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17 お金も自由もない私

 蔵書庫で調べた内容はこっそりとメモしてドレスの胸元に隠した。


 本当は亡命できる国のアタリを付けてから更にその国の物価や現在の流通についても調べようと思っていた。

 でも、どの国も完全に人の流れを把握している以上は勝手に他国に移動することも出来ないし、この世界には大使館なんてものはないから、駆け込むことも出来ない。

 但し戸籍とかも無さそうなので、お金さえあれば商売の権利を買って、商人として他国に行くことは出来るかもしれない。


 やはり先立つものはお金か…。


 結局、最初の問題に戻って堂々巡りをしている私はコソコソと部屋へ戻ると、エイダに聖女様候補の選定後の待遇について聞いてみることにした。


「…聖女様では無かった方々の待遇ですか…?」


 エイダは困ったように首を傾げる。


「リン様の場合は、たとえ聖女様では無かったとしても王宮に留まられるのがお幸せかと思いますが…」


 それが嫌だから聞いているんだよ‼


「私の場合って言うより…一般的な?全員が王宮残留を希望する訳じゃないでしょう?」


「まあ、そうですわね。市井で暮らす方もいらっしゃるわけですし」


「そうだよね?その人たちはどうやってお金を稼いで暮らしているの?王宮から“聖女では無かったけれど残念だったね賞”とか、報奨金が出るとかなの?」


「聞いたことはございませんね…大体、“聖女では無かったけれど残念だったね賞”って何ですか?」


「適当に考えた。じゃあさ、衣食住の保証って言うのは家賃とか生活全般を保証してくれるってことかな?それとも毎月、現金で…」


「リン様⁈また変なことを考えておいででは無いですか?…ここを逃げ出して市井で暮らそうなどとは、思っていらっしゃいませんよね?」


 エイダの目が吊り上がる。…これはちょっと踏み込み過ぎたか…?


「そ…んな訳無いじゃない。もし聖女様じゃなかった場合、どうなるのかな~ってちょっと思っただけだし」


 誤魔化そうと微笑んでみると、エイダは諦めた様に『…まあ、そう言うことにしておきます。でもお痛が過ぎますとリン様はご自分の首を絞めることになる事だけはご承知おき下さいね』と諭された。

 …これは本当に拙い流れだよね…。エイダにこれ以上聞いたら、ルカ様に告げ口されるか、下手するとエイダが処罰されちゃうかもしれない…。

 私はエイダが大好きだから、そんなことになったら絶対に後悔するに決まっている。


 隙を見て、まなかちゃんとかシホちゃんに知っているか聞いてみた方が情報共有できていいかもしれない…。私はそう考え、元の世界から来た時に着ていた服のポケットにコッソリと先ほどのメモを忍ばせた。

 他の場所に隠してもバレるのは当たり前だとやっと理解できたから…。


 ディナーにもルカ様に恋人つなぎをされて向かうことになった。

 やっぱりまなかちゃんとシホちゃんには嫌味を言われたし、二人にどんどん嫌われていくのは地味にメンタルが削られる。

 私だって元の世界では仲良しの友達とショッピングに行ったり、お茶を飲んだり女子会していたのに…。ううう辛いよう…。

 少しだけでも息抜き出来ないかルカ様におねだりしてみようかな…そう考えたのが間違いだった。


「ダメだ」


 ルカ様は私の方を見もしないで即座に却下する。


「でも…エイダと一緒に街へ出かけてアクセサリーを見たり、お洋服を見たりしたいんです‼ほんの数時間で帰ってきますから出かけてもいいですよね?」


「だからダメだと申しているだろう。くどいぞ」


「王宮にばっかりいるから息が詰まるんですよー‼私は買い物に出かけたいんです」


「では、王宮に商人を呼んでやるから好きな物を買うが良い。宝飾品でも、ドレスでも…」


「違―う!私は町へ行きたいんです!買い物なんか別にしたくないけれど、外出がしたいって言っているの!」


「何でそんなに我が儘ばかり申す。聖女候補は王宮で大人しくしているものだぞ」


 困った子供を見る目をするけれど、監禁しているのだって立派な虐待なんだからな⁈


「じゃあ、聖女様じゃ無くなったら王宮を出ても良いんですか?後、どれくらい我慢したら市井で暮らせるのか教えて下さい」


 その瞬間のルカ様の殺気と言ったら思わずちびりそうになるくらいの恐怖だった。


「いい加減にしなさい。私を本気で怒らせる前に諦めろ」


 …結局、すごすごと引き下がる事しかできませんでした。


 私室に帰るとエイダが仁王立ちで怒り狂っていた。


「これ以上国王陛下を困らせるのはお止めくださいと申し上げましたよね?」


 はい…。


「ご公務中にも関わらず、リン様が執務室で騒げば国王陛下もお仕事に支障が出るとは考えなかったのですか?」


 はい…。


「でも、朝は執務室なのに膝枕で撫でられたから…少し話すくらいは良いかなっ…て」


「あれは国王陛下の寛大なお心遣いによってリン様を甘やかしていただけです。本来は執務中にあのような行為は許されるものではございません!」


 はい…ごめんなさい…。


「どうしても急ぎの用事がある場合は私にお申しつけ下さるか、国王陛下の執事を通じてお話をなさってください。よろしいですね?」


 私はまたもエイダにガッツリ叱られただけで終わってしまったのだった。


 夕食も恋人つなぎで連行されて、私は逆らう気力も無くしていた。

 夜はもうすぐやって来る…バリケードを封じられた私はどうやって逃げ出せばいいのかだけを考えるだけで心が一杯だったのだから。


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