王道学園の幼馴染み
王道学園初挑戦です。
宜しければご覧ください。
私立偀皓学園、いわゆるセレブの子息が通う山奥の男子校。有り体にいうと王道学園ーーホモ四割バイ六割ノーマル一割の驚異の魔窟である。
その風紀委員室に、二人の生徒が向かい合っていた。片方はサラサラの黒髪に吊り目気味な黒縁眼鏡の童顔で小柄な少年。片方はふわふわの茶髪に垂れ目のどこか甘い顔つきをした爽やかな大柄の青年。二人とも中々に整った顔立ちをしている。
青年は今にも泣きそうに顔を歪ませており、少年は小刻みに肩をふるわせている。突如、青年が口を開いた。
「もうやだ‥‥誰かあの転校生どうにかして‥‥!」
「ブアッハッハッハッハッハッハッハァッ!!」
青年の言葉に見た目に似合わない大声で豪快に爆笑しだす少年。それを見て本気で泣きに青年はかかった。
事の発端は2ヶ月前、季節はずれの転校生がやってきたのに由来する。王道学園に良くある展開と言えば分かるだろう。違いと言えば俺様生徒会長とチャラ男会計、無口書記と爽やかスポーツマンと風紀委員長が堕ちていないこと、そして転校生が変装をしていないことぐらいだ。
「いやーモテて大変(笑)だねぇ。爽やか(笑)スポーツマン君(笑)。」
ニヤニヤしながら青年に顔を近づけ『ねえどんな気持ち? ねえどんな気持ち?』と聞いてくる少年に青年、青野海人は叫んだ。
「ざけんじゃねぇーぞこのクソドチビがぁ!」
その言葉にびきりと少年、三条柚希の額に青筋が浮かんだ。笑み深くして柚希は叫び返す。
「おーそうかそうかこのデカブツがぁ! ウチュウジン呼んでやっても良いんだぞこちらとらぁよぉ!」
「‥‥くそっ!」
悔しそうに顔を歪めて舌打ちをする海人に爽やかスポーツマンの面影はない。忌々しそうに柚希を睨みつけるその様はまるで普通の高校生だ。
「まあ、幼馴染みのよしみでかくまってやってはいるがぶっちゃけ時間の問題だぞこれ。あのウチュウジンはイケメン大好きだからなあ。」
「それものすんごいブーメランだって理解してる?」
不意に真顔になった柚希にすかさず海人はツッコミ(物理)を入れる。それを難なく受けとめると柚希は嗤った。
「あいつはフクイインチョーを委員長だと思い込んでるんだよ。だから俺に火の粉が降りかかることはねぇ。」
「‥‥多くの生徒はお前が“本当の”風紀委員長だと知らないと思うけど。お前、基本的に全部海星従兄さんに押し付けてるし。‥‥余り迷惑かけんなよ。」
「おー後でフクイインチョーへ労っておくわ。」
クククッと嗤う幼馴染みに海人はため息をつく。昔から柚希はこうだった。人の裏を掻くのが大好きで、とんでもないウソつきの詐欺師。しかも実力があるから誰も文句を言えないのだ。
「まー待ってろよ。すーぐにあの害虫は消えて無くなるからさぁ。桜月と大地が来る前にはぜーんぶ終わらせてやる。だから、手伝え。」
そういって柚希は暗く、嗤った。見慣れたその笑みにため息をつく。
「つまりそれって囮になれってことだろ? まじ巫山戯んな。」
「えー。やだなぁ。そんなこと言ってないですよ?」
「急な猫かぶりやめろマジでキモイ。」
いつも教師の前でかぶるそれを見せられて海人は顔を顰める。それにケタケタ笑いながら柚希は続ける。
「じゃ、平穏な学園のために犠牲になってくれ海人。」
「‥‥ホンットお前って性格ワリィ‥‥。」
犠牲と言ってもあの転校生のご機嫌取り位だろうが言い方というものがある。それを訴えると柚希はチェシャ猫のようにフンワリと、妖しく微笑んだ。
「そんな性悪男に惚れているのはどこのどいつだ?」
その言葉に海人も思わず嗤う。ーー柚希は、昔からこうだった。平気で人の心をを踏みにじり、かと思えば気まぐれに手を差しのばす。ひどく残酷な、天使の笑みを浮かべた悪魔。
そのあまりの暴虐さに、惹かれたのは自分自身。
「ーー俺だよ。」
嗤いながら、柚希の顔を上に向かせる。椅子に座って余裕げに、こちらに笑みを向ける柚希の憎らしい唇に海人は噛みついた。
ーー生徒会がリコールされ、転校生が学園から消えたのはそれから二週間後のことだった。
青野海人‥‥二年生。爽やかスポーツマン。親族や幼馴染みの前ではただの苦労人。口は悪いし手も意外とすぐに出る。喧嘩はそこそこ強い。一応柚希の幼馴染み兼恋人。転校生につきまとわれている。無自覚腹黒で実は束縛癖がある。多分柚希が他の男に走ったら暴走する。病弱な弟のことを可愛がっており、来年来ると聞いて反対している。
三条柚希‥‥一年。小柄なことがコンプレックスな合法ショタ。腹黒で鬼畜。しかも外道。喧嘩はクソ強い。ブラコンで転校生潰したのも来年来る弟のため。海人の幼馴染み兼恋人。転校生からは生贄を差し出した。執着心が強く、気に入った人や物がとられるのが嫌。
海星‥‥副委員長。海人の従兄。苦労人。多くの生徒に委員長だと思い込まれている。
桜月・大地‥‥桜月は柚希の弟で大地は海人の弟。
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