第5話:旅立ち
翌日の日曜日。
バグが起きると部屋はもうおひさまの温かな光りでいっぱいでした。おそるおそる階段を降りて下に行くと、おじさんは出かける準備をしていました。
「バグ、やっと起きたね。さあ、朝ご飯を食べたら一緒に出かけよう!」
おばさんもにっこり笑って「バグ、おはよう。」と言うと、さっそくバグのために遅い朝ご飯の支度を始めました。
おばさんのこしらえたお弁当を持って、おじさんはバグを魚つりに連れて行きました。今日もこの星の海はコバルトブルーにキラキラと輝いています。
おじさんとバグは隣りに並んで座ると、静かに、ただのんびりと魚がかかるのを待っていました。
「バグ。この星が好きかい?」
おじさんはふいに口を開きました。
「もちろん。」
バグは答えました。
バグはこの星が大好きでした。特に、一度おじさんに連れて行ってもらった場所である光景を見てからは、尊敬の気持ちすらいだいていました。
その光景。
白や青の大きな鳥たちが優雅に飛びまわり、遥か空から溢れ出ているような青い水は滝となって流れ落ち、虹色の滝つぼを生み出していました。その滝つぼの真ん中の岩場には人魚たちがたたずみ、美しい歌声を谷間中に響かせていました。
まるでこの星の神秘やいのちそのものが形になったみたいだ、バグはそう思いました。
「バグ。発明を頑張ることは、おまえの大好きなこの星にとっても喜ばしいことなんだよ。」
バグは黙って聞いていました。
「バグ。離れ離れになるのはおじさんもおばさんもつらい。さびしいと思っている。でも、おまえが夢を叶えることが私たちの夢であり、希望でもあるんだ。もちろん、この星にとってもだ。」
バグは思い出しました。自分の夢はみんなを幸せにする発明家になることだったということを。
もっと頑張って素晴らしい発明品を作れば、幸せになる人達がいるかもしれない。
もっともっと頑張って立派な発明家になれば、自分を育ててくれたおじさんとおばさんを喜ばせることが出来るし、この星の役に立つことも出来るかもしれない…
バグは決心しました。
たくさん勉強をして、立派な発明家になってここに戻ってこよう。
今はつらいけど乗り越えれば、みんなも自分もきっと幸せになれる。
おじさんはバグの顔をのぞきこみ、その決意をバグの表情から見てとると、小さくうなずきにっこりしました。
そうしてバグは数日後、大好きなおじさんとおばさんとお別れをし、この星をあとにしたのでした。
バグの新たな挑戦が始まりました。
全てはその夢のために…