第2話~メーセ~
可愛い女性だ・・・っと見とれている場合じゃないな。
ゴブリンもいつの間にか逃げ出したみたいだし。
「ありがとうございます、助かりました。」
「無事で良かったです。
ゴブリンは弱いけど、集団で襲ってくるから気を付けないといけませんよ。」
本当にゴブリンだったのか。
しかも弱いってのは万国共通なんだな。
という事はさっき見たファイヤーボールも魔法で合ってるのかな?
「あのファイヤーボールって、魔法・・・なんですか?」
「そうですよ?」
魔法まであるなんて、今まで自分が住んでいた世界とは、まるで違う世界にいる事で間違いなさそうだ。
「 ・・・魔法を知らないなんて、お兄さんは何者なんですか?
来ている服も、見たことが無いですし・・・。 」
俺から見れば、お姉さんの服もTシャツぽい布の服に、胸当てと肩当てがついていて、下はスカート。
まるでファンタジーの世界にいる服装だよ。
まあ、魔法にゴブリンが出ている時点で、ファンタジーだけどね。
そんな世界観じゃスーツ姿なんて不自然極まりないよな。
なんて説明すれば良いのか・・・素直に答えるか。
「・・・なんというか、気がついたらここにいたんだ。
何でこんな所に来たのかを知るためにも、この世界のことを色々知りたいんだけど、良かったら教えてくれないかな?」
「・・・よくわからないですが、悪い人には見えないですし、私の知っていることでよければ何でも聞いてください。」
優しくて、良い娘だな。
最初に出会えて良かったよ。
「じゃあまずはファイヤーボールについて教えてくれないかな。」
「あっ、はい!
ファイヤーボールは誰にでも使える魔法で、幼子が最初に覚える魔法です。」
「誰でも使える?俺でも使えるのかな?
・・・無理か。住んでる世界が違いすぎるし。」
「そんなことはないと思います。
精神力が無い人はいないですし、メーセは大気中にありますから、後はファイヤーボールと唱えれば出来るはずです。」
「メーセ?」
「メーセは大気中にあるエネルギーのことです。」
「・・・試してみようかな。」
「まずは右手を前に出して、手のひらを開いて下さい。」
「こうかな?」
「はい。そして火の玉が手のひらから出るイメージで、ファイヤーボールと唱えて下さい。」
火の玉のイメージ・・・。
本当に出来るのかな?
「ファイヤーボール」
本当に出た!!
マッチ棒程度の火の玉だけどね・・・。
「良かった、出来ましたね!
もっと経験を積めば、ゴブリンを倒せるくらいのファイヤーボールが撃てるようになりますよ。」
「ファイヤーボール以外にも出来ないのかな?
さっきのスタブ?とか。」
「スタブは槍の経験を積まないと使えませんよ。」
槍の経験か・・・。
という事は剣とか弓とかもありそうだな。
何かゲーム見たいで面白くなってきたぞ。
「ファイヤーボールが火の玉なら、水や氷や雷の玉何かも出来たりするのかな?」
「出来ることは出来るのですが、誰でもと言う訳では無いです。
・・・あの、日も暮れてきましたので続きは町に行きながらにしませんか?」
確かに。いつの間にか日が沈みかけて綺麗な夕焼けになっているな。
随分長い事と足止めしちゃったかな?
申し訳ないことしたな・・・。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。
私はルーミー。マーベラの町で警備の仕事をしています。」
「俺は耕一と言います。
最初にルーミーさんに会えて良かったです。
色々助けてもらったし、ありがとうございます。」
マーベラの町に向かう道中、ルーミーさんにこの世界の事を色々聞いてみた。
嫌な顔1つせずに、笑顔で答えてくれた。
とっても良い娘だな~。
この世界では基本となる火・氷・地・風・雷の5属性と、対の関係にある光と闇。
そして何処にも属さない無がある。
無の属性は単体では使えず、武器や道具を通すことで使えるようになる。
先日のスタブがそれだ。
他の属性は誰でも使えるようになる可能性があり、使える様になる条件はその人の心次第。
氷属性は冷静・冷徹・冷酷の心の持ち主が覚える。
地属性は愛が深い人、慈愛の心の持ち主が覚える。
風属性は何ものにも囚われない自由な心の持ち主が覚える。
雷属性は破壊と行った攻撃性の高い心の持ち主が覚える。
火の属性だけは特殊で、物心が付くと好奇心に火が付くからという説が濃厚とのこと。
そして一度覚えた属性は無くなることはない。
ちなみにルーミーさんは火属性の他に地属性が使えると、恥ずかしそうに言っていて可愛らしかった。
光と闇は、どちらかしか覚えられない。
1度光を覚えたとしても闇に落ちることもあり、その場合は今まで覚えた光属性は、全て使えなくなってしまう。
逆もまたしかり。
使える属性が増えると、同時に使い合わせる事で新しい属性を作ることも出来るらしい。
有名なところでは、火と氷を合わせる事で水属性の魔法が使える様になる。
しかし、コントロールがかなりシビアなため、例えば火が強すぎて蒸発してしまい、不発に終わったりと、使いこなせる人は少ない。
俺の世界で言われている五行思想や4元素じゃ水があるのに、この世界では難しいなんて不思議な話しだけど、冷やす力が強すぎて水で止めるのが難しいらしい。
だから火の属性が必要とのこと。
他にも空間や時空等々色々あるのだけれど、まだ解明しきれてない部分が多く、謎に包まれているとのことだ。
俺がこの世界に来たのは、空間か時空に関する魔法かも知れないな。
この辺りを詳しく知っている人を見つければ、元の世界に帰る方法が見つかるかもしれない。
今後は空間か時空に関する魔法に詳しい人を探す旅になりそうだ。
自分がどの属性が使える様になったかを知るには、ステータスを見ればわかるとのことだが、ステータス表示の腕輪が無いと見れないらしい。
町に売っているから買うと良いと教えて貰った。
そしてそこでようやく気がついたのだが、日本円がこの世界で使える訳が無いので、今現在1文無しと言う事だ。
どうしよう・・・。