ほろ苦い大人と、密みたいな子供
理想の夫婦は、両親だった。
理想の家族は、自分家だった。
理想の恋人は__。
1話:足を滑るラテ
きっと、その日は初めてましてだったね。
カフェラテの味を知ったよ。
理想の恋をした時…皆のような恋をしてないと知った。味が違った…立派な大人だった。そんな大人はほろ苦かった。
今までずっと、私は理想ばかり広がってた。
考えるのは相手の完璧像だけ。
余裕のあり…色気のある、クールビューティーの男性。顔はバランスが良くとれていて、手足が長く私よりも身長が高くて…。スーツの似合う人。そして…パパみたいな性格の人。
優しく、女には手を上げず守り、妻や娘が一番。構ってほしい、犬みたいな。容姿は身長を除けば、モデルかという程。雰囲気も、さりげない行動も、無意識な仕草は全て格好いい。
簡単に言えば
・憧れるのは大人な男性
・好みは大人な人
・旦那様はパパみたいな人がいい
これが全てだ。
当たり前の如く会えなかった。そんなの。
19年は生きてる。当たり前だから、それはそれは会えていない。19年生きても。
高卒のバイトで精一杯、学生に戻りたい19歳となってる私は悲しい若者。
バイトは、カフェの定員だった。
普通に、可愛い感じがするからなってみたかったんだ。ただそんだけ。
ピンポーンと鳴るのは注文の合図。
番号を見て、そのテーブルに走る。
「あ"ぅ…?!」
前へ盛大に足を滑らすと、お客様のスーツの腕が私の脇下から鎖骨辺りまで伸び顔面衝突を塞いで下さった。
「失礼、お怪我は?」
「は…ぃ、…ん?あ、無いかと…」
あれ、ふと気付く。顔が格好いい。
「良かった。じゃ、注文いいですか」
「ぁ…はい…!」
急いで紙を出す。とっさすぎて、それしか出せなかった。
「カフェラテを1つ」
「はい、カフェラテですね。ホットかアイスどちらにされますか?」
頷きながら聞いてくれるって、親身な方。
それでも、お仕事だからちゃんとする。
「…アイスで」
カフェラテって、美味しいのか…?
「はい、わかりました」
緊張する、いや、した。
チンピラのお客様以来だな、緊張したの。
「ラテ1つ~!」
遅れてから返事はくる。
「はいよ」
これは、あの方分。
「やっぱもう1つ!」
「え?…はい」
こっちは私の一口分。
スープンで一口だけ飲んだ。
「っっう"ぇ…、苦い」
イガイガする…!変な味!!好感度下がったわ…