第7話~鳥の唐揚げ定食~
何とか町に戻って来れた。
全員無事で良かったよ。
さて、レースも中止になったし、ここにいてもしょうがないから次の町に向かうとするか。
「あんた、全員助け出すなんて凄いな。」
さっきデカイ鳥に乗っていた人だな。
「それから1銀札だ。大会は中止になったからな。」
「大会が中止になって残念です。ちなみにさっき乗っていた鳥ってどうやって手に入るんですか?」
「行商人に買ってきて貰ったからわからないな。東の方で手に入るらしいが。」
ちょっと寄り道って訳には行かなそうだね。
仕方がない。
ここは諦めよう。
そういえば肝心な事を聞くのを忘れてたな。
「この辺りで時空や空間魔法に詳しい人って知りませんか?」
「東の方に行った所にある村に、昔そんな魔法を使う人がいたって噂があったな。」
・・・随分都合の良い設定だね。
これは鳥に乗れるチャンスかもな。
よし!東に向かって出発だ!!
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あれから3つの町に寄ったが、雲行きが怪しくなってきた。
時空や空間⇒時空間⇒時間⇒自慢と噂の内容が変わってきたからだ。
もはや全く関係のない魔法になりそうで・・・魔法ですらなくなって来た様な気がしてきたな。
それでも僅かな望みを掛けて次の村に向かっている。
おっ、町が見えてきたな。
どうか良い噂がありますように。
「時空や空間?知らんな。」
「・・・自慢だったら聞いたことがありますか?」
「あぁ、昔はこの町に腕自慢が沢山集まった事があったよ。
大揉めした見たいだからその時の噂が飛び火したんじゃないか?」
・・・来るだけ無駄だったか。
「今はそんな腕自慢の馬鹿な輩はいないから安心してくれ。で、町に入るかい?」
疲れたし休んで行くか。
「短期で入ります。」
「短期なら100リノスだ。そのバトルホースを泊める場所はこの町にはないけど、どうする?
ここで預かっておくかい?」
「大丈夫ですよ。カルピスウォーター。コシヒカリ、これ飲んだら好きなところで休んでてくれ。
後でりんごとか持って行くよ。」
「ブルルル!」
「バトルホースの飲み物を出す魔法なんて、聞いた事がないぞ。
時空や空間魔法より、はるかに珍しいんじゃないのかい?」
「使えるのはこの世界で私だけの魔法だからね。勿論人間も飲めるぞ。」
「旅するには便利な魔法だな。」
これで食べ物でも出せれば完璧何だけどね。
「はい、許可証。この町には1つお薦めの食事があるんだが。」
「なんです?」
「鳥の唐揚げだ。」
「なんだと・・・?鳥の唐揚げ!?」
「あ・あぁ。何かおかしな事を言ったか?」
「ご飯は付いているんだろうな?」
「もちろん。味噌汁も付くぞ。」
「味噌汁もだと?」
「に・兄ちゃん。なんかだいぶ印象が変わった気がするんだが大丈夫かい?」
「その店はどこにあるんだ!!」
「中央に行けば一杯あるよ。」
「ロケットブースター!!」
俺の大好物がこの世界にあるとは!!
絶対に食べねば!!
「こ・これは!?」
右見ても左見ても鳥の唐揚げの旗が立っているではないか!!
困ったぞ。どの店が一番美味いんだ!?
落ち着け俺。
こういう時は冷静に1つずつお店を見て行こう。
この店は塩の鳥の唐揚げか。塩も美味いが、一番ではない。次だ。
ここはあんかけ乗せか。確かにあんかけ乗せも美味いがこの世界初には相応しくない。次だ。
こっちはみぞれ・・・大根おろしか。さっぱりとしてかなり好みだが2回目以降だな。次だ。
あっちは醤油ベースだと!?
ここだ!ここしかない!!
うっ、待て。向こうも醤油ベースだぞ。
どっちだ。どっちが良いんだ?
何か決めては・・・この匂い、ニンニク醤油か!?
ここに決定だ!!
「親父!鳥の唐揚げ定食!!ご飯大盛りで!!」
「私女性何ですけど・・・。」
「・・・すいません。」
気がはやりすぎたな。
でもここまでくればもう安心だ。
後は出来上がるのを暫し待つのみ。
「お待たせしました。鳥の唐揚げ定食、ご飯大盛りです。」
待ってました!!
ご飯に味噌汁。鳥の唐揚げ4個にキャベツの千切り。きゅうりの浅漬け。
ほほう、レモンも付いているではないか。
これぞオーソドックスな鳥の唐揚げ定食だ。
まずは鳥の唐揚げを・・・と言いたい所だが、俺はまず味噌汁から飲む派だ。
食べる前に口に水分が欲しいんだよね。
という訳で一口。
美味い!!これは鰹出汁か?勿論この世界では違う名前かもしれんが鰹出汁に似た味だ。
味噌は赤味噌だな。
かの有名な『きんさん、ぎんさん』も赤味噌で長生きしていたらしいし良い選択だね。
具はこれまたオーソドックスな豆腐とワカメだ。
ジャガイモも捨てがたいが、やっぱりこれが一番だな。
よし、お次はメインだ。
まずは鳥の唐揚げのみで食べよう。
レモンを付けるのもありだが、最初は鳥の唐揚げのみで堪能しないとね。
カリッ、ジュワッとこれぞ唐揚げだよ。
美味い・・・泣きそうだ。
最近保存食ばかりで辛かったしな。
五臓六腑に染み渡るよ。
そしてここでご飯だ!!
美味い!!唐揚げ1個でご飯1杯なんて余裕過ぎるな。
「すいません、おかわりください。」
「おかわりは20リノスですけどよろしいですか?」
「良いです。あっ、大盛りにして下さい。」
ご飯を待っている間にキャベツをいただくとしよう。
シャキシャキして美味いな。マヨネーズの味も良いね。
「お待たせしました。」
「ありがとうございます。」
さあ、もう1ついただこう。
今度はレモンを付けて・・・これまた美味い!!
油っぽさが減って良い感じだ。
おっと、舌休めにお新香も食べねば。
カリッとしてこれも美味い。
やっぱり鳥の唐揚げ定食は至高の1品だよ。
む、またご飯がなくなってしまった。
残る唐揚げは1.5個だな。
もう1杯は余裕で行ける。
「すいません、ご飯大盛りおかわりで。」
「えっ?3杯目ですか?体に似合わず良く食べるんですね。」
ちなみに俺は痩せの大食いだ。
ご飯4合くらいなら一人で余裕で食べれる。
さてラストをゆっくり堪能するとしよう。
「・・・ご馳走さまでした。」
美味しかった。本当に美味しかった。
この町を去るのが名残惜しいよ。
「おいおい、聞いたか?なんとかって盗賊団の話。」
「あぁ。何でも時間に関する何かを奪ったとかなんとか・・・。」
盗賊団?しかも時間に関するだって?
ここに来て随分都合の良い話だね。
きっとダメダメ・・・ダメンズ?盗賊団の事だな。
という事はメディーナとまた会えるかも?
「確か北西の方で有名な盗賊団だよ。ダなんとかだったな。」
ダメンズ盗賊団だな。
次の目的地が決まって良かったよ。
これも鳥の唐揚げ様のお導きだな。




