驚愕
数日たってもメリーの姿は見えなかった。
それでもしばらくは探すのをこらえた。
四日がたった頃に限界がきて、結局こっそりと酒場に足を向けた。
「メリーちゃん? 見てないよ」
マスターが不思議そうに言う。
「何かあったのかい?」
「まあ、はい」
曖昧に肯定したのはあまり詳しくは話せないからだ。
マスターの身の安全にもかかわる。
歯切れの悪い孝介を気遣ってか、マスターは深くは訊かずに言った。
「よくわからないけど、何か情報が入ったら知らせるよ」
「ありがとうございます」
落胆までは隠せなかった。
メリーが行く場所と言うのも他に思いつかない。
何かあったのかもしれないと思うと胸の奥がざわついた。
「メリー……」
「あ」
と言ったのはマスターだ。
彼の視線を追って振り返ると、こちらに歩いてくる者がいた。
目の前まで来ると立ち止まってフードを下ろす。
下から現れた顔には見覚えがあった。
「……リィリ?」
「お久しぶりです」
彼女は軽く頭を下げると、隣のカウンター席に腰かけた。
「その節はお世話になりました。おかげさまでアイラも元気です」
「ていうかあんた無事だったんだな」
「ええ。なんとか。どうなることかと思いましたが。今でもアイラの付き人をやらせていただいてます」
そこまで言って彼女はマスターにオレンジジュースを頼んだ。
その横顔を見ながら孝介は不審に思った。
「……それを言うためにわざわざ来たのか? いまさら?」
「それを言うためにわざわざ来ませんよ。いまさらね」
嫌味っぽく口元をゆがめて、それから不意に表情を引き締めた。
「単刀直入に言いましょう。メリーさんの居場所を知っています」
「なに……?」
思わず身を乗り出した。
リィリは頷いて続ける。
「既に魔法局に囚われています」
「なんで知ってる?」
「うちの楽団は魔法局にもつながりがありますから情報は少なからず流れてきます。数日前に少女を一人収監したという噂がありまして」
「なんで。どうしてメリーが捕まってるんだ……!」
思わずつかみかかろうとした孝介だが、リィリはひるむことはなかった。
「それはあなたの方が詳しいのでは?」
「っ……!」
冷たい目に、むしろこちらがひるむ。
あの夜のやり取りを思い出した。
メリーは、怒っていた。
さっさとジュースを飲み干し、立ち上がりながらリィリは言う。
「お伝えすることは以上です。あとはいかようにでもなさってください」
「いかようにでもって……」
「……」
しばらく黙って、それからリィリは口を開いた。
「せめて後悔だけはしないように。言えるのはそれだけです」
去っていく背中を孝介は見送った。




