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2 王宮のメイドさんは最高の癒しだった

「それでは、只今よりお部屋へご案内いたします」


私達一人につき一人ずつ、専任のメイドさんがあてがわれる。

彼女たちは慎ましやかに微笑みつつ、優雅に挨拶する。

…さすがは王宮のメイドさん、全員美人だ…。


「私と今夜のディナーを取るまでの間は部屋でゆっくりと過ごしていただきたい。気に入ってもらえると良いのだが」


ルカ国王様は私たちに爽やかな笑顔を見せる。

もうすっかり、シホちゃん、まなかちゃんの二人はルカ国王にメロメロな様子で『はい、ご一緒できるのが楽しみです』と熱い視線を送っている。…うーん…眠くて頭がボーっとしてきた…。


「リン・イチノセさん?貴女も勿論私と一緒にディナーをしていただけますよね?」


当然とばかりに言う国王の態度を見ても気を遣う余裕すら無い…。


「すみません。私は体調が悪いので、今日は夕食をパスして休ませていただきたいのですが」


そっけなく言うと、国王様の眉がピクリと動くのが判った。

…眠さのあまり、つい本音が出てしまったが、国王様にとっては不敬だと感じただろうか?…まあ、言ってしまったものは仕方ない。


「判りました。…ではリン様とはまた、体調が戻られたら別に時間を設けましょうね」


さっきの不機嫌さを微塵も感じさせない微笑み外交…さすがは国王様だわ。


「ええ~?1りんさんだけ特別扱いはズルいですぅ!私も国王様とお話したいのに~」


 シホちゃんもまなかちゃんもルカ国王にグイグイ迫る。本当に一目ぼれしたんだね、君たち…。

 でも彼は体を一歩引いて「そうですね、また」と笑顔を見せた。

 …なんで二人は気が付かないのだろうか?彼は決して本心から笑ってなどいないことに。

 あんな作り笑いをしているのに人を騙せると思っているのだろうか…?


「用が無いのなら、これで失礼します。おやすみなさい」


 不敬かもしれないけれど、私はさっさと退散することにした。

 よく考えれば昨日も徹夜でお風呂にも入っていないし、化粧も汗でドロドロなはず。

 …さっき国王様が体を一歩引いたのも、もしかして私が汗臭かったから…?

 不安になりながら、クンクンと匂いを嗅ぐ。…ああ確かに汗臭いわ、私…。


「それではリン・イチノセ様をお部屋へご案内いたします」


 そう言って優しく微笑むメイドさんの笑顔に癒されながら、私はのんきに彼女の後をついて歩き出した。…後ろからジッと見つめるルカ国王様の視線には気が付かずに…。



「リン様のお部屋はこちらになります」


 王宮の長い廊下をひたすらに歩かされて、連れてこられた部屋は『ぅおお⁈す、素敵い』と思わず声をあげるほどに豪華で綺麗でした。

 え?ここは超お高いホテルかな?スイートルーム並みの豪華さじゃない?


 天蓋付きのベッドにふかふかの絨毯。ロングソファーにアンティークな家具まで揃っている。凄い凄い!私のワンルームのアパートとは大違いの待遇だわ!


「本当にこのお部屋を使っても良いんですか?…タダで?」


 つい貧乏人根性でタダなのかを確認してしまう。だって、身一つで連れてこられたからお金もスマホも持っていないんだもん…。IDカードだけぶら下げて…そこまで考えてやっと気が付いた。


「あれ?私は日本語をしゃべっていますよね?何で皆さんも日本語で話しているんですか?」


 そう言うと、メイドさんは優しく説明してくれた。


「異世界からの客人は過去にもあったため、異世界召喚された人に不自由させないようにと王宮内では魔道具で言語を変換しております。ですから、王宮内でお話しいただくのには一切の不自由はありません」


 …成程…。王宮の外に勝手に出たら言葉が通じないから死ぬぞと言う事ですね?


「過去に召喚された人もやっぱり元の世界には帰れなかったの?」


 私の言葉に悲哀が少し混じっていたからでしょうか。彼女は微かに目を伏せると頷く。


「ええ…。やはり今回と同じように聖女様として選ばれるか、それ以外の方は高位貴族に嫁がれたり市井で暮らされているようですわ。…過去の話ですからどこまで真実かは分かりませんが」


 ふーん…やっぱり帰ることは難しいんだね…。一瞬、家族の顔が思い浮かぶが、既に来てしまっている以上は腹をくくるしかない。私は問題を棚上げしておくことにした。


「うん、判った。えーっとメイドさんって呼ぶのもなんだし、名前を教えて貰える?」


 そう聞くと驚いたような顔で私を見る。


「私の名はエイダと申します。ですが、聖女様が下の階級の者を名前で呼ぶなどあり得ませんよ?」


「だって、何かの間違いで呼ばれただけで、私は聖女様じゃないもん。これからはエイダさんて呼んでも良い?」


 私の言葉にビックリした後、彼女は笑顔で了承してくれた。


「でも、”さん”はいりません。エイダとお呼びくださいね?」


「じゃあ、私もリンでいいよ?エイダ。これからお世話になります」


エイダは『もう、リン様は困った方ですね』と笑いながらも、部屋の設備についても教えてくれた。


 バスルームやトイレも部屋付きのがあるんですって!

 まず、バスルーム…。ここね、本当に感動しましたよ!

 だってさ、異世界でお風呂があるなんて思えないでしょ?それなのに、各部屋に一人用とはいえお風呂があるんですよ!大理石っぽいやつが!凄い!

 でも実際は大理石じゃなくって魔宝石を使ってあるんだって教えられた。

 魔法じゃなくて魔宝の石。魔宝石っていうのは魔力が込められた石で、ここリーチェス王国の産出特産品らしい。

 しかも、これの凄いところは魔宝の部分に手を当てると温かいお湯がいつでも出てくるところ!ああ、温泉文化万歳!

 …もしかしたら、過去の異世界召喚者も日本人でこのお風呂を作ったのかななんて思ったりした。…真実は知らんけど。


 早速、お風呂に入ろうとしたら『湯あみのお手伝いをいたします』ってエイダまで入ってきて大慌てしました。いやいや、自分で出来るからって追い出したけれど、こっちの世界の人って大人になっても風呂入るのに手伝ってもらうの?…ナニを?


 あの国王様もそうなのかな…女性に体を洗わせているなんてここは風俗か⁈なんて馬鹿なことを考えながら入ったらのぼせて、エイダにメチャメチャ怒られたけれど。


「大人だから一人で大丈夫と仰っていたのに、のぼせるまで入るなんて自己管理ができていません!明日からはやっぱり私がお世話しますから」


 怒りながらも着替えをさせて、ふかふかのベッドの上で優しく髪を拭いてくれるエイダの優しさにウットリする。

 …ふかふかのお布団…優しいメイドさん…最高かよ!

 …本当ならまだまだ残業して下手すれば今夜も徹夜だったのに。…異世界召喚されて良かったかもしれないな。


 私はこれから起きる不幸を全く予期せず、その晩は久しぶりに幸せな眠りを貪っていたのだった。


全年齢対象でどこまで書けるのか、なろう運営様の懐の広さを試す作品を目指しております(←嘘です)


※次話は明日から毎日投稿となります。お付き合いよろしくお願いします。

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