18 国王様の部屋から脱出!やったねリンちゃん!…詰んだ
「リン様、本日は違うタイプの夜着をご用意しましたよ」
エイダにお風呂で洗われたあと、新しい夜着を見せられた。淡いピンクで大き目のリボンが胸元にあしらわれていてすっごく可愛い、ネグリジェって感じの夜着だった。
…でもさ、これって前が開くやつだよね?リボンを解いたらそれだけでフルオープンしちゃう感じの…痴女っぽいアレだよね?
「今までのシンプルなタイプでは無く、こちらの可愛らしい方がリン様にはお似合いですわ」
「いえ、いつものシンプルなタイプでお願いします」
「ですが、折角国王陛下がリン様のためにお選びくださった夜着ですし」
やっぱりルカ様の差し金か‼
何でまなかちゃんとシホちゃんには宝石で私にはエッチな夜着なんだよ!いい加減にしろ。
「そんな薄いやつ着たら風邪ひいちゃう!お腹壊しちゃうから無理!」
「きっと国王陛下が温めて下さいますよ?」
「絶対に着ないから!いつもの夜着じゃないなら私はバスルームで寝るからね」
…結局、今回は私のごね得でいつもの夜着で許されることになった。
でもね、結局のところ薄い布一枚だから防御力が乏しい事には変わらないし、何一つ問題は解決していないのだ。
いっその事コルセットでガチガチに防御を固めて寝るのも有りかとか、部屋の外に逃げ出せないかとか考えたけれど、こっそり国王様の部屋を覗いたら、お仕事中でもバッチリ目が合ったし、気配に敏いルカ様に気が付かれず部屋を出ることは出来そうもない。
外には警備兵が立っているっていうし、どう考えても詰んでいる。
でも私がルカ様を受け入れる選択肢は今のところ選びたくない。
聖女様選定が終わって百万が一私が聖女さまだった場合には嫌だけれど受け入れるしか無いだろう。だって国の総力を挙げてきっと後を追われるだろうから逃げ切れる気がしない。
無理して逃げ出したら首輪でも付けられて監禁エンドが待っている未来がちょっとだけ見えた。
聖女様選定が終わって、私が聖女様じゃ無かった場合はまた話が変わって来る気がする。
聖女様と日がな一日イチャイチャしていれば、さすがのルカ様もペットの私に飽きてくれるだろうし、そうなれば労せずして王宮の外に出られる。
今みたいに中途半端に執着されるのが結局一番困るのだ。愛情なのかおもちゃを取られたくないだけの執着なのか判断が付かないから。
他の二人が従順に言いなりになるからこそ、勝手気ままに行動する私を許せなくて執着しているのならば、私が素直に彼のやりたいようにさせれば執着が消えることも当然判ってはいるのだ。
でも、判っているからと勝手気ままにエッチなことをされたり、ペット扱いされるのはちょっと違うだろう。私は彼のおもちゃになるつもりは無いのだから。
残りの数週間をどう逃げ切るかが、勝負の分かれ目になる。
先ずは今夜…どうすれば良いのかまったく見当もつかない。
窓も嵌め殺しで鉄格子がはまっているし…って、よく考えたら正妃の部屋に鉄格子の窓ってヤバくない⁈
愛し合っている正妃の部屋のはずなのに鉄格子付きの部屋…しかも脱出できるドアも国王様の部屋に繋がるドア一つだけ…。
もしかしたら、今まで聖女に選ばれてきた人たちもここに閉じ込められて無理やり…そういう行為をさせられていたとか?…そんな訳無いと信じたい‼
だって、愛が無くても全然OK!取り敢えず、その躰と魔力だけあれば問題ないからねってことでしょう?え?まなかちゃんもシホちゃんも同じ目にあっているの?
二人は別に逃げ出さなそうだし、国王様に迫られたら喜びそうな雰囲気だけれど、あの二人の部屋に行ったことがないから判らない…。
ちょっとだけ、二人の部屋に行ってみようかな…もしそこにも鉄格子がはまっていたら二人は国王様に無理やり色々…されている仲間かもしれないしね。
私は超理論でそこへ達すると、ドアの隙間から国王様の部屋を盗み見た。
あれ?…テーブルにも、奥のベッドにもいないみたい。ベッドは使用中は天蓋が下ろされるけれど、それも下りてないし…もしかしたらお風呂中かな?今なら抜け出せるかもしれない。
私はそろそろとドアを開けた。…うん、完全にここには居ないようだ!
ラッキー、このまま部屋を抜け出して、二人のどちらかの部屋へ匿ってもらおう。
そうすれば、今夜はルカ様に襲撃されることも無いし、私は床でだって寝られるからお部屋の隅っこで大丈夫だしね。
流石に夜着のままで出かける訳にはいかないから、上に何か羽織ってから出よう。
私はナイトガウンを羽織ると、ルカ様の部屋へ侵入した。
相変わらず部屋は静かなままで誰もいない。
こっそり廊下へ通じる扉を開けると音も無く開いた。
そっと外をのぞくと警備の人たちが交代の時間のようで、いつもより人数も少ない。
これは益々好都合だわ。素早く廊下の柱に隠れながら脱出に成功した。
やった!凄いんじゃない?私。これなら今夜は無事に眠れそうだね!
コソコソとコソ泥のように隠れて歩く私は二人の部屋の場所を知らないせいで、王宮の何処を目指せば良いのかも判らないアホだった。
さらに、その後すぐにルカ様から警備隊が私を探すために緊急配備されたことを知らなかった。
結果から言えば二重の大バカ者なのだ。
だから廊下の端っこに備え付けられた銅像の陰で『聖女様候補のリン・イチノセ様が行方不明になった!誘拐された可能性もあるから、直ちに緊急配置に付け』と言う怒号を聞いた私の気持ちが判るだろうか…。
これは拙い…。八方ふさがりになったと目眩しかなかった…。
アホのヒロイン…




