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14 無意味なバリケードとセクハラ

  昔、私が幼かったころに大好きだったぬいぐるみ。

 たしか4歳の誕生日のプレゼントだと家族から貰って、それからは毎日抱きしめて眠っていた。

 黄色いフワフワの大きなクマさんで、首にリボンを巻いている可愛いぬいぐるみだった。


「ぅ…ん…」


 まだ微睡みながら、ぼんやりと隣を見るとフワフワのぬいぐるみがあった。

 あの頃のまま、フワフワの撫で心地で私はそれを胸に抱きしめる。


「お前、フワフワで気持ちがいいね…大好き…」


 私はそのまま、再び眠りに落ちていった。

 …もう、朝…?ぼんやりと懐かしい夢を見たことを思いだす。

 あんなに大好きなクマさんだったのに、いつの間にか失くしてしまった宝物のことを。


 うっかり手放せば、二度と戻ってこない大切な物を私はいくつ失くしてしまったのだろう。

 こうして、温かく逞しい腕に包まれて…うん?腕…?

 その瞬間、覚醒した。私はいつの間にか国王様を胸に抱き込んで眠っていたのだ。


 え?…確か昨夜はドアの前にそれはもう重たいテーブルと椅子を置いて、紐でドアノブと縛り付けてから寝たはず。この人、一体どこから入って来たわけ⁇

 ドアの状況を見たくても、ルカ様は私の背中に腕を回した状態で安らかに眠っているので、動くことが出来ない。


 しかも、さっきも言った通り、私が胸に彼の頭を抱き込んでいるから、夜着の開いた胸元に直接髪と彼の寝息が当たってくすぐったい…。

 どうしてこんなことになっているのか、サッパリ解らないまま、時間だけが過ぎていった。

 …え…?今、何時なの?

 このままの状態でいる訳にもいかないし、国王様も公務とかあるんじゃないの?


 でも、こんなに気持ちよさそうに寝ているのに起こしても良いモノか…。

 先日の寝起きの悪さを見る限りは無理やり覚醒させたら絶対に不機嫌になる。それは避けたい…。

 大声でエイダを呼べば、エイダにも国王様にも怒られて私が可哀想。

 ここはルカ様を起こさないようにそっと腕から抜け出すのが正解に違いないぜ!


 私は彼を抱きしめていた腕をベッドの天蓋に繋がる柱へと伸ばした。これで、腕の力でずるりと抜け出そうと思ったからだ。

 でも、国王様の腕は意外にもガッチリと私をホールドしていてビクともしない。

 いくらささやかな胸でも彼の顔に押し付けてまで下に抜けることも出来ないし…。

 体を背中側に反転させれば私が手で背中に回されたルカ様の腕を解くことも可能なんじゃない?よし、やってみよう。

 少しずつ体をねじって反転させようと動くと、夜着の開いた胸元で留まっていたルカ様の顔が、私の胸のふくらみに直接当たってしまった。

 その瞬間に彼が吐息を漏らしたので、思わず声が出そうになる。

 …危ないところだった…。我ながらエッチだけれど、ちょっと感じちゃって変な声が出そうになったわ。

 ルカ様は全然起きる気配も無く、私の素肌に当たる寝息も変わらない。

 もう少しだけ動ければ、脱出できる…はず。腕が少しプルプルしてきたけれど、もう少しだ!頑張れ私!

 そろそろと更に体を動かした時、ルカ様の目が開くとニヤリと笑った。

 そのまま胸元を舐められるとクスクスと喉の奥で笑うのが聞こえた。


「ひゃ…ん…やだ…」


 思わず、甘えるような声が出て我ながら戦慄する。何で痴漢相手に感じているのだ私は⁈


「お前は私にそんなに可愛がられたいのだな。まったく可愛いやつだ」


 そう言いながら、国王様のピンクの舌がチロチロと自分の胸元を這っているのを見ているだけで羞恥心と興奮が高まってしまう。


「いつか…ら起きていた…の?」


「お前が、私を『フワフワで気持ちがいいね…大好き』と言って抱きしめた辺りからずっとだ。随分と大胆に誘惑してくると思っていたが」


 それは夢で見ていたクマの話であって、断じて国王様の事では無いのよ⁈でも、そんなことを言える余裕も奪われてしまう。

 このまま、体を火照らされているとおかしくなりそうで、必死に彼を振りほどこうと身を捩った。


「これほどに私を誘惑するくせに、起きているときのお前は私を拒絶する。お前は素直では無いから躰から篭絡する方が良いな」


 いやいや、ダメでしょう!双方合意の上でないと強姦罪ですよ⁈


「助けて―エイダ―⁈」


 大声で騒いだら、さすがに国王様も行為を止めてくれた。


「耳元でギャーギャー喚くな。五月蠅い…」


 心底嫌そうに、私を拘束していた腕も放してくれる。

 …騒ぐわ!ここで黙っていたらヤラレちゃうでしょうが⁈なんで騒がないと思っていたの?馬鹿なの?

「そんなことより、私の部屋にどうやって入って来たんですか?」


 昨日、必死で作ったバリケードを見ると、ドアノブを縛っていた紐は鋭利な刃物で切られて、テーブルも脇に除けられていた。


「ああ、あの紐は邪魔だったから切り捨てた。…こんなことなら私のベッドでお前を寝かせればこんな手間は無かったと昨夜は後悔したから、今宵からは私のベッドで良いな?」


 良いワケあるか‼ ルカ様の提案に首がもげるのではないかという勢いで否定する。

 これ以上あんな行為をされたら、雰囲気と快楽におぼれて最後までヤラレてしまう…。


 ごくりと唾を飲み込んでから『今日は絶対にバリケードは作らないから別の部屋で寝かせてください』と土下座した。


「あの、ここで押し問答をしているのもルカ様の貴重なお時間を使ってしまいます。さあ、急がないと朝食に遅れて他の聖女様候補を待たせてしまいますよ?エイダを呼びますね~」


 返事は有耶無耶にして脱兎のごとくその場を後にする。

 …今回は回避できた。あとは今晩どうやって危機を乗り越えれば良いんだろう…。

 もうバリケードを作ることは出来ないし…と目の前が暗くなってしまった。


…うん…国王の変態ぶりがじわじわ書けて楽しいです。皆様にドン引きされるのが怖い…

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