第8話 開幕 疑惑のインタビュー
かくして始まった新聞部による生徒会へのインタビュー。トップバッターはカレア。
「それではまず書記の東条先輩から。レナ、プロフィールを」
『東条カレア 2年B組 会計 通称 クイーンオブ貧乳』
なんとも的確なあだ名だ。
俺は吹き出しそうになるのをグッと堪える。多分ここで笑ったら、殺される。
「誰よ! こんなふざけたあだ名つけたのは! 出てきなさいよ、ぶっ飛ばしてあげるわよ!」
『校内の生徒の公正なアンケート結果』
生徒会の俺たちが知らないことから新聞部独自のものなのだろう。
「なら、書いた奴、全員ぶちのめす! 教えなさい!」
怒り絶頂のカレアは新聞部の二人に詰め寄ろうとする。
慌ててカレアを羽交い締めする。まずい、このままだと死人が出てしまう。主に男子の。何とかして止めなければ。
「落ち着け、カレア」
「落ち着いていられないわよ! 放しなさい和也!」
「カレアは胸がなくたって、魅力的だ! たがら落ち着け!」
「~~ッ!! ……ほ、本当? 和也?」
「ああ、カレアにはカレアだけのいいところがいっぱいある。だから、欠点の一つや二つ気にすることはないさ」
「べ、別に嬉しくもなんとも思ってないけど、和也がそこまで言うなら、しょ、しょうがないわね……」
これで何とか校内で死体が出るということはなさそうだ。よかっ――
『だがしかし、月代先輩の趣向は巨乳派』
「なんで知ってるの!? か、カレア、えーと、こ、これはだな……」
「バカ、変態、死ね!」
「ぐほっ!」
目に見えぬ速度で三連パンチが俺に飛んでくる。
いったいどっから情報が漏れてたというんだ。
「インタビューを続けますね」
『生徒会役員としての意気込みをどうぞ』
「私なり頑張って学校をよりよくしていきたいわ」
ない胸を張りながらカレアは意気込みを語る。ついでにうずくまる俺に蹴りで追撃する。なんでだよ。
『最後の質問、月代先輩をどう思っている?』
「ど、どうって、何よ」
『月代先輩が好きだとか?』
「~~ッ!! べ、別に私はこいつのことす、好きなんかじゃないわ!ど、どうでもいいんだからね!」
「げはっ!」
どうでもいいというなら殴らないでほしいです。絶対俺のこと嫌いだよね。全身が痛い……。
「あ、ありがとうございます。気を取り直して次に行きましょう」
あまりの光景に目の前の光景に若干引き気味である。
「次は書記ですが、剣城ならとばしていいですね」
『じゃあ、次』
「ちょっと! 何とばそうとしてるんですか!」
「しょうがないですね。レナ、プロフィールをお願いします」
『剣城土筆 1年D組 書記 通称 小悪魔ビッチ』
「土筆のどこが、小悪魔ビッチに見えるのか教えてもらおうじゃないですか!」
逆上する土筆ちゃん。俺が再び羽織締めして抑えている。また一つ俺は校内暴力事件を防いだ。ホントに彼女らは生徒会役員なのだろうか。俺は時々そう思う。
「ビッチについてはともかく小悪魔については異議はないな」
「ちょ、月代先輩ひどくないですか!?」
そう思うなら少しは日頃のおこないを見返してほしい。
『次の質問、生徒会として普段どんなことをしてる?』
「とりあえずは、適当に仕事をこなす感じですかね」
「会長、土筆ちゃんを解任しましょう」
「そうだね」
「すみません冗談です頑張ってお仕事してます」
一瞬で頭を下げる土筆ちゃん。普段からそうして欲しいんだけど。まあ、反省してるようだしこのぐらいにしてあげよう。
『最後の質問、月代先輩についてどう思っている?』
「和也先輩は土筆の大事な虐めがいのある玩具だと思ってますよ」
前言撤回、心苦しいが土筆ちゃんには先輩の恐ろしさを教えなければならないと思う。
「会長、土筆ちゃん解任の許可を」
「わわ、ごめんなさい尊敬してます許してください」
そこには二度頭を下げる勇者な後輩の姿があった。
「では次、副会長の笹垣先輩ですね」
『笹垣凛華 3年A組 副会長 クールな美少女』
前の二人と比べると明らかに通称がおかしい。
「凛華先輩のだけ、おかしくないですか」
「気のせいよ和也君、続けてもらって構わないわ」
『学校が抱える問題についてどう取り組む』
「解決できる問題から解決していくつもりよ」
『最後、月代先輩をどう思っている?』
「もちろん好きだわ」
ストレートに言われるとなんか照れる。べ、別に嬉しくなんかないだからねっ!
「どのくらいですか?」
「あんなことやこんなことをしたいぐらいかしらね」
いや、そんなこともなかった。
『ありがとうございました。では次』
そして凛華先輩のインタービューは何事もなく終わった。
……って、ちょっと待て、なんかおかしくない⁉
「問題発言スルーされてるんだけど!」
「次は会長の胡蝶蘭先輩です」
完全にスルーだった。凛華先輩、絶対買収しましたよねこれ。凛華先輩に疑いの目を向けるが、凛華先輩は俺に微笑んだ表情を見せるだけだった。恐ろしき、先輩。続いて今度は会長の番だ。
『胡蝶蘭陽菜 3年A組 生徒会長 会長』
「なんか雑だよ!」
開始早々、会長がツッコミをいれる。無理もない、他の三人と比べてあまりにも雑だ。
『生徒会長として』
「精一杯頑張って、みんなに楽しんで生活してもらえる学校にしていきたいと思ってるよ」
『月代先輩』
「私の番だけちょっと雑すぎない!?」
というかさっきから思ってたんだけど、なんで俺のことが出てくるんだ。新手の嫌がらせだろうか。
「そうだな……カズくんは可愛いと思ってるよ。ヘタレなとことか」
「会長俺泣きますよ!?」
会長に可愛いって言われるのは悪い気はしないが、俺にだって男としてのプライドがある。
「それでも、私が困っているときは助けてくれる頼もしい後輩だよ」
「会長~、俺……」
――俺、一生ついていきますと言おうとしたのだが、
「あ、でも、カズくんに女装させてみたいな」
「今ので台無しです!」
「大丈夫、カズくんはきっと可愛いくなる」
「そういう問題じゃないです!」
「そうかな? 絶対、可愛くなるのに」
「和也が女装……それもありかも……」「それ面白そうですね。先輩やってみてくださいよ」「安心して和也君、私は和也君がどんな姿でも受け入れるわ」と他の三人もそれぞれ意見を述べる。
「絶対にしませんから!」
「えぇー」
会長が残念そうに言う。いくら会長のお願いでもこればかりはできない。譲れないものというやつだ。
「ありがとうございました。では最後は月代先輩ですね」
会長のインタビューも終わり、とうとう俺の出番。まぁ、今のところ去年のインタビューほど変な質問はないから大丈夫だろう。
安心してしまったからだろうか俺は新聞部二人が目を光らせているのに気づいてなかった。
そして、新聞部によるインタビューは後半へと突入した。