第2話~ピヨ~
「さて、お腹も一杯になったし、
そろそろ進みますか。」
「はい、コウイチ様♪
まずは何処に向かいますか?」
「龍王見学でもするか。」
「でも龍王が何処にいるのか分かりません。」
それは困ったな。
しかたがない。
こういう時は枝を持って、
前に投げて・・・あっちね。
「枝の先に向かうよ。」
「え?これも魔法なんですか?」
「魔法ではなくて元いた世界じゃ
こうやって進む方向を決めると
良い方向に進む事が出来るんだ。」
勿論、漫画の中だけの話だけどね。
「そんな事が出来るなんて、
魔法以上に凄いですね。」
「あんまり期待しないで。
急ぐ旅でもないし、
のんびり楽しんで行くのが1番だよ。」
「はい♪
・・・でも、のんびりは出来ないかも
知れません。」
「確かにね。」
ティラノサウルスみたいのに囲まれたぞ。
普通は単独行動じゃないのかい?
「コウイチ様。
出来れば殺さない様にして欲しいです。」
秩序を守る者としては、
無益な殺生はしたくないって事か。
まあ、当然だね。
俺も食べる目的以外では
なるべく殺したくないしね。
魔物を殺しまくっている俺が言っても
説得力はない気もするが。
「じゃあここは逃げますか。」
「はい、コウイチ様♪」
ティラノサウルスみたいだから、
空を飛んでしまえば、追って来れないかな。
もっとも空を飛べるのもいるだろうから、
油断は出来ないけど。
「良かった、さっきのは飛べないみたいだね。」
「はい。コウイチ様、ありがとうございます♪」
「いえいえ。それにしても、暑いねぇ。
最南端なのに何でこんなに暑いんだろう?」
「それは火山が活発で、
あちらこちらに溶岩が噴出しているので
この辺りは暑いのです。」
なるほどね。
という事は温泉もあったりするのかもね。
人狼族の温泉を思い出すよ。
「この先は山なのかな?
木が1本も見えないけど。」
「そうですね。
あっ、山付近を龍が飛んでます。
あれはヒドランですね。
龍の中でも比較的大人しい部類の龍です。」
「大人しい龍もいるんだね。
触れたり出来るのかな?」
「多分大丈夫だと思います。」
「じゃあ行ってみよう。」
大人しいなら乗れたりも出来るのかな?
ドラゴンに乗るのは、
漫画やゲームが好きなら憧れるよね。
そう言えば、ルーミーさんの母親の
レイラさんだったかな?
ドラゴンライダーになるって言って、
旅に出たって言ってたっけ。
案外この辺りにいたりして。
まっ、さすがにそんな偶然あるわけないか。
「コウイチ様」
「どうした、はるか?」
「ワイバーンが山の入口にいます。」
「ワイバーン?」
本当だ。
想像通りのワイバーンがいる。
「ワイバーンがどうかしたのかい?」
「ワイバーンは自分のテリトリー外から来た生物を
必ず襲う習性があります。」
「という事はこのまま進むと襲われるのか。」
「はい。
そしてワイバーンはかなりの希少種のため、
戦闘は避けたいです。」
「じゃあ迂回して山に入るか。」
「あのワイバーンは山をテリトリーに
していると思われるので、
何処から侵入しても襲って来ると思います。」
「残念。諦めるしかないかな。」
「ワイバーンはかなり強いので、
傷付けずに気絶させるのは、多分無理です。」
「残念だね。
ワイバーンを倒してまで行きたい訳ではないし、
諦めて違う場所に行くか。」
「コウイチ様、ありがとうございます。」
「気にしない、気にしない。
そういえば、何でヒドランは
ワイバーンに襲われないんだろう?」
「どうしてでしょう?」
「はるかも分からないのか。」
「かなり珍しい事だと思います。」
「ところでワイバーンが
こっちを見ている気がするのは気のせいかな?」
「え?あっ・・・こっちに気付いています。」
「こんなに離れているのにね。」
「恐らくコウイチ様の精神力が尋常ではないので、
感知されたんだと思います。」
「なるほどって俺の精神力の話なんてしたっけ?」
「勇者達が精神力がMAXだと言ってました。」
「そういえば、そうだったね。
取り敢えず逃げた方が良いかな?」
「そう!?ブレスが来ます!!」
「ブレスって、うわっ!?」
危ない、危ない。
危うくやられる所だったよ。
「コウイチ様!!
ワイバーンが突撃してきます!!」
速い!?
逃げても簡単に追いつかれそうだぞ。
狙いは明らかに俺だから
「はるかは離れてて!!」
引き付けてから・・・
「ロケットブースター!!」
よし、上手くかわせたぞ!!
気分は闘牛士だね。
ドラゴンだけども。
じゃあ、闘龍士?
って、そんな事よりも空中戦はワイバーンの方が
得意だろうから、一旦地上に降りるとするか。
地上に降りたぞ。
ワイバーンは・・・またこっちに向かってるな。
あの巨体じゃあ、
地面スレスレとかさすがに無理だろうから、
ブレスに注意すれば大丈夫だろう。
一気に降下してきてるぞ。
「コウイチ様」
「はるか!?離れてろって・・・」
「嫌です!!」
・・・うん、かわいい。
なんて思っている状況じゃないから
「はるか、ブレスが来る。避けるよ!!」
「はい!!」
来ると分かっていれば、問題ない!?
避けた所へ爪を前に出して急降下!?
ここまでそのスピードで降りれるのか!!
避け・・・たら、はるかに当たる。
仕方がない、ここはグラヴィティゾーンで
「こら、ピヨ!止めなさい!!」
えっ?ピヨ!?
ワイバーンの事?
ワイバーンが前に出していた爪を引っ込めたから、
ピヨであっているみたいだ。
とてもそうは見えない名前だが・・・。
って、うぉ!!
俺の頭の上スレスレをワイバーンが通り過ぎたぞ。
「アンタ達、大丈夫だったかい?」
振り返るとそこには小麦色の傷だらけの肌、
青い瞳、ショートカットが良く似合う?
大柄で筋肉粒々の女性が、
ヒドランに乗って俺を見ていた。




