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25 オールヴァンズの危険な王子様

「オールヴァンズ王国の王子様がいきなりいらっしゃるの?」


王族の遊学にしても、表敬訪問にしても随分と急な話ではないだろうか?

しかも聖女様の最終選定が行われるこのタイミングで、急に挨拶に来たいなどとちょっと浅慮な気がする。

私の疑問にルカ様もため息を吐きながら『まったく迷惑な話だが』と頷いていた。

 あ、ここは私の部屋のベッドの上です。ルカ様とは相変わらず健全に一緒に寝ているところです。あしからず。


 ちなみに、ルカ様の妹姫エンネル王女が隣のオールヴァンズ王国と婚約をするために出向いているとは以前聞いた話だけれど、今まで婚約を渋っていたはずの第2王子のリアム様がいきなり婚約を承諾したことから急に表敬訪問の話が纏まったらしい。


「あんな大国から『婚約が決定した以上は一刻も早く、未来の義兄弟に挨拶をしたい』と強く乞われれば、断れるはずが無いだろう」


 結局、一方的に決められてしまい彼らが来ることになってしまったそうだ。


「聖女選定についてはリーチェス王国の秘匿情報になるため、本来ならばここに滞在させたくは無いのだが、如何せん準備の時間が無い」


 王族が滞在するとなれば警備の面でも適当な場所で泊まってもらう訳にはいかないもんね。それはそうだろう。


「そのため、これから1週間の間、私はオールヴァンズ王家につきっきりで対応することになる。当然こちらの私室に戻ることもほぼ無くなる」


 そっか…忙しいんじゃ仕方ないもんね。少し…寂しいけれど。


「聖女候補を出来るだけ隠すために、食事もしばらくは各自の部屋で取り、外には出ないように気を付けて欲しい」


 …私は元々、ほとんどこの部屋から出ていませんが…。


「それとオールヴァンズ王家の歓迎式典には出なくてもいいが、最終日のダンスパーティーには参列の義務がある。それまでにワルツを踊れるように準備しておけよ」


「え…?私、ダンスとか経験が無いのですが…」


 体育の授業の必修でしか経験が無い。


「聖女候補三人が纏まるとバレる危険も大きくなるから、各自にダンスの講師を付ける。本番までには踊れるように努力しなさい」


「…昔から武闘の方が得意だったので踊れる自信が無いのですが…」


「きちんとワルツを覚えたら褒美をやろう。何でも良いぞ?」


「…絶対に踊れるようになります‼」


 私の返事に気を良くしたのか口づけすると「後少しで選定も終わる…そうしたら…」と言いながら、ルカ様はゆっくりと目を閉じました。

 余程疲れていたのか、直ぐに寝息を立てはじめる彼にそっと寄り添うと私もゆっくりと眠気が来るのを感じる。

 もうすぐ聖女様の選定が終わる…そうしたら彼とはお別れが待っている…。

 私は少しだけ悲しくなりながら、そのまま眠りへと落ちていったのだった。



 翌日からの国王様は宣言通り部屋へはほとんど帰って来なくなった。

 エイダもオールヴァンズ王家の護衛があるからと、本来の仕事に戻されてしまい、私は知らないメイドさんや執事さんに囲まれて一人ぼっちで食事をすることになったのだ。

 …寂しい…。

 王宮の執事や侍女って主人と同じ食卓に着いちゃいけないし、おしゃべりも良くないらしい。

 だからこちらから話しかけても必要事項しかしゃべらない相手に私のストレスはドンドンと上昇していた。

 唯一、ダンスの時間だけは講師の先生から教えられたステップを覚えることに夢中になれるから楽しかったけど。


「リン様のステップは力強いですね。リードして下さる男性を振り回さないように軽やかに踊ることを覚えましょう」


 講師の先生からはそうお褒めの言葉を頂きました。力強いって…褒められているんだよね?

 ダンスの時間以外は基本暇だし、既にこの国の言葉もマスターしているからやることが無い。

 しかも他の聖女様候補とは接触も禁じられている以上、私が出来ることはただひとつ…。



 コソコソしながら、王宮の蔵書庫へ入ると思いきり本の匂いを嗅いだ。

 ああ…久しぶりの本の匂い…最高!王宮内をウロウロするよりはここでジッとしていればルカ様にも怒られることは無いだろうし、私も本が読めて楽しい。

 一石二鳥だね!と本を読みふけった。


 どれくらいの時間、本を読み続けていたのか…。気が付くと夕方の日差しが明り取りの窓から差し込むのが見えた。

 …そろそろ戻らないと、また大事になるかも。

 慌てて、本棚に戻していると強く誰かの視線を感じた。

 珍しいな…ここに人が来ることはめったにないのに…そう思い視線を辿ると綺麗な赤毛・赤目の男性がこちらを見ている。…知らない人だけれど…王宮の騎士の人かな?

 私と目が合うと、彼は笑顔でこちらへと回り込んできた。


 …うわっ!傍で見ると益々イケメン…。ルカ様も綺麗だけれどこの人もなんていうか高貴な感じがする。

 彼は私を観察するように眺めると「ここは一般人が入ってはいけない場所でしょう?どうやってここへ来たの?」と少し咎めるように言う。

 そうか!私が蔵書庫の利用許可を取っていることをこの人は知らないんだ!

 慌てて、許可書を彼に見せると「リン・イチノセ…もしかしたら君は異世界の人かな?」

とズバリ言われて焦る。


「あの…あなたは王宮の騎士の方ですか…?」


 おずおずと尋ねる私ににっこり微笑んだ彼は自己紹介してくれた。


「私はオールヴァンズ王家のセオドア・フォン・オールヴァンズ。異世界のお嬢さん、以後お見知りおきを」


 …え?この人がオールヴァンズ王家の王子様だったの?

 ヤバい…見つかるなってルカ様にきつく言われていたのに接触しちゃったよ。

 どうしよう…激しく動揺するリンだった。


やっとセオドア登場です(笑)これだけを書きたくて始めたのに長くなってしまった…

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