第12話:リドの提案
バグは涙を集めて、星の美しい景色を、みんなの笑顔を取り戻すためにある発明品を作りました。
それは、真っ青に透きとおった、こぶしほどの大きさの石のようなかたまりでした。
この青い石は水の力を小さなかたまりに閉じ込めたもので、この石が当たればそこからは美しい水がまた滝のように生まれ始めるはずでした。
その青い石をバグは全部で10個作りました。
この発明品にバグは星の未来をかけたのです。
バグは念入りに計算に計算をかさね、その青い石が星にあたるように、思いきり飛ばしました。
しかし、遠くはなれたバグの小さな星にこの小さな青い石をあてることは、考えていたよりもずっとむずかしいことでした。
石は10個のうち、たったの3個しかバグの星にあたりませんでした。
その3個も、バグの計算した通りの場所にはあたらず、バグの期待はくだけ散りました。
もう自分にできることはない・・・。
もう流す涙も枯れ果れたバグのもとに、一人の発明家がやってきました。
その発明家は、リドでした。
バグは懐かしい旧友の訪問に、心があたたかい紅茶にふれたように不思議とほぐれていくのを感じました。
リドはバグを心配したマグラから、バグの星の状況や、バグが星を救うために必死で作った発明品が失敗したことなどを聞いていました。
リドはバグに聞きました。
「きみは本当に星をもとのように戻したいと思っているのかい?」
バグは強く答えました。
「もちろんだ。そのためだったらぼくは何でもする。でももう取り返しがつかないんだ・・・。」
そのバグの強い意志と深い悲しみを感じたリドは、息を少し深く吸うとバグにあることを提案しました。
リドの提案は驚くべきものでした。バグは目を見開いて聞き返しました。
「本当にそんなことができるの?」
リドはしっかりとした、自信のある口調できっぱりと言いました。
「きみが心から望むなら、それは可能だ。」久しぶりに聞いたリドのその言い方が、あまりにリドらしかったので、バグは思わずくすくすと笑ってしまいました。
こんなふうに笑ったのは本当に久しぶりだ、バグは思いました。
バグはリドの提案を受けることを決心しました。
それは、バグの今の生活を、いや、今までの生活を全て失うということを意味していました。