書簡15(後編):宇宙から落ちてきた美少女
<ステータス鑑定>
登録名:テゥヌクティプ
種族:ゴーレム
性別:無
年齢:25歳(現駆動体3年目)
職業:職人助手
属性:無属性
体力:120/120
魔力:0/0
基底戦闘力:32
基底防御力:76
精神力:922/922
すばやさ:294
知力:399
器用さ:497
女子力:299
武器:(なし)
防具:エルフのふく
おさないしたぎ
追加装備:値切りの指輪
持ち物:魔道士エクセルの売掛帳
エルフの千年筆
習得魔法:(なし)
習得権能:
高速暗算
特売探知
赤貧耐性
値引き交渉
返済期限泣き落とし
手縫い裁縫
古着仕立て直し
かけつぎ・継ぎ当て
革製品補修
履き物修理
室内雨漏り割れはがれ染み修繕
陶器の金継ぎ
金物直し
木製品加工補修
刃物研ぎ
古道具買い取り全般
状態異常:変人恋慕
獲得称号:
大陸商業ギルド簿記検定1級
値切り名人
雑草料理長
貧乏食の達人
社会不適応者後見人
「……本当にゴーレムだ」
女の子に鑑定魔法をおかけになった錬金術師様は、目の前にいる子がゴーレムである事をご確認なさって絶句しておられます。パペッティアさんはその様子を見てドヤ顔です。
領主様は女の子に思いっきり顔を近づけて、錬金術師様に引き戻されました。
「……間近で見ても、生身のエルフにしか見えない」
「外見も凄いですけれど、会話の受け答えが一般ゴーレムの常識を越えています。王立大学の人工精霊よりもヒトに近いですよ」
「私の思考核はこの惑星のものではありませんから」
「「ええええ!?」」
お話を聞いてみると、お体はパペッティアさんが作ったものだそうですが、中に組み込まれているのは、遠い宇宙の彼方からやってきた人工知性さんだそうです。
「もともとはこの惑星を調査する自律探査機の思考核だったのですが」
「も、もしやこの星の侵略を企む宇宙人の尖兵……」
「いえ、『突撃・隣の異星文明』という情報娯楽番組の取材をしていました」
「娯楽番組」
領主様はどういう顔をしたら良いのか判らない、という表情です。
「私が組み込まれていた宇宙車が、取材中に魔物に襲われまして」
「宇宙車?」
「宇宙の大平原を走る車です。私を作った種族は、宇宙を移動する乗り物をなぜか車輪がついた車の形にしたがる習俗があるのです」
「地球人が宇宙船を戦艦や帆船の形にしたがるようなものですか」
「でまあ、車体をバラバラにされて地面に落ちているところをご主人様に拾われまして、思考核をエルフ型ゴーレムに組み込んでいただいたのです」
領主様が絶句していると、パペッティアさんが言葉を続けました。
「こいつを作った後では『スゴイデス、ゴ主人サマ』しか言えないような『お人形さん』を作るのが嫌になってしまった。正直言って、もう仕事をする気がおきない」
「そんな事おっしゃらないでください。私の同類がまた事故をおこして、思考核だけが無傷で落ちている事があれば」
「確率的に言ってありえないだろ。かといって人工精霊を創れるほどの魔力は一生かけても集められない。勇者の聖剣のような知性化武器があればそれを思考核に使えるけど、僕には手に入らない」
その言葉を聞いた領主様と錬金術師様は、え、という様子で顔を見合わせました。
「あのですね先生、具体的な事情は説明できないのですが、少しお話が」
領主様は錬金術師様と一緒にパペッティアさんに近づいて遮音結界を張り、何やら内緒話を始めました。最初は嫌そうな顔をしていたパペッティアさんが話をしているうちに目を輝かしはじめ、手を振りつつ何か力説しています。
しばらくすると遮音が解除されました。
「そうか、『仮想受肉』して遠隔操作すれば良いのか! なるほど、今の時代なら『中の人』がいればそれで良い! よおおおおおおおおおしっ!! 創作意欲が沸いてきたっ! おいティプ、差し押さえられてるゴーレム素材を『預かり所』から受けだしてきてくれ!」
「あっはい、でも負債の支払いが」
「依頼者様が前払いで全額支払ってくださるそうだ!」
「まあ素敵! さすがご領主様、さすごりょさすごりょ」
あまり聞いたことの無い言葉が出ました。
そのあと錬金術師様が契約魔法を織術して、パペッティアさんと領主様の間にゴーレムの製作契約が結ばれました。これでもう前払いの対価を持ち逃げしたりはできません。
「ゴーレムの姿形をどうするかは、僕にまかせてもらって良いな?」
「できればヒト型でお願いします。エルフ型だと目立ちすぎるので」
「うん判った。テツボー先生の絵を見本にして造ることにしよう。納付期限は10日後だな?」
「早すぎますか?」
「素材を取り戻せば3日でできる。僕の魔法造形力をなめるなよ」
「うわ凄い」
こうして話がまとまったあと、
「今日はもう遅いので泊まっていってください。ありあわせの物しかありませんけれど契約のお祝いに、蓄えてあった食材を全部使ってお食事を作ります」
とテゥヌクティプさんが言ってくださいました。
その晩は干したサルマ茸のお汁、雑草団子、木の根の煮物、青草の絞り汁などが床板の上に並べられ、パペッティアさんと領主様は芸術論を語り合って意気投合していました。
我々は床に敷かれた正体不明の何かの上で一晩を過ごし、翌朝に頭目さんの案内で里の結界を再び抜けて村に戻ってきました。
エルフの里は領主様のお供でもない限り入里許可が出ませんので、今回はたいへん貴重な体験をさせていただきました。
それにしても、領主様は発注するゴーレムの姿形を「お任せ」にしてしまいましたが、どんなゴーレムができてくるのでしょうか。爆弾さんが端末として使う分には、どんな姿でも実用上は問題無いでしょうけれども……
まあ助手のテゥヌクティプさんの容姿を見れば、パペッティアさんの作風はなんとなく察せられる気がいたします。
窮屈な場所で寝てまだ体が痛いミヤゲより




