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16 亡命先がありません

  昼過ぎに、ルカ様の羞恥プレイから解放された私は軽食を頂き、やっと一息つくことが出来た。

 …結局、ルカ様は何がしたかったのだろうか?そんなに癒しが欲しいのなら、ペットでも飼って可愛がればいいのに。

 でも、あんなにしつこく触ったり撫でまわしたりしていればきっとペットもストレスで禿げちゃうな…無理なお触りはペットの為にも止めてあげて欲しい。

 現に私は過度なスキンシップでヘトヘトだもん。ペット以下の扱いかよ?人権はどこへ行った?

 部屋でグチグチと文句を言っていたらシャール先生がやってきた。


「素晴らしいお部屋へお引越しされたのですね、リン様。玉の輿おめでとうございます」


 …ウインクして言う事かな?それ。

 扱いはペット以下だけれど部屋だけは立派なんですとは言いにくい。


「…きょうもご指導よろしくお願いします」


 取り敢えずはお勉強だ!笑顔で挨拶して講義はスタートした。


「うん、リン様は公用語を話すことと聞くことは出来るようになったと言えるでしょう。後は読み書きだけだね」


 シャール先生のお墨付きをもらって私は素直に喜んだ。


「じゃあ、先日言っていたご褒美だよ。下町で流行っているお菓子をプレゼントだ」


 シャール先生が小さな包みを出してきたので開いてみると果物の砂糖漬けが出てきた。


「これは杏とチェリーの砂糖漬けだよ。宝石のようにきれいでしょう。リン様は食べたことはあるかい?」


 ニコニコしながら勧めてくれるので彼と一緒にお茶をして、その場でお菓子も頂くことにする。

 甘いお菓子だからと、エイダがいつもより少し濃いめのお茶を出してくれた。


「…うん!甘いのに杏の酸味が強いからすごく美味しいです」


 杏の砂糖漬けにはお酒もたっぷりと使われているようで、ふわりとアルコールの香りが残る。


「甘すぎないから、これならば男性も食べることが出来ると評判なんだよ。但し、大人だけのお楽しみだけどね」


「アルコールが強めですもんね。でもすごく美味しいですよ」


「お気に召したようで良かった。あれから調べ物は進んだのかな?」


 いきなり話題が変わってドキンと心臓が音を立てた。

 そう言えば、この人も王宮から雇われている以上はスパイの可能性もあるのだ。

 迂闊なことを言えばルカ様に漏れる危険がある。


「…全然進みません。やっぱり独学で調べるのは難しいなって思って、最近は面白い恋愛小説を探してばかりなんですよ」


「そうか。でも王宮の蔵書庫じゃ、そんな本は無いんじゃないかな?」


「ええ、だから広い蔵書庫をグルグルと歩いているうちに時間が経っちゃって毎日が運動の時間になっています」


「アハハ…健康的でいいね」


 …こんな感じにシャール先生を誤魔化してお茶会は終了した。…多分、誤魔化されてくれた…と思う。これで誤魔化せなかったらどうしようもない。


 勉強会の後は、エイダを置いて王宮の蔵書庫へやってきた。うーん、本の香りは最高ですな‼


 以前はあれほど移動に困った蔵書庫だけれど、国王様の私室からは廊下をそのまま突き当ればすぐの場所にあった。

 おかげで、エイダの目も盗んで来られるようになったのはありがたい。

 許可書を提示して中へ入ると、私は目星を付けていた場所へと進んだ。

 前回は久しぶりの図書館に興奮してしまいウッカリ1日無駄にしたけれど、今回こそ目当ての本を見つけるつもりだ。


 ご存じの方も多いかとは思うが、私の元居た世界には【図書分類法】と言うのが存在していた。

 これは日本十進分類法の一つで、図書を主題・内容に基づいて分類する方法だ。

 こちらの世界でもそれが適用されているかは判らないけれど、本を利用する者にとっては利用価値の高い物だから、異世界であっても、絶対にそれに準じた分類分けはあると思いたい。


 案の定、区分分けされたらしきカテゴリーを発見できた。

 私はまだ読み書きが完全にマスター出来たわけでは無いので各国の詳細や、細かい言葉の意味などは理解できないところも多い。

 それでも、少しずつ必要なことが判ってきた。


 まず、ここは東に位置するリーチェス王国。魔宝石を主な資源として莫大な資源を産出する小国だ。魔宝石を採掘する際に出たクズ宝石や鉱石なども加工し、輸出している。

 主な仕事は発掘工や鉱石加工、そして商業が中心となっている。


 次に、お隣の魔法大国オールヴァンズ王国。こちらは大国にも関わらず、あまり情報が載っていない。現在も輸入に頼った政策がなされているようだけれど、10年ぐらい前から民間にも利用できる病院が建設されたり、民の為の政策が進められている。

 でも、情報規制が掛かっているのか、この国についてはほとんど判らなかった。

 きっと人の出入りも厳しく規制されているだろうし、ここに亡命するのは難しそうだ。


 最後にインマヌエル公国。ここは精霊の国とも呼ばれるほどに自然が豊かな国らしい。

 そして実際に精霊も存在を確認されている。

 生まれた時から契約をした精霊に守られて暮らしているので、自然を大切にし、あまり開発に積極的ではない国のようだ。

 産業も農業、林業などの一次産業が中心で他国から来た者には土地の売買をしない等の制約も厳しいらしい。


 私はここまで調べて困ってしまった。

 …だって近くに亡命できそうな国が一つも無いのだから。


ちょっとこれだけだと薄い内容なので、もう一話続けて投稿します。

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