第5話~狼人族襲来~
長く辛い過酷な修行の果てに得る物。
奥義である。
ついに俺も奥義を手にする事が出来た。
それは『エッチなシーンに興奮しつつも、下半身は鎮められる』と言う、
Dの称号を持つ者にはマストの奥義。
・・・これでこれからは安心して温泉に入れるな。
さて、温泉もたっぷり堪能出来たし、そろそろ寝るとするか。
ちなみに寝床はベッドではなく布団だ。
「狼人族が攻めてきたぞーーー!!!」
・・・眠って良い状況じゃ無いみたいだ。
仕方がない、着替えて外に出るか。
外に出ると既に狼人族が村に侵入しており、あちらこちらで争いが起きているようだ。
「死ね!!」
「いかづち!!」
「グガ!?」
どうするか。
過去に人間を蹂躙していたとはいえ、俺が争う理由にはならんしな。
待てよ・・・温泉の方に行って裸の女性を守る役も良いか?
「コウイチ!!外は危険だぞ、建物の中に避難するんだ!!」
ソウガはそう言うと、入り口の方に狼人族を斬りながら駆けていった。
模擬刀より更に大きい大剣を、軽々振り回せるなんて流石だね。
・・・一宿一飯の恩もあるし、何より温泉が最高だったし、ここは助っ人するか。
取り敢えず戦況を確認しなくちゃな。
空からの方が把握しやすいか。
翼を広げて空へと舞い上がった。
温泉の方は誰もいないか、残念。
入り口は・・・ソウガが圧倒しているから問題無さそうだね。
後は敵味方入り乱れている感じだ。
狼人族の方が人数が多いみたいだから、長引けば不利かも知れないな。
森の中は全く見えないから、まずは村の中の狼人族を追い出すか。
双剣だと足手まといになるだけだから魔法を使うとして、
少し動きを止めれば後は人狼族の人達が倒すだろうから。
全員を攻撃出来る雷魔法で、威力は弱くて良いから・・・
「百雷!!」
よし!上手く動きが止まったぞ。
人狼族の人達は多少戸惑ったみたいだけど、次々と倒しているな。
これで戦況も一気に変わるだろうから、ゆっくり寝れるかな?
・・・ソウガが村の中に戻って行ったぞ。
手薄の所がないか探しているみたいだな。
降りて声を掛けるか。
「ソウガ!」
「コウイチか。」
「空から見てたんだが、村の中の狼人族はほとんど倒されてるから、もう大丈夫だよ。」
「空?じゃあ、さっきの雷はコウイチが?」
「痺れさせるだけの大した魔法じゃないけどね。」
「助かったよ、ありがとう。」
「それより森の中は大丈夫かな?空からじゃ見えないんでね。」
「森の中にいた狼人族は退いて行ったから大丈夫だ。ただ、何時もより退くのが速いのが気になるが。」
「体制を立て直して、もう一度来るのかな?」
「わからんが、一旦族長に報告だ。」
俺も着いて行くか。
なんか嫌な予感がするしね。
「おぉ、ソウガ。戦況はどうじゃ?」
「はい。コウイチの手助けもあり村の中の狼人族はほぼ片付きました。」
「そうか。コウイチもありがとうな。結局助けて貰うことになるとはな。
さて、後はファレンの報告だけじゃな。」
「まだ戻ってないのかい?」
「うむ。ファレンだけ苦戦するとは思えんからのぉ。もう少しすれば報告に来るじゃろうて。」
・・・嫌な予感が当たりそうだな。
「族長!大変です!!」
「何があったのじゃ?」
「ファレン様が狼人族に捕まり連れていかれました!!」
「なんじゃと!?一体何があったのじゃ!!」
「子供を庇って捕まった様です。」
「まさか退いたのが速かったのはファレンを捕まえたからか!?」
「恐らくそうだと思われます。」
「だが、何故ファレンを捕まえたんだ?今まで連れ去るなんて事はないのに・・・。」
「わかりませんが、元々ファレン様を捕まえる事が目的の様でした。」
「まさか・・・。」
まさか?族長の様子がおかしいな。
何かを知っている?
「・・・」
「待つんじゃ、ソウガ!どこに行くつもりじゃ!!」
「妹を助けに行きます。」
「駄目じゃ!!全員で攻めても勝ち目は無いのに、お前1人で何が出来る!!」
「しかし・・・。」
「1つ確認したいんだが、族長さんは何でファレンが連れ去られたのかの心当たりがありますね?」
「!?」
「図星ですか。原因はファレンの左の眼・・・緑色の眼ですね。」
「何故それを!?」
「当たりですか。」
良くあるパターンだよね。
人狼族の眼はみんな琥珀色なのに、ファレンだけ違うんだもんな。
それからファレンから聞いた人狼族の話と合わせると、
「ファレンは人狼族を最初に率いて戦った子と同様の眼をしていて、
特別な力を持っている可能性がある。
そしてそれを恐れた狼人族が連れ去ったと。」
「・・・その通りじゃ。これは一族でも秘中の秘。代々の族長にだけ伝えられる事なのじゃ。
狼人族にも伝えられてきたのかもしれん。」
「殺すつもりなら連れ去る必要はないからね。
その特別な力と言う物を奪うつもりか、それとファレン自身を操るつもりか。」
「俺は一体どうすれば・・・。」
「ファレン自身が使える様になって、戻って来る事を期待するしか方法はないんじゃよ。」
どんな生物でも追い詰められれば、いつも以上の実力を出せる可能性はあるだろうけど、
その前に死ぬ可能性も充分あるだろうし。
ファレンか・・・思い浮かぶシーンが温泉なのがおかしい気もするが、男の本能だから仕方がない。
色んな意味でやる気も出てきたし行くとするか。
「狼人族の村は何処にありますか?」
「何を行っとる!行っては駄目と・・・」
「族長さん。あなたに私の行動を邪魔する権利はありませんよ。」
「その通りじゃが、殺されに行くのを見逃す事は出来んよ。
それに案内もなしに狼人族の村に辿り着くのは不可能じゃ。」
そこは考えてなかったな。
この森の中にあるんじゃ俺1人だと間違いなく迷子になるね。
となると、
「ソウガ、道案内を頼めるか?」
ソウガは一瞬驚いたが、すぐに気が付いた様だ。
「わかった。俺が案内しよう。」
「待て、ソウガ!!」
「族長さん、ただの道案内ですよ。それに俺はただ観光に行くだけなんだから問題ないでしょう?」
「わかりやすい嘘をつきおって・・・。危なそうならすぐに逃げるんじゃぞ。」
「危ない事なんてしませんよ。ソウガもだろう?」
「無論。ただの道案内だからな。」
さて、気合い入れて行くとするか!!




