23 やっと会話が成り立ちそうです←(今さら)
「ルカ様とは一度、じっくりお話ししなければいけないと思っていました。」
サスサスサス…。
「…話…?いつもしているではないか…?」
なでなでなで…。
「ですから、ルカ様の…ひゃん…」
「私の…なんだ?」
このままだと拙いと思った私は現在、ルカ様のベッドの上で話をしています。
なぜか、彼の膝の上に座る形で…。
でも、話をしたいのに、体を撫でまわされ、首筋を舐められるから全然話が出来ません。
「ちょっと…んん…一回離れて頂けませんか?ぁん…話が出来ませんから…」
「ええ~このままで良いではないか」
「ダメです!」
バカップルみたいなやり取りをしたところで、もう一度仕切り直しです。
「ルカ様とは一度、じっくりお話しなければいけないと思っていました。」
「さっきも聞いた。それで?」
「私たちの元いた世界では、恋人になるまでは過度なスキンシップはしません。ですから、今のようにルカ様に口づけされるのも正直困ります」
「さっきは嬉しそうにしていたが…」
「今さらですけれど、この国に私たちが呼ばれた経緯や理由、そして私たちが出来ることをルカ様の口からお聞きしたいのです。」
「既にエイダから聞き及んでいると聞いたが」
「エイダから聞いた話は、あくまでも概要です。ルカ様のお考えや、ルカ様のご家族についても私は何も知らないのですよ?ですから、国王様の口から語っていただきたいのです」
「私もそれほどに暇では無いのだが…どうしてもと言うのなら、夜しか話せないぞ」
「…判りました。夜でも構いません…」
「だが、昼間は公務で疲れているし、夜はゆっくりベッドで休みたい。寝話くらいなら出来るかもな…」
「寝話…では私がベッドの脇に椅子を置いてお話を伺うのではどうでしょうか?」
「馬鹿め、夜中に起きていればお前が倒れるであろう。やはり同じベッドで眠りながら話すのが一番であろうが」
…やっぱり外交している人は口が上手い…。どうやっても丸め込まれそうだ。
「じゃあ…エッチなことをしないのなら、一緒に眠ります」
「どこまでなら、しても良いのだ?お前の基準が判らない」
うぐ…ここで行為を明確にされると、拒否しづらいな…。
「じゃあ、キスぐらいなら…してもいいです。」
「お前から寝ぼけて抱きついてきたらどうする?私のせいにされても困るが」
「…じゃあ、体を触ったり抱きしめたりも大丈夫です…」
「…判った。では今夜から早速一緒に休むか。リンがどうしてもと言うのなら仕方ないからな」
…どうしてもでは無いですが、ルカ様の興味が逸れてくれたのならありがたいです。
「最初から素直に一緒に寝たいと言えば良いのに。まったく、リンは素直ではないな…」
お前がな。
王宮の中庭での捕り物は小一時間ほどで終結したらしい。
エイダが鎧にベッタリと血を付けたままで国王様に報告していた。私はまたもルカ様の膝枕中です。緊迫した話なので起きたいけれど、ルカ様に頭を撫でられているから起き上がれない…。
「今回は10人程度が入り込んだ模様です。現在は全員確保し、残党はいないと思われます」
「聖女候補は無事か?やはり賊の目的は聖女なのか?」
「聖女候補様はお二人とも無事です。気を失われていたので私室で手当てを受けていますが、外傷もございません。目的に関しましては現在の所、判明していません。ただ、本日、中庭で聖女候補様がピクニックをなさるという情報は一部の貴族に漏れていましたので、その線かと…」
「聖女候補が無事であれば良い。あとは雇い主を炙り出し制裁をくわえろ」
「御意…すぐに手配いたします」
エイダが部屋から出て行くのをボーっと見ていると、執務中のルカ様に首を傾げられた。
「エイダって、本当に騎士様なんだね…。キリッとしていてカッコいいし、美人だし…お嫁さんにしてほしい…」
ウットリとしていたら「私の方が良い男だろう?第一エイダは女だぞ?」と口づけされる。
何で張り合うの?この人…。
「もちろん、エイダが女性なのは判っていますけれど、素敵すぎるんだもん。…あ、ルカ様も金髪に碧眼で外見は素敵ですよね~」
私にしては褒めたつもりだったのだが、ルカ様は不満なようだ。
「えーっと、ルカ様って私達日本人から見ると天使みたいな風貌だと思うんです。精霊とか、妖精みたいな美しさって言うのかな」
「…お前は私の妹姫と同じようなことを言う。あいつも妖精だの精霊だのに憧れては私を褒めていた」
少しだけ目を細めて、慈しむような表情をするルカ様に驚く。妹⁈兄妹がいるの⁈
「ルカ様って兄妹がいたの?え?王宮で見たこと無いけれど、何処で暮らしているの?」
「弟の第2王子はシトリン離宮に住んでいる。私の妃となる者とは弟と言えど一緒に暮らす訳にはいかぬからな」
「宝石の名前が付いた離宮なんだ‼じゃあ、妹さんは?」
「妹のエンネルは、いつもはトパーズ離宮に暮らしているが、今はオールヴァンズ王家との婚約の為に、オールヴァンズ王国へ行って留守だ」
おお!やっぱり国の繁栄の為に政略結婚とかもあるんだ!凄い!
「あいつは、絵姿を見て『オールヴァンズ王家の第2王子が妖精のような外見だ』と喜んで行ったのだ。婚約が成立するかはわからんが、元々気に入ると執着が凄いから、今頃は相手の王子も追い回されていることだろう」
「…ルカ様とそっくりだね…」
「そうか?外見は同じ金髪碧眼だが、あまり似ていると言われたことは無いが…」
似ているのは性格だよ。
…気に入ると執着がすごいとか、お前の話かよってくらいソックリ兄妹だよ。
「そうか…。じゃあ、お父さん、お母さんは?別の離宮で暮らしているの?」
「二人とも既にこの世にはいない。数年前に私が戴冠式をした直後に相次いで亡くなったからな」
「…そうか…寂しいね」
「人の寿命は神にしか決められぬ。寂しくても仕方の無い事だ」
私は起き上がると、ルカ様の頭を抱きしめた。
「よしよし、いつもお仕事頑張って偉いですね。リンお母さんがいい子いい子してあげます」
そう言って頭を撫でたら大人しく撫でられていた。…私から見える耳が赤いけど、きっと気のせいだよね。
「あんまり無理をしないで時には休んでね。お母さんはいつもルカを見ていますよ」
チュッと音を立てておでこにキスしたら「これからも、時々は撫でても良いぞ」と胸元からくぐもった声がしたので、彼も少しは素直になったかなと思えた。




