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32 最後の夜

「さすがは私。完璧な見立てですわ!」


エイダは私の全身を満足そうに眺めているが、見られている私は羞恥心で頭が真っ白だった。


エイダが見立ててくれた『マンネリでも大丈夫!旦那も大・満・足・夜着』を着せられたものの、それは真っ白なビスチェでかなりきわどいモノだった。

可愛いリボンが付いた胸元と、胸以外は薄いレースで体全体が透けているところも裸よりいやらしくキツイ…。しかも胸元のリボンを解くとそれだけで前が全開になる仕様って…どう考えてもエッチを目的としているでしょう⁈


「こんな夜着を着ているのをルカ様に見られたら、恥ずかしくて死ぬ…。真面目な話がしたいのにこれじゃあ出来る訳ないよ…」


「ですから、コトが済んでから『大好きなルカに話したいことがあって』とサラッと伝えてしまえば良いんですよ!ヤルことやれば話を聞いてくれますって」


「ヤルことは前提なんだ…。でも聖女様の選定が終わった話とかするんじゃないの?こんな格好をしているときに宰相様まで一緒に来たら私、その場で舌を嚙み切って死ぬよ…」


「…私の方から国王陛下にリン様が『夜這いして欲しいから一人だけで来て♡』と言っていたとお伝えしますか?」


「止めてーっ‼無理無理―っ‼こんなの着るならドレスのままで待っているもん!」


「でも、ルカ様に借金の返済と王宮の就職あっせんをお願いするのですよね?」


「うっ…うん…する」


「それに、セオドア様に騙されたからと言っても、未婚男性と一つ部屋に籠られて、あまつさえ『隷属の指輪』までつけられたこともお詫びしなければいけませんよね」


「うん…ん?騙されて、契約したせいでリーチェス王国の宝物の鉱脈を奪われたことは謝るけれど…?」


「ええ、そうでしたわね。そうなると、余程の覚悟を見せないと国王陛下は許して下さらないかと思われますわ」


「覚悟…」


「ええ!リン様が体を張って、覚悟のほどを見せつければ国王陛下もきっとお許しになられます」


「うん、誠心誠意謝るけれど、覚悟ってどうやって見せれば良いの?」


「ですから『マンネリでも大丈夫!旦那も大・満・足・夜着』を着て私の全てを捧げるから許してねってヤルんですよ‼」


「結局そこにいくのーっ⁈」


 これを着用しないのはエイダが許してくれそうも無かったので、必死に頼み込んで夜着の上にナイトガウンを羽織って彼を待ってもいいと許可して貰えた。

 …あれ?エイダの方が主従関係上じゃない?




 今日で最後…夕食も終え、私はドキドキしながらベッドの上で彼を待っていた。

 今日も来なかったら…いや、聖女様が決定した以上は絶対に宣告されるはずだし、来るに決まっているけれど…。

 最後にきちんとお別れするのがこの恰好なのはやっぱり問題しか無いよね…?

 相手にその気がなかった場合、ただの痴女…。

 変態でエッチな女かと思われたら今後、王宮で働くのもきつ過ぎる。好きな人に顔を合わせるたびに『ぅわ…コイツ痴女だ。ドン引き…』とか思われたら絶対に死ぬ…。


 色々考えた末、ナイトガウンの上から更に毛布を全身に巻き付けることにした。

 ちょっと…大分マヌケな格好だけれど、ドン引きされるよりはマシだもんね。

 そんな風にソワソワしていると、扉が開き、ルカ様がお一人でこちらへ来るのが見えた。


「国王様、お待ちしていました」


 私の姿を見たルカ様はもの凄く微妙な顔で『何でお前はそんな恰好をしているのだ?寒いのか?』と首を傾げている。


「いえいえ、私の恰好についてはお気になさらず…。あの、聖女様は結局誰に決まったんですか?」


 ルカ様はベッド脇まで来ると、そのまま私の隣に腰を下ろした。少し疲れているみたいだけれど、無理しているのかな…?


「それより、お前は私に話すことがあるのではないか?先ずはそちらを聞かせてくれ」


 優しく促されると、少しだけ言葉に詰まる。

 でも今度こそ、気持ちを伝えないといけないから…私はゆっくりとルカ様に語り始めた。


「オールヴァンズのセオドア王子様に、亡命させてやると言われて…その為には契約が必要だと言われたんです。だからよく読みもしないで契約しました。…隷属の契約だなんて思わなかった…。自分が愚かだったからこんなことになってしまったのだと今は反省しています。だから…」


「だから…どうするのだ?」


「一生、王宮で働かせてもらって、騙された分の損失を…少しでも魔宝石の鉱脈代として返したいと思っています」


「一生…王宮で働く…」


「はい。エイダには国家予算並みの金額だと言われましたが、それでもご迷惑をお掛けした分を少しでも返したいんです。きつい仕事でも何でもしますから…」


「何でも?かなりきつい仕事でもやれると言うのか?」


「ルカ様が望むなら、私は何だってやります。体力には自信がありますから精一杯ご奉仕しますから…」


 何だか悲しくなってきて涙が出ると、ルカ様は私を抱きしめてくれました。


「判った…。それでな、聖女の事なんだが…」


「聖女様の事も…シホちゃんが聖女様だっていう事は判っています。でも…彼女は第2王子様のトーマ様と恋仲なんです!二人を認めてあげることは出来ないでしょうか?」


「シホが…?お前はどうしてそんなことを知っている?」


「シホちゃんから直接聞きました。トーマ様と一目で恋に落ちたって。ルカ様がシホちゃんの為に髪飾りを贈って求婚したのも判っています。でも二人の関係を許してあげることはどうしても出来ないのでしょうか?」


「…聖女と私は婚姻をせねばならないことは知っているな?」


「でも、このままじゃシホちゃんが可哀想です!私はずっとここでルカ様の為に働きますから彼女の事は諦めてあげてください!」


 ううう…泣きながらルカ様に縋り付くと彼の目が細められた。


「お前は一体…なんの話をしているのだ…?」


いつも拙い文章をお読みいただきありがとうございます。後数話で本編部分が終了しますが、国王編でリンの知らなかった部分も書いていく予定です。

宜しければ、続けてお読み頂けたらな~と。



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