第4話~コシヒカリ~
ガラガラガラガラ・・・
カルピスが20リットル入った容器を乗せた台車を引っ張る音だ。
少々うるさいがカルピスが飲めると思えば仕方がない。
荷物が重い分、思った以上に時間が掛かったが、バルトの丘に着いたぞ。
丘には体高2メートル~3メートルクラスのバルトホースが一杯いる。
早速試してみるか。
・・・近づく事すら出来ない。
手綱を投げ輪の様に投げても、サラリと交わされたし。
飛び乗ろうとしてもスッと避けられたし。
おまけにこっちを呆れた様に見てる。
聞いてた話と違いすぎるんだが、どういう事だ?
攻撃こそされてないから良いけど、バルトホースを追い掛けまくって、いい加減疲れてきたんだけど・・・。
取り敢えずカルピスでも飲んで一休みするか。
ん?あそこにいるバルトホース・・・もしかして寝てる?
これが最後のチャンスかも・・・。
台車の音で起きるとまずいから、背中に背負ってゆっくり近づいて・・・。
後、30メートル位・・・。
あっ、気付かれた!?
起き上がった・・・ってデカイ!!
他のバルトホースよりはるかにデカイぞ!!
「ブホッーーーー!!」
「うわっ!!」
ギリギリ交わせたけど、口から黒いレーザー見たいのを吐いたぞ!?
しかも地面が削れているし!!
大人しいんじゃなかったのかよ!!
「ブホッーーーー!!」
「うわぁぁぁーーー!!!」
竜巻に吹き飛ばされて、天地が引っくり返ったぞ。
ここは一旦逃げた方が・・・あれ?俺のカルピスは?
カルピスが・・・空を飛んでいる。
そしてどんどん落下速度が上がって行き、目の前に落ちてきた。
ガシャン!!
台車は完全に壊れた様だ。
てもカルピスの容器は無事壊れずにすんだ。
「カルピスの容器が頑丈で助かった。中身が無事で良かったよ。」
ドボドボドボドボ・・・。
この音はまさか!?蓋が開いてる!!
慌てて閉めたが、すでに遅し。
ほとんど流れてしまった・・・。
あぁ・・・俺のカルピス・・・。
・・・許さねぇ。
俺のカルピスをよくも!!
絶対に許さん!!
手荒な真似はしないと思っていたが、もう限界だ!!
カルピスよ。俺に力を貸してくれ!!
地面に飛び散ったカルピスが宙に浮き、丸い小さな玉を形成し、俺の回りを埋めつくす程の量になった。
「さあ!いくぞ!!カルピス流星群!!」
全てのカルピスが全方向からバルトホースに襲い掛かった。
何処にも逃げ場はない。
「なんだと・・・?」
バルトホースを闇が包み込み、全て防いだだと!?
まるで鎧じゃないか!!
ただの液体に戻ったカルピスはバルトホースの全身に掛かったみたいだ。
どうやら防げるのは攻撃だけらしい。
全身カルピスだらけだよ。
・・・顔に掛かったカルピスを舐めてやがる。
余裕って事か・・・。
体まで舐め始めた・・・そんなにカルピスでベトベトするのが嫌なのか!?
こうなったらもう一度カルピスを作り出して・・・
「ブォーーーー!!!!!」
吼えた!?
よっぽど気に入らないようだな!!
だったらもう一度喰らいやがれ!!
「カルピ・・・」
馬鹿な!一瞬にして目の前に来た!?速すぎる!!
交わす時間もない・・・殺られた。
ピチョピチョピチョ。
ん?あれ?攻撃してこない?
って、カルピスの容器の蓋を器用に開けて舐めてるし。
「お前、カルピスが気に入ったのか?」
容器をくわえて渡してきた。
どうやら物凄く気に入ったらしい。
「カルピスウォーター」
おっ、出た。味は・・・これは!!
さすが俺!!俺好みの少し濃いめなカルピスウォーターではないか!!
カルピスの町で買ったのは結構薄かったんだよな。
ん?バルトホースがくれって感じで見てるな。
この容器のままじゃ、飲みづらいよな。
だったら・・・真上に大きめの、
「アイスボール!!」
落ちてきた所を、
「かまいたち!!」
よし、真っ二つに割れたな。
お次は真ん中部分に、
「ファイヤーボール!!」
よし!!うまい具合にへこみが出来たぞ。
即席の器の完成だ!!
カルピスはしっかりと冷えていた方が美味しいからね。
ここにカルピスを注いで、
「ほれ、飲みな。」
ピチョピチョピチョ。
尻尾を振りまくっている所を見ると、味の違いにも気づいたらしい。
・・・カルピスが好きな奴に悪い奴はいないしな。
無理矢理乗ろうとした俺が悪いんだし、大人しく歩いて行くとするか。
「達者でな、バルトホース。」
バルトホースに背を向けて歩き出すと、何かに引っ張られた。
後ろに振り返るとバルトホースがコートの裾をくわえている。
もっとカルピスが欲しいのかな?
あっ、座った。
もしかして
「乗れって事か?」
・・・乗ってみるか。
俺が乗るとバルトホースが立ち上がった。
体高5メートル位あるんじゃないか?
・・・俺の事を認めてくれたのかな。
「お前の速さが見てみたい。試しに南にあるカルピスの町に行ってくれないか。」
約5㎞、どのくらい掛かるかなぁぁーーー?
物凄い加速に吹き飛ぶかと思ったぞ!!
良く耐えられたな・・・良く見たらたてがみが手や足や体に巻き付いて、俺を吹っ飛ばさない様にしてくれているみたいだ。
なかなか良い奴じゃないか。
それにしても凄い速度だな。
景色がどんどん流れていくぞ。
ブチン!!
今魔物を踏んだよな?
踏み潰すだけで倒せるって・・・。
ん?たてがみから闇のクリスタルが出てきたぞ。
あの一瞬でそんな芸当まで・・・凄いな。
なんて思っている内に、もう町が見えてきたぞ!!
まだ2分位しか立っていないような・・・。
5㎞を2分だから、30掛けて・・・時速150㎞!?
地上最速のチーターより速いぞ!!
町の入り口に着いた。
「凄いな、お前。俺の事をこれからも乗せてくれるのかい?」
「ブルブル・・・」
「OKと言う事か。ありがとうな。」
美しい黒色の馬体といい、金のたてがみといい、文句の付け所がない素晴らしい馬だよ。
「名前を付けて上げないとな。」
馬の名前と言ったらやっぱり『ダ◯ビースタリオン』だよな。
その時に付けていた名前と言えば・・・
「コシヒカリ。お前の名前はコシヒカリだ!!」




