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第5話 史上最強の妹

 生徒会の仕事も無事に終わり、俺は疲労を感じながらも家とたどり着いた。目の前は他の住宅と比べるとそこそこ大きいの家がある。これが我が家だ。


「ただいま」


 俺はドアを開け家にはいると、リビングから駆け寄ってくる人影があった。人影は少し小柄な少女で、その少女は俺を待ち構えてたかのようのように見える。


「お帰り、お兄ちゃん。お風呂にする? 私にする? それとも……わ・た・し?」

「夏葉、何でお前の選択肢が二つあるんだ……?」


 こいつは俺の妹、月代夏葉(なつは)だ。夏葉は、俺達一家が黒髪の家系の中なぜか亜麻色(あまいろ)の髪を持ち、顔立ちは整っていて俺とは天と地の差の出来だ。ゆえに、いつも俺はこいつは血の繋がった兄弟か? と疑ってしまう。もちろん、血は繋がっている……はずだ。現在は中学三年生で受験生だ。


 そんな美少女である夏葉が自信満々に言う。


「それはもちろんご飯はお兄ちゃんに作ってもらうからだよ」

「あのなぁ、お前料理できるんだから、たまには疲れて帰ってくる兄の代わりに作ってくれませかね」

「ふっふふ、それは無理な頼みだね。私の体はもうお兄ちゃんのものしか受け付けない体にしまったんだよ」


 少し顔を赤らめ、頬に手を添えて言う。あいかわらずだ。


「そんなんだとお嫁に貰われないぞ」

「お兄ちゃんのお嫁さんになるから問題なーし」

「いつも言ってるが俺とお前は兄妹だぞ」

「そんなもの愛があれば越えられるよ! それにお兄ちゃんがそう思っているなら、まずはその幻想をぶち殺してあげる!」


 右手を構え、どや顔をしながら言い退ける夏葉。そう、こいつは何故か俺に過度な恋愛感情をむける超絶ブラコン妹なのだ。果てには俺と結婚するために法律を変えようと目論んでいて、その為に勉強して全国模試1位をとった恐ろしい妹だ。本当に法律を変えてしまいそうで怖い。


「俺の唯一まともな思想を壊さんでくれ……」


 可愛い美少女の妹が自分に恋愛感情を抱いてる。こんなシチュエーションは他の人間からしたら羨ましく妬ましい限りだろう。俺だって他人だったらそうだ。だがしかし、俺はこいつの兄として兄妹の一線を越えるわけにはいかないのだ。


 俺は今日こそは、と諭すように言う。


「悪いんだが夏葉、俺はお前の兄としてお前の愛を受け入れられない」

「たとえお兄ちゃんとの愛ためなら国だって相手にするよ」

「俺の話聞いてた!?」


 いつもながら、夏葉さんには俺の思想は通じないようだ。今日のところは、というより今日のところも諦めることにした。


「とりあえず、ご飯作るからせめて手伝え」

「はーい!」



 ◆  ◆  ◆



「いただきまーす」

「いただきます」


 食卓は俺と夏葉で囲んでいる。

 親は仕事の関係で今は別居している。母親の方は月1ぐらいで帰ってくるが、基本的は俺と夏葉の二人暮らしだ。


 父親はベンチャー企業の社長、母親は売れっ子ラノベ作家なので一般家庭からしたら裕福な方でこれまで何一つとして不自由に思ったことはない。


「ん~美味しい! やっぱりお兄ちゃんのご飯は最高だよ」


 夏葉が唐揚げを頬張りながら言う。


「おだてても何もでないぞ」

「デザートはでるかもよ?」

「はいはい、わかったよ。あとで何か作ってやるから」

「やった!」


 やはり、夏葉には勝てないな。俺はそう思いながら唐揚げを口に入れた。外はカリカリしていて、中は歯ごたえのある鶏肉がジューシーでうまい。うん、我ながら中々の出来映えだ。


 俺達は雑談をしながら皿の上の料理を片付けていった。


「はぁ~~極楽、極楽。やっぱ、風呂が一番だよな~」


 俺が唯一くつろげる時間があるとすればここしかない。この時間こそが最近の俺の一番の幸せなのだ。

 生徒会の仕事で溜まった疲れが取れていく。特に今日は猫のシチューとの追いかけっこで全身の筋肉が痛い。


 しばらく湯船に浸かっていると脱衣所に人影が入ってくるのが見えた。おぼろげだが人影は女性だ。あれ、俺、幻影が見えるほど疲れすぎてしまったのか? 


