最終話:ぼくの星
永遠のような、まるで一瞬のような、それは不思議な不思議な光のトンネルを猛スピードでつき抜けるとそこは・・・
バグはしばらく自分の身に何がおこったのか理解できませんでした。
ただ、意識がぼんやりと戻ってきたバグの目に最初に映ったものは、キラキラと輝くコバルトブルーの海でした。
ああ、きれいだ。
バグは思いました。
ここはぼくの星だ。
大好きな、大好きなおじさんとおばさんとみんなのいる、ぼくの星なんだ。
ぼくは、ぼくは、帰ってこれたんだ・・・。
バグのほほをあたたかいものがつたい、それはキラキラと光りながらコバルトブルーの海に溶けてゆきました。
ふいにバグは自分を見つめる視線を感じ、まわりを見わたしました。
すると、バグのとなりにはおじさん釣り糸を垂らしてすわり、バグをやさしいまなざしで見つめていました。
「バグ。この星が好きかい?」
バグはこのやり取りを覚えていました。
そう。マグラが初めて訪ねてきた次の日。
おじさんは別れを予感して元気のないバグを、この美しい海へ釣りに連れてきたのでした。
「バグ。おまえはこの星が好きかい?」
返事をしないバグに、おじさんはおだやかな口調でもう一度たずねました。
「もちろん。」
バグの答えはあの時と同じでした。
しかし、あの時とは今は違う。
バグはつづけて答えました。
「おじさん。ぼくはこの星が大好きだよ。だからぼくはずっとここにいる。もう二度とこの星を離れたりはしないし、したくないんだ。」
おじさんはバグの答えに目をどんぐりのようにまんまるにして、ちょっと困ったような顔をしました。
しかし、バグのしっかりとした顔つきとその決意のようなものをみてとると、小さくうなづきました。
「そうかあ。それは残念だ。おまえがこの星を出て立派な発明家になってくれればと思ったんだけどなあ。本当に残念だ!」
そういうおじさんの顔はとてもとてもすがすがしく、心の底からうれしそうに微笑んでいたので、思わずバグはふき出しそうになりました。
本当に、なんて心おだやかなあたたかい時間なのでしょう。
バグが忘れていた気持ちを一瞬で取り戻すことのできる、このあたたかな時間とコバルトブルーの海。
もうじき日が沈んで夜になれば、満天の夜空があらわれるのでしょう。
リドが最後に言っていた言葉。
―きみが望むところに―
そうか。ぼくが望んでいたのはここだったんだ。
この場所に、帰ってきたかったんだ。
これから家に帰ったらおばさんに何て声をかけよう。
やっぱりまずは、
「ただいま。」かな。
気がつくとおじさんは片付けを始めていました。
そしてバグにこう声をかけました。
「さあ、そろそろ家にかえろうか。発明家のバグ先生。」
おじさんとバグは手をつないで、おばさんの待つ家への道を歩き出しました。
バグの手は小さくて、おじさんの手は大きくてあたたかでした。
おじさんはバグに聞きました。
「お前の夢に変わりはないかい?」
バグは答えました。
「もちろん。」
バグの夢は今も昔も変わりません。
みんなを幸せにする発明家になること。
でも、もう二度と方法は間違えない。
刻々とその色を変えていく、この星の夕空。
それを見あげるバグの瞳に、一番星が小さくかがやきました。
最後まで読んでい頂きました皆様、本当にありがとうございます。 初めて投稿させて頂いたのですが、つたない文章と乱文でかなり読みづらかったと思います。 少しづつでも成長していけるように頑張りますので、今後ともお付き合い頂ければ嬉しいです。 このあと、1話だけおまけのエピソードをのせようと思っていますので、ぜひそちらも読んで下さいませ♪