面に宿るのは霊か、気か
「ほら、出来ましたよ、貴方へのお面です。」
昔の天岩戸と祇園精舎の出来事に習い国家安泰のために、太子様の命で私が六十六の面を受け取り、日本の国の数になぞらえて六十六番の猿真似をすることになった。今は日本は少しだが乱れていた。
お面を作って頂いたお方は聖徳太子様、私は秦河勝。
私は秦の始皇帝の生まれ変わりである。このことを知っているのは今上の帝だけである。
数日後
橘の内裏、紫宸殿にて
「さあさあ、我こそが河勝也。」
私は幾つもの舞や物真似をした。
女や法師、神に翁だ。
どのくらい経ったのだろか。
日も落ち始め、私もヘトヘトだ。
「さあこれで六十六番踊り終わりましたよ」
太子が言う。
お面で外が見にくかったのと踊りに集中していたせいか観客の量に驚いた。貴族が沢山集まり、帝にも来て頂いた。このようなもので感動しててただけたか分からない。
「もう疲れました。」
「これで日本も安定します。では今日はお帰りください。お面は貴方に差上げます。大切にしてください。」
ここでパッと見ていたものがシャットアウトされた。
「ほら、起きてください。」
僕は目を開いた。いつの間にか倒れていて店の布団で寝かせられていた。まだ外の景色は明るい。僕は確かにこの目で河勝や太子を見た。
店主の言っていたことは全て本当だった。本当のこととは全然思ってもいなかったので未だに現実が受け入れられない。
「如何でした?お客さまが見ていた景色は全て実際に昔起きたことなんですよ。」
店主が笑顔で言う。
「ありがとうございます。あのお金は本当に良いんですか?」
「うーん、お面消えちゃったし、ざっと30万かな」
「えっ!お面何処!30万なんて払えないです。」
「ウソウソ。ただでいいよ。」
「お面は何処に行っちゃったんですか?」
「九十九神に戻れたんだよ」
そうすると店主は一冊の書物を持ってきた。
「これは『百器徒然袋』江戸時代に描かれた妖怪の書物だよ。見る?」
僕は店主から百器徒然袋を受けとるとパラパラとページを捲った。
そこには
何も描かれていない。いや正確に言えば妖怪がいない。背景や説明の文は描かれているのに。
「それ変でしょ。妖怪がいないの。だけどここを見てみて。」
店主は僕から本をとると或ページを開いた。そこには障子と能か申楽で使うような太鼓、そしてお面の妖怪がいた。
「きっと“面霊気”は九十九神になり、絵に戻れたんです。」
現実離れなことが目の前で連続して起こる。
「どうゆうことですk」
「おっと、夏とは言えもう5時を過ぎましたね。まあ少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。」
「じゃあそろそろ帰ります。」
僕の心の中は謎だらけだったが取り敢えず帰ることにした。
「またお待ちしています。今度は友達を連れてでも。」
「ずっと気になっていたのですが、店員さん名前教えてください。」
「鳥山蛩筆だよ。ではありがとうございました。」
鳥山?僕は深く考えず帰ることにした。