第3話~温泉できゃ!ウハッ?~
「コウイチ殿、まずはご一献。」
あっ、酒か。
「お酒は苦手でね。」
「これはお酒ではありません。」
え?こういう場でお酒じゃない?
「お酒を飲むのは人間だけじゃよ。」
「そうなんですか?」
「お酒は感覚を麻痺させるからのぉ。わざわざ殺されやすい状況を作り出すなんて普通はしたりせんよ。
それに人間と言う生き物は、基本痛がり屋じゃ。
苦痛に耐える事が出来んのじゃから酒に頼るしかないんじゃよ。」
その通り過ぎて反論の余地もないな。
あっ、ファレンが飲み物を持ったまま固まってる。
「一杯頂きます。」
ファレンが飲み物を注いでくれた。
飲んでみるか。
・・・これはポカリスエットみたいな味だね。
結構好きだから嬉しいな。
「美味しいですね。」
ん?何か体が漲って来たような?
「体に力が溢れてきたじゃろ?」
「はい。これは一体何ですか?」
「パワードリンクと言ってな、これを飲んだ後に鍛えると効率良くステータスを上げることが出来るのじゃよ。」
「それは凄いですね。」
「凄いと感じるのはコウイチが人間じゃからじゃよ。
人間以外の生物は、作り方は違っても大体同じ様な物を飲んでるよ。」
「どうやって作るんですか?」
「水にメーセを加えた後に味をつけるだけじゃよ。」
「水にメーセ?」
「実際に見た方が早いかのぉ。誰か水を持ってきてくれ。」
水が入ったコップが運ばれてきた。
長老がコップに手をかざした。
『HUNTER○HUNTER』の水見式みたいだな。
葉っぱは浮いてないけどね。
「ほい、出来たぞい。」
飲んでみるか。
「・・・水ですね。」
「味はつけてないからの。」
「俺も試してみるか。」
「自身の精神力でメーセを水に加えるイメージじゃ。」
こんな感じか?
「ふむ。飲んでみようぞ。・・・ん、問題なく出来とるよ。」
だったらカルピスにも加えられそうだな。
「カルピスウォーター改」
よし、出来てるはずだ。
「白い液体を出すなんて、随分珍しい魔法だのぉ。」
「甘くて美味しいですよ。」
「コウイチ殿、私が飲んでみてもよろしいですか?」
ファレンがそう言ってきた。
目が輝いている。
甘いものに目がないのかな?
「どうぞ。」
「ありがとうございます。・・・美味しい!!パワードリンクの効果もしっかりとあります。」
「こんなに簡単に出来るなら人間も作りそうなのに、なんで作らないんだろう?」
「パワードリンクはアルコールがほんの少量でも入ると効果が消えてしまいます。
それからアルコールを飲んだ日は1日位立たないと効果が得られません。」
なるほど。
アルコールを選ぶ人の方が多いって事か。
勿体ないな。
「コウイチ殿、猪鹿蝶鍋が出来ました。召し上がって下さい。」
聞き間違えかな?
「猪鍋?」
「猪鹿蝶鍋です。」
聞き間違えではないらしい。
肉が入っているみたいだから、これの事か?
結構クセがある匂いがするな。
「このお肉が猪鹿蝶って言うの?」
「はい。体が猪で鹿の角が生えていて尻尾の先が蝶の形をしている動物です。」
・・・変わった動物だな。
とりあえず食べてみるか。
おっ、結構美味しいな。
もっとクセがあるのかと思ったけど、そんなことないみたいだ。
「美味しいですね。」
「そうじゃろう?まだまだあるから腹一杯食べてくれ。」
ご飯が欲しい所だけど仕方がない。
遠慮なく頂くとするか。
「カルピスウォーター改」
・・・ファレンがじっと見ている。
かなり気に入った様だ。
「・・・どうぞ。」
「えっ?あっ!ありがとうございます。」
尻尾を振りまくって大喜びだ。
さて、猪鹿蝶鍋でも食べるか。
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良く食べたな~。
少し休憩して修行でもするか。
「コウイチ、奥に温泉があるから入るといいぞ。」
「温泉ですか?」
それは良いね。
最近はウォーターボールで水浴びばかりだったしね。
早速行ってみるか。
「この道を道なりに進めば着くぞ。ゆっくりと温まってくれ。」
この世界で温泉に入れるとはね。
ありがたいよ。
・・・漫画ならファレン辺りと裸でばったり、きゃ!ウハッ!展開になるんだけど、現実はそんな上手く行く訳ないか。
おっ、ここかな。
大江○温泉物語みたいな外見の建物だな。
「おっ、コウイチさん。お先しましたよ。」
人狼族の男性が出てきて一声掛けてくれた。
舞台で戦ってたから覚えられて当然か。
「あっ、コウイチさん!」
「さっきは格好良かったですよ。」
人狼族の女性が複数声を掛けて中に入って行ったぞ。
ここで立っていると、ずっとこんな事になりそうだな。
さっさと入るとしよう。
・・・人狼族の女性が服を脱いでいる。
しまった!!男女間違えた!?
って入り口は1つしかなかったぞ?
いや、気付かれる前に出ないと、大変な事に・・・。
逃げる様に外に出た。
「ん?どうしたコウイチ。」
「ソウガ・・・。いや、ちょっとね。」
「温泉に入らないのか?」
ソウガに着いて行けば安心だな。
あっ、横にファレンもいた、
焦りすぎて気が付かなかったよ。
「入り方がわからないから、ソウガに着いて行くよ。」
入り口から入り脱衣場で服を脱ぎ始めた。
・・・二人同時に。
「ちょ、ちょっと待って!!ファレンも脱ぐの!?」
「温泉に入るのですから服は脱ぎますよ?」
その通りですけど、そう言うことじゃない。
「男女別ではないの?」
「温泉入るのに別にする必要があるのか?」
「ないのかな・・・?」
「兄さん、人間は別に入るのが普通なのでは?」
「そう言う事か。人狼族は裸の付き合いこそ大事としているから、コウイチも気にせず入れ。」
Dの称号を持つ俺には刺激的過ぎるんですが。
既に真っ直ぐ立てない状態ですし。
・・・この技だけは使いたくなかったが仕方がない。
「フローズンハンド」
そして手を息子に当てれば・・・冷たい!!
「ぐぅ・・・」
「どうしました?コウイチ殿?」
「何でもないです・・・。」
裸で近づかれたら暴発するので勘弁して下さい。
こうして何度もフローズンハンドを使い、女性の裸を横目に見つつ、ファレンに背中を流して貰ったりと危機的状況を沈めながら、なんとか温泉を乗り切る事が出来た。
・・・後でまた入りに来よう。




