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黄金時代編
実業家の父親と財団の母親の間に生まれた私は貴族である。高校を卒業して親の事業を継ぎ、もう20年は経った。様々な物品を売却したが、事業は続いている。
現状、建物の耐震工事に金が要る。今すぐやりたいが、利益が伸び悩んでいる。まあなんとかなるだろう、私の実力で20年続けられたのだ。
息子二人の育成には力を入れた。有名高校に進学させ、上位の大学に入れさせてやった。跡継ぎの用意は十分だ、もう放置でいいだろう、金の無駄だ。
気掛かりなのは弟のことだ。あのアニメを見るばかりでバカの引きこもりは、地方の事業と土地だけを与えられた。無能のやる経営だ、事業を潰して逃げ帰ってくるだろう。
もし帰ってきたら、屋根裏にでも住ませて、掃除員として雇ってやるつもりだ。幹部に加えたとしても、あの頭では邪魔なだけだ。
さて、会食の準備をしよう。創業10周年の経営物語を聞きに、記者が来ているはずだ。日本の貴族として、真摯に応対してやるか。