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第12話「結成! 魔法少女隊 後編」【Aパート 下校どき】


 家族に何かあったら、頭どうかなるんは必然や。

 それが、仲ええ家族やったらなおさらな。


 そういうときに、落ち着いた相棒おったら、選択を間違わへんで済むんやけど……。


 華世にも、そないな仲間できたんやろか……。




◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■


      鉄腕魔法少女マジ・カヨ


    第12話「結成! 魔法少女隊 後編」


◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■◆■



 【1】


「それでは皆さん、気をつけて帰ってくださいね」


 先生の号令で学校の一日が終わる。

 ここにいるクラスメイトにとっては当たり前の1幕だろう。

 けれど、今日が初登校だったホノカにとってはようやく訪れた安息だった。


 ──集団行動も、学校教育の一環よ。


 昼休みに華世から言われたことが、何度も想い起こされる。


 修道院時代、ホノカは子どもたちの中では一番年上でひとりだった。

 ホノカを慕う年下は多かったが、頼れる同年代は居ない。

 だからこそ、修道院を守っていたせんせいの側が居心地良かったのかもしれない。


 長らく孤独を味わっていたホノカにとっては、どの科目よりも集団行動は難しく感じた。

 幸いだったのは、差し金とはいえ理解者がいることだ。



「ホノカ、一緒に帰らないッスか?」


 読書用のメガネをケースに戻すホノカへと誘ったのは和樹だった。

 その後ろには、ニヤニヤした表情の拓馬。


「ええ、いいわ。帰りましょ」

「その調子ッス。すごく普通の生徒っぽいやり取りッス」

「私も少しずつ、変わらないといけないから。それよりも……しずかくん」

「え、僕?」


 不意に声をかけられた事にギョッとする拓馬。

 ホノカは僅かな不快感を表情で表しながら、目を細めて彼を睨みつける。


「さっきから私と秋山くんを見て変な顔するのやめて。不快よ」

「えっと……ごめん。いやぁ、親友が女の子に声をかけてるって構図があまりにも面白くって」

「拓馬、お前ちょっと勘違いしてないスか? おいらはあくまで、姐さんの手伝いのためにホノカに声かけてるだけッスよ?」

「別にそれ以上の感情はないから。片付け終わるまで少し待ってて」


 机の中の教材を取り出しては、カバンに戻すホノカ。

 すると突然、和樹がホノカのスカートへと手を伸ばし、裾をビッと引っ張った。


「な……何?」

「えと、スカートが椅子に引っかかってて……その、この角度からだと下着が見えてたッス」

「え……やだ、本当に?」


 赤らめた顔をそらしながら、恐る恐るといった口調で小声を出す和樹。

 いつからその状態になっていたのか、などとは考えたくもない。

 着慣れない衣服とはいえ、あられもない姿になっていた事にホノカは顔が熱くなった。


「おおお、おいらは見てないッスよ! 白いものは何も見てないッスよ!」

「やっぱり見てるじゃないの! 忘れなさい、忘れなさい!!」


 怒りに任せて拳を振り上げたところで、パシャリというカメラのシャッター音が鳴った。

 とっさに拓馬の方を振り向くが、彼は両手を上げて必死に首を振っている。

 その奥に揺れる金色の髪を見て、ホノカは怒りの矛先を見定めた。


「華世、あなた……!!」

「様子を見に来たら面白い状態だったからね。悪いけどこの写真、確保させてもらうわよ」

「ばら撒く気!?」

「保険よ保険。あんたが契約不履行(ふりこう)を働かない限りは、悪いようにはしないわ」


 そう言って颯爽さっそうと立ち去る華世。

 追いかけようと思ったが、どうせ帰れば会える場所に住んでいる。

 ホノカは行き場を失った持ち上げた足を、ダンと床に打ち付けた。



 ※ ※ ※



 真っ赤な顔をしたカズとホノカ。

 ふたりが写った画像を浮かべる携帯電話をカバンに仕舞い、華世は校門を通り過ぎた。

 ブルルンと低く唸るエンジン音に顔を向けると、そこにはヘルメットを抱えて待っていたバイクに跨ったウィルの姿。


「ホノカちゃん、どうだった?」

「心配いらないみたい。カズ達と仲良くやってたわ」


 投げ渡されたヘルメットを掴み、そのまま被る華世。

 そのままバイクの後部座席タンデムシートに跨り、ウィルの肩を掴む。


「このあと、支部だっけ?」

「ええ。ちょっと用事あるからよろしく」

「しっかり掴まっててね」

「わかってるわよ」


 駆動音を唸らせながら走り始めるバイク。

 そのまま車道に飛び出し、車の流れに乗る。


「さっき、何を見て笑ってたんだい?」

「撮れたての、ホノカの青臭いワンシーン」

「恥ずかしい写真ってことかい!? まさか、脅しにでも使うつもりじゃ……?」

「違うわよ。あたしはね、自分の人を見る目には自信あるつもりよ。これは、あいつの成長記録みたいなもの」


 交差点を曲がり、法定速度を守った緩やかな速度で住宅地を抜けるバイク。

 その後、緩やかに赤信号で停止。アイドリングで震える座席の上で、華世はそばのアイスクリーム屋を横目で眺める。

 カウンターに並ぶ親子。窓際の席で甘味に舌鼓をうつ学生たち。


「アイス、食べたいのかい?」

「別に? ああいった場所に、ホノカたちが笑顔で行く日が来るのかなって思っただけ」


 信号が変わり、再び走り始めるバイク。

 支部に近づくにつれ、減っていく車たち。

 ここから先はアーミィ支部と、その隣にある病院にしか繋がらない道。

 そのどちらにも用がない人間には、この道路を通る必要はない。

 車通りが少なくなった道路を、軽快なスピードでバイクが道を走る。


「華世ってさ、いい人だよね」

「はぁ?」


 頬を撫でる風に心地よさを感じていたところで、唐突なウィルからの褒め言葉に華世は素っ頓狂な声を返した。


「突然どうしたのよ。褒めても何も出ないわよ」

「いやいや。俺さ、華世にであってから……本当に幸せなんだ。ホノカちゃんも、華世の出会いから幸せになってくれたら……なーんて」

「はぁ……?」


 よくわからないことを口走るウィルに、呆れ顔を返す華世。

 けれど、少しのぞかせたウィルの横顔は、心から幸せそうな笑顔だった。




    ───Bパートへ続く

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