 人影は服を脱ぎ終わると思いっきりドアを開けた。


「お兄ちゃん、一緒に入ろ!」


 そこには一糸(まと)わぬ姿の夏葉が現れた。しなやかな裸体で中学生とは思えないようなそれだ。俺は慌てて顔を背けて叫んだ。


「――なっ! 夏葉、お前なに入ってきてるんだよ!」

「何って、お兄ちゃんとお風呂入るためだけど?」

「なに当然みたいに言ってるんだ! とりあえず前隠せ! 前!」

「? 別に私は気にしないよ、お兄ちゃん」

「お前が気にしなくても俺が気にするわ!」


 男として見たい気持ちを抑え、俺は視線を反らし風呂から上がろうとする。


「すぐでてやるから、ちょっと待ってろ」

「えぇー、一緒に入ろうよ、お兄ちゃん」

「お前いくつだと思ってるんだ! 年頃の兄妹がすることじゃないだろ!」

「お兄ちゃんと風呂に入るのに歳なんて関係ないよ!」

「あるわ!」


 俺の抵抗もむなしく、結局夏葉と一緒に入ることになってしまった。せめてもとバスタオルを巻かせたが、それでも年頃の男としては目の毒だ。風呂自体は大きい方なので人間二人入る余裕はある。


「ふるひぃ~、いい湯加減だよ~」


 気の抜けたような声を出す夏葉。

 それと反対にため息をつく俺。


「はぁー、なんでこうなったんだか……」

「まぁまぁ、そんな悲観なさるな。こんな美少女な妹と一緒にお風呂入れるんだから、むしろ喜ばなくちゃ」

「だから、困ってるんだよ。俺は」


 ふと思い浮かんだかのように夏葉がたずねてくる。


「それよりも、大変なの、生徒会?」

「まぁな。かなりハードだよ……」


 メンバーが色々と個性的過ぎてな……。


「でも、お兄ちゃん楽しそうにしてるけど?」

「……そう見えるか?」

「うん、見える見える」


 夏葉に指摘され俺は首をすくめる。妹様はすべてお見通しのようだ。こいつには本当に敵わないな……。確かに俺は愚痴をいつつも実はこの愉快な生徒会が気に入っているのかもしれない。


「そうなのかもしれないな……」

「私はお兄ちゃんが楽しそうでなによりだよ」


 なんだかんだ言って夏葉には助けてもらってばかりだ。俺は夏葉の方に向き直ると、頭を撫でた。


「ありがとな、夏葉」

「えへへ~」


 頭を撫でられヘロっと表情を崩す夏葉。普段はまとわりついてくるくせにこんな表情は見せないので凄いギャップを感じる。全くもって可愛い妹だ。


 俺は断言できる。夏葉は史上最強の妹だと。


「そろそろ上がりますか」

「そうだね」


 お風呂場から出て脱衣所でタオルで体を拭く。そして、服を着ようと置いておいた着替えをとろうとする。隣には夏葉のと思われる着替えが置いてある。


「あ、待ってお兄ちゃん!」


 突然、慌てて俺を引き止めようとする夏葉。


「ん? どうした、なつ………」


 俺は振り向こうとした瞬間、夏葉の着替えの下にはみ出しているものに気がつき下着をどかし取り出す。


「これはどういうことだ、夏葉」


 取り出されたものは俺の今日履いてた黒色のパンツだ。夏葉は動揺している。そして、誤魔化すように、


「…………てへ♪」


 その後、月代家では説教の声が聞こえたとか聞こえなかったとか。



少しでも「面白い」「続きが気になる」「このヒロイン好き」と思った方、ブックマークと評価の方をしてくれると嬉しいです。

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