第13話「人間の敵」【Cパート アーミィVSポリス】
【2】
睨み合う2機のキャリーフレーム。
片方が一歩踏み込めばもう片方が下がり、片方が横に歩くともう片方も真逆に動く。
ジリジリと巨大な足がすり足し、緊張に包まれる戦いの場。
しびれを切らした〈ザンドール〉が、〈クロドーベルⅡ〉へと飛びかかった。
『甘いん……だよぉっ!!』
放たれた巨腕を身軽な動きでかわし、同時に足払いをかける〈クロドーベルⅡ〉。
そのまま宙に浮いた〈ザンドール〉の腕を引っ掴み、そのまま一瞬で組み伏せた。
「一本! デッカー警部補の勝ち!」
「派手にやられたもんやなぁ、セドリック」
「隊長! ポリスに負けたなんて、アーミィの身として辛すぎますよ!!」
地面に手を付き悔しがるセドリックの背中を見下ろしながら、内宮はナハハと乾いた笑いを投げかけた。
今日はコロニー・クーロン内のコロニー・ポリスとコロニー・アーミィによる合同のキャリーフレーム模擬戦会。
トーナメント式で試合を行い、両陣営の最強パイロットを決める大会である。
順調に勝ち上がる内宮ではあったが、初戦敗退のトニーと今敗退したセドリックはともにコロニー・ポリスの精鋭に敗北していた。
「まあ気ぃ落とすんなや。対等な状況のキャリーフレーム戦やと勝負の命運分けるんはセンスや」
「センス……」
「所属とか歳とか、そないなもんは飾りや。ま、うちが二人の分まで……」
「じゃあ私たちの分もお願いします~!!」
「い゛っ!?」
背後で片手を上げてそういったのは、楓真の腕を掴んている咲良だった。
楓真の顔を見る限り、どうもふたりとも敗北したようだ。
「まさか……そっちのコンビも負けるとはなぁ」
「普段、どれだけELに頼り切ってたかを思い知らされました~」
「僕も。機体性能に頼ってると思いたくはないけど、模擬戦用のチューニングはどうもね……」
「しゃあないなぁ……」
これで内宮隊は内宮を残して全滅。
アーミィの威信にかけても、負けることは許されなくなった。
今回の模擬戦においてアーミィ陣営は、普段使っている〈ザンドールA〉ではなく、旧式の〈ザンドール〉を使わされている。
バリバリの軍用機であるアーミィ機と、作業用機体を相手取るポリスの〈クロドーベルⅡ〉とは、性能の面で大きく開きがあるからだ。
(せやかて、うちは〈クロドーベルⅡ〉の原型も〈ザンドール〉も乗った事はあるからな。よっぽどゴツい奴がおらへん限りは負けへんやろ)
「それにしても隊長。どうして突然こんな大会を始めたんでしょうか? これまでアーミィでこんなことはなかったような」
考えを巡らせていたところで、急に咲良に問いかけられた内宮。
彼女の疑問も最もであるが、内宮は隊長として事情を知っている。
「まあ表向きは両勢力の技能向上と連携を高めるためやけど。裏ではキャリーフレームのツクモロズ化防止の狙いがあるんや」
「確か……戦闘用機体が戦いに出られないストレスでツクモロズ化するから、こうやって戦いの場を設けて発散させるんだっけか?」
「ポリスだけやのうて、アーミィも予備機を出して発散させとるんやで。せやから現行機やのうて旧式の〈ザンドール〉なんや」
一斉にへぇといった感嘆の語を漏らす一同。
そんな事もわからずに大会に望んでいた連中に内宮は心のなかで呆れていたが、次の試合準備に入れという連絡が入ったので口にはしなかった。
───Dパートへ続く