 …他には無いのか?」


「じゃあ…マナーが完璧で国の象徴になれる人‼」


 これでどうだ‼とドヤ顔で答えた私を愛おしそうに見る。


「…確かにマナーは必要だ。だが、国の象徴には国王がいれば良いのではないか?」


「そう言われればそうだけれど…でも王妃様は国王様と二人で一人でしょう?国王様だけが国の責務を負うんじゃなくて、一緒に苦しんだり笑ったりできる関係を構築できる人が王妃様に相応しいんじゃないかな?」


 私の答えを馬鹿にするわけでも、笑うわけでもなく静かに聞いていたルカはやがて花がほころぶような綺麗な笑顔を見せてくれた。


「それがリンの答えか…。思えば最初から、お前だけが私の取り繕った笑顔を見抜いて、いつでも自然体で生きろと教えてくれた。…そんなお前が聖女で…私の愛する人で幸運だったと心から思うよ」


 唇に降って来る優しい口づけは次第に深くなるけれど、ルカの眼差しは優しいままで、私は少しだけ物足りないような気持ちになった。


「…さっき、執務室でルカとの夜の関係が少し落ち着くのかなって…言ったでしょう?」


「ああ…最近はお前を抱きつぶさないように加減して抱いていたからな」


 あれで⁈…まあ、最初の3日間よりは…っていやいや一晩に3回は多いでしょう⁈

 毎日腰が悲鳴上げているわ‼


「魔法石の鉱脈も聖魔力が足りているみたいだし、ルカも何だか気持ちが安定してきたから私も夜はゆっくり眠れるってことかと思ったんだけれど…」


 始めて出会った頃のルカはピリピリといつも張りつめていた。

 国王としての責務に負われて自然体ではいられなかったことも判る。

 でも、ここ最近は気心の知れたエイダや宰相様、そして私の前では穏やかな表情を見せることも増えたし、我が儘にもなった。

 それが少しだけ嬉しい…。


「確かに聖魔力は足りているようだな。余程、お前の聖魔力と私の魔力は相性がいいようで品質まで向上するとは、正直思ってもいなかった」


「じゃあ…これからは王妃教育とかする時間を取れるっていうこと?ルカとは毎日しなくても大丈夫なのかな?」


 嬉々として言ったことが拙かったのか、ルカの笑顔が凍り付いた。

 あれ…?言葉選び…間違えちゃったかな…?


「リン…?お前は私に毎日抱かれるのが嫌だという事かな?」


 あ…これ完全にヤバいやつ。目が座っているもん…。


「そんな訳無いでしょう⁈私はルカの奥さんだし、ルカの事が大好きだもん‼」


「…じゃあ、“毎日しなくても大丈夫”というのはどういう意味だ?」


 意外としつこいな…。つい本音が出ちゃっただけだって言うのに。


「私はルカといっぱいシたいけれど、疲れちゃうと王妃教育を受ける体力が残らないでしょう?さっきルカもマナーは大切だって言っていたし、勉強しないといけないなって思ったらつい毎日シなくてもって口から出ちゃったんだよ~」


 心の中は冷や汗でダラダラだったけれど、これで彼の機嫌が直れば…と思っていたら、ドレスの裾がたくし上げられた。


「ええっ⁈私は王妃教育を受けたいって言ったのに、何でドレス脱がそうとするの⁈」


 抵抗したくても既に彼の腕に捕らえられていて抜け出すことは出来ない。


「お前の口から“いっぱいシたい”…などと言われたら夫としては答えなければいけないだろう?」


「いやいや…王妃教育を受けたいってところに着目してくださいよ‼」


 そう言うものの、ドンドンと脱がされて、いつの間にか下着姿にされていた。


「真の王妃は私と一緒に悩み、喜び、愛し合ってくれるんだろう?それならば今のお前のままで十分だ」


 ルカの目にいつの間にか煽情的な炎が宿っている。


「それに、王妃として望まれているのは何も聖魔力とマナーだけではない…」


 深い口づけを落とされると、私の心も躰も彼の色に染めあげられていく。


「…私の世継ぎをお前が生んでくれるのだろう?…私の最愛の聖女様が」


 何度も愛を囁かれ、繰り返し愛され続けた私は、この世界に聖女として楔を打ち込まれてしまったのでした。


これにて本編終了となります。…拙い文章を最後まで読んでいただけた皆様に感謝と、次回からはルカ国王視点での話を書きます。

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