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13 せめて鍵を付けてください

ルカ国王様から話が要ったのか程なくしてエイダが慌てた様子で来てくれた。


「エイダ…ぅう…怖かったよう…」


ドレスに着替えた後、エイダに縋り付いてそのまま泣いてしまった。


「ええ、暴漢に襲われたと思われたそうですね。ここは国王様も警備兵も警護を固めていますから絶対に安全ですわ。もう泣かないで下さい」


エイダは私を『よしよし』するように髪を撫でてくれるが、私が怖かったのはその国王様だよーっ‼

 本当に初体験が床の上で、しかも強姦されるのかと思ったから。

 ホッとしたら涙が止まらない。


「…もう、このお部屋は怖いから…元のお部屋へ帰りたいよう…」


 心からそう思って訴えたら、さすがにエイダも困った顔をした。


「…でも、以前の部屋は警備の面からいってもこちら程安全ではありませんし、隣のお部屋には国王陛下もいらっしゃいます。…国王陛下は剣の腕も一流ですし、きっとリン様を守って下さいますよ?」


 優しく諭されても嫌なものは嫌なのだ。

 …第一、私が心底恐れているのは国王様その人だし、こんな人が夜中も隣の部屋にいて”急に気が変わった、よしヤルか!”なんて言われたら誰が私の貞操の危機を救ってくれるの⁈

 剣の腕が一流だったら、言うことを聞かないから切り捨ててくれるわ!なんて展開もあり得るでしょう?本当に無理だからー!


「嫌だ―!絶対に嫌だー!元のお部屋へ帰るんだもん」


 もうなりふり構っていられず、大の字でベッドで大暴れする。

 こんな五月蠅い女は出ていけって言われるかもしれないけれど、ここにいるよりはマシな気もするからとりあえずギャーギャー泣いて暴れた。


「そうか…お前はそんなに恐ろしい思いをしたのだな…可哀そうに」


 ルカ国王に前から優しく抱きしめられて一瞬動きが止まった。

 …え?あれだけ暴れていたのに、どうやって近づいたの?

 それに、ものすごい早業で抱きすくめられたけれど、相当身体能力が高くないと出来ない動きだよね?…この人本当に強いのかもしれない…。そう思うと益々、恐怖が募る。


 今迄は、まさか反撃するはずがないと思って油断してくれたから攻撃が通ったけれど、

 油断していない国王様相手に逃げられる気がしない…。


「…お願いします、ルカ様…。私を元のお部屋へ帰してください。もうこのままでは恐怖のあまり眠れません」


 ”…お前が怖くて眠れないんだよ!”と心で思いつつも、さっきの泣き落としが有効だったから、もう一度やってみる。

 上手くすれば、許可されるかと国王様の顔を見上げてみれば、ゴクンと喉をならされた。

 …あれ?また顔が赤くない?ルカ国王様、風邪でも引いたんじゃないの?


 私が無言で見つめていると、国王様は益々強く抱きしめながら決心したように、とんでもない事を言いだした。


「それでは、今夜から私がお前と同衾してやろう。一緒に休めば暴漢が出てもすぐに私が切り捨ててやれるだろうし」


 いやいや!そんな肉食獣の檻にウサギを放つようなこと、出来る訳無いでしょうが⁈

 絶対に頭から食われちゃうでしょう!どんだけ女に飢えているの⁈


「そんな…国王様のお手を煩わすことなど出来ません!ルカ様が守って下さるのなら、安心して奥の部屋で一人で寝ることも出来そうです。暴漢が来ないように厳重にこちらの部屋にも鍵を増やしていただければ…」


「それは出来ない!リンにもしものことがあった時に鍵が付いていてはすぐに助けに行くことも出来なくなってしまう。だから一緒に休めば良い話だと…」


「とんでもありません!お休みの時間にまでルカ様が気を張っていては公務にも支障が出てしまいます!…私なら大丈夫ですからぜひ鍵を…」


「そんなことぐらいで支障が出るほど軟な身体はしておらぬ。私がリンを守りたいのだ」


「本っっ当に大丈夫です‼どうしても不安でしたら、エイダに一緒に寝てもらいますから‼」


 きっぱりと拒否したが、ルカ様は不満そうだ。

 でも、ここで許可したら私は明日には性奴隷になっているかもしれない。

 それだけは断固拒否する!

 見かねたエイダが、折衷案を出してきた。


「リン様は、国王陛下が公務でお疲れなのに休息の時間まで奪ってしまうことを恐れていらっしゃいます。これもひとえに国王陛下のお体を思えばこそ!ですから夜は別々にお休みいただき、昼間に心を通わせながら距離を詰められるのが一番かと思われます」


 …さすがは王宮のメイドさんだ。言い方が上手い。

 全然、国王の体は心配してないけれど、これなら私の貞操は安心だね。


「そして、リン様は国王陛下がこれほどに貴女様のことを心配して下さっていることを心に刻み、歩み寄る努力をなさってください。ここは本来は正妃様のお部屋になる場所です。勝手に鍵を付けることは出来ませんし、夫婦の寝室である以上は我慢なさっていただきます」


「正妃様のお部屋なら、私がいるのはダメでしょう?だから元の部屋に帰った方が…」


「国王陛下がリン様に使用を許可されたのです。勝手な振る舞いは許されません。それに、もとはと言えばリン様が他の聖女候補様のように国王様と交流することを拒んだり、蔵書庫に行きたいと仰ったから少しでも貴女の移動が楽なように、そして国王陛下と交流しやすいように考えて下さったのですから我が儘はお止めください」


 …うう、ド正論…。ぐうの音も出ません。


「判りましたね?」


 エイダの言葉に無言で頷く。こうなったのも、もとはと言えば考えなしに行動した自分が招いたことだ。

 …こうなったら、武器になりそうな物を枕元に忍ばせて、いざとなったらそれで身を守ろう…。

 私は懲りずにそう考えていた。


 結局、お部屋はそのまま国王様部屋の奥にある部屋を使う事となってしまった。

 しかも、この部屋には脆弱な鍵すらないことが発覚した。

 国王様が扉を開ければ、即私のベッドへIN出来てしまう恐ろしい部屋なのだ。


 部屋中を漁って武器になりそうな物を探したけれど、鈍器や刃物なんかは見つけることが出来なかった。チッ…残念。

 ディナーの席で、こっそりフォークを胸元に仕舞おうとしたものの、エイダに見つかって取り上げられてしまったし、今夜に向けての対策が思いつかないまま寝る時間となってしまった。


「それでは、私はこれで失礼いたします。ごゆっくりお休みください」


 エイダがニコニコしながら退出してしまう。…あんなに一緒にベッドで寝ようと懇願したのに、『怖いなら国王陛下に頼んでみたら如何でしょう?』なんて酷すぎる。エイダの裏切り者…。


 何とか扉を塞ぐ手立ては無いかと考え、重いテーブルと椅子を扉の前に積み上げた。

 これをカーテンタッセルの紐でドアノブと縛りつける。

 よし、これで危険な肉食獣は入って来れないだろう。

 死ぬほど重かったけれど、これで安眠できそう…。

 ホッとしたら強烈な睡魔が襲ってきたので、私は寝ることにした。


※感想や他からもご要望を頂いたので、本編終了後にルカ編も書いてみました。…本編と合わせて50話を超えてしまい…全然サクッと読めません…。

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