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マイルームダンジョン③

「こ、この感覚は……!!」


 ニュータイプに覚醒したような感覚だった。今の俺ならファンネルも使いこなす事が出来るだろう。先ほどの俺の大声に反応したのか、洞窟の奥からこちらに向かってくる気配を感じる。


 これこそが、ニュータイプの力では無く、魔物感知アビリティの効果なのだろう。接近する気配は二つ。小型の生物だ。そして、俺より遥かに弱いザコだ。理屈は分からないが、そんな事まで分かってしまう。


 俺は懐中電灯を床に起き、銅の剣を構え、接近してくる気配を待ち構える。

 それにしても便利なアビリティだ。俺の視界に入った瞬間、先制攻撃をお見舞いしてやろう。


 俺の視界に入るまで5秒……3、2、1、さぁ来い!!


 事前に察知していた通り、小型の生物が二匹、俺の視界に飛び込んできた。


「ギャアアアア!! グロいグロいグロい!!!」


 俺は先制攻撃をお見舞いするどころか、精神攻撃をお見舞いされていた。

 その生物は、ゴキブリの足をさらに倍に増やしたような見た目で、大きさも小型犬と同程度だった。地球上でもっとも苦手とする害虫に似た生物の襲来に、俺は激しく動揺していた。


 その生物を視界に捉えた瞬間、鑑定アビリティが発動したのだろう。

 俺の脳に目の前の生物の情報が流れ込んで来る。


 その超絶グロい生物の名前は『ザ・グレート・ゴキ』と言う。レベルは1。虫系のモンスターで火に弱い。どこの馬鹿が付けた名前かは分からんが、俺の少年時代に活躍していたプロレスラーを思わせるネーミングだ。コイツも見た目を裏切る事の無い悪役なのだろう。というか、やっぱりゴキの仲間かよ!


 その異形のゴキは、俺の目の前までやってくると、臨戦態勢に入った。

 そう、異様に発達した後ろ足で二足立ちして見せたのだ。


「って、グロいわ!!!」


 俺は恐怖心も忘れて、ついつい銅の剣でツッコミを入れてしまう。剣術アビリティを習得している恩恵なのか、妙に手に馴染む剣を、ハリセン感覚でゴキの頭にバシッと叩き付けた。


 軽いノリでツッコミを入れたつもりだったのだけれど、予想外に俺の能力が高かったのか、もしくは銅の剣の性能が良かったのか、ゴキの身体は『ズバァッ』と縦に裂け、一撃で絶命した。ガキの頃に見たアニメで、南斗の人が悪い奴を裂きまくっていたが、こんなにグロい事をしていたんだな。もう二度とあの拳法を使いたいなどと思うまい。


 俺の脳にまた情報が流れ込んで来る。経験値を2ポイント獲得したらしい。バカヤロウ。今はそんな事、どうでもいいんだよ!!


『キシャアアアア』


 お前のどこに声帯があると言うのか。もう1体のゴキは謎の奇声を上げ、こちらを威嚇しているようだった。そして、二足歩行でこちらへ突進してくる。


「やば……」


 そう、ゴキと言えば超スピードの代名詞のような存在だ。このサイズのゴキに超スピードで体当たりされようモノなら、流石に無傷じゃ済まないだろう。俺は剣を前方に構え、防御態勢に入る。

 そして、ゴキの突進が。そう、超スピードの突進が。おかしな事に、なかなか来ない。


 ふと見ると、二足歩行になったゴキは、超スピードとは真逆を行く超鈍足でこちらへ近付いてきている。


「台無しじゃねーかボケェ!!」


 二度目の剣ツッコミが、二体目のゴキの身体を両断する。これまた一撃で絶命した。言うまでも無いが、経験値を2ポイント獲得したとのお達しが脳内にあった。


 絶命したゴキの死骸は、瞬時に溶けて無くなり、その場には何かが残った。


 俺の目が取り残された何かを確認すると同時、鑑定アビリティが発動する。『甲虫の皮 素材 特殊能力:無し』だそうだ。これがゴキのモノだと思うと、触る事すら嫌なのだけれど……序盤の資金稼ぎと言えば、こういう戦利品を売る事だろう。売る相手が居ればの話だが。


 一応、残された甲虫の皮を拾い上げると、俺はインベントリにしまう事にした。誰にレクチャーされたわけでも無いが、なんとなく予想がついていた。


 俺はタブレットをインベントリ画面へ切り替え、手に取った甲虫の皮を画面へと押し込んだ。予想通り甲虫の皮は画面の中へと消えていき、インベントリの中身を確認すると、しっかり甲虫の皮が表示されていた。


 幼女がタブレットの中から取り出した剣と、俺用のタブレット。これらはつまり、あの幼女のインベントリから取り出したと言う事なんだろう。


 そんな事を考えながら、俺はタブレットを操作し、初期画面へと戻す。

 すると、新しいアイコンが解放されている事に気付いた。『魔物図鑑』だそうだ。ありがちなモノを次から次へと放り込んでくるね。一応、確認しておこう。


 魔物図鑑を見ると、いくつかあるタブの虫系タブが解放されていた。虫系タブを開き、中身を確認すると、大半がシークレットのままだが、『ザ・グレート・ゴキ』の項目が解放されていた。俺は確認したくない気持ちを抑えつつ、念のためその項目を開く。


 そこには予想通り、あのグロい生物の画像と名前、詳細が書かれていた。気になる所があるとすれば、ドロップアイテムの項目に『甲虫の皮』の記載があるのだが、レアドロップの項目がシークレットになっている。

 そして『討伐数:2』と書かれている横に、『討伐ボーナスまであと8体』と書かれている。ボーナス効果の項目もあるが、シークレットになっている。


 レアドロップに、討伐ボーナスか。これがゲームならやり込みの一環として、狩りまくるんだろうけども。残念ながら、こんなグロい生物を大量に狩れるような精神力を持ち合わせてはいない。

 とは言え、ダンジョン攻略をする上で有利になるかもしれない重要な要素なのだろう。覚えておいて損は無いだろう。


 初めての戦闘を終えた俺は、改めてダンジョンの奥へと歩を進めて行く。

 最初に出会った生物のグロさに頭を痛めながら。

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