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イーヴィル・アイ(邪視眼)  作者: ランプライト
第XIII章:現実×世界
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-064-

ドアが開かない? いつの間にか、…鍵が掛かっている?

ええっ? どうして? さっきまで空いてたのに、誰かが閉めた? 閉じ込められた?


…どうしよう? 焦るな、私、


携帯を取り出して、…圏外? ちょっと待て、今の今まで地下に居たから、通信が切れてる。…一回電源を落として、入れ直せば。


それで美弥子にでも連絡して、用務員さんに頼んで、カギを開けてもらえば良い、それだけの事、



携帯が、再起動して、…相変わらず圏外!

ここも、携帯つながらないの?


藤森:「この、ガラパゴス!…しっかりしなさいよ!」


どっと、脂汗が、…いや、じわっと、冷や汗が、…


何時かは、誰か来るでしょう。

でも、何時? 明日? 明後日? 一週間誰も来なかったら、私どうなっちゃうの?

大体、何処でおしっこすれば良いのよ!


待て待て、普通何処かに、連絡用の電話か、最悪非常ベルが有る筈よね、それで、何とか人を呼ぶ事は出来る。 騒ぎが大きくなって、大目玉喰らいそうだけど、兎に角被害者面を決め込もう。


うん、女子高生が学校で小とか大とか漏らすなんて、…有りえない。



私は、再び長い階段を降りて、暗い廊下に辿り着く。


生唾を飲み込んで、目を凝らし、廊下の蛍光灯のスイッチを、…入れる。




蛍光灯が灯って、…廊下の反対側の端に、…




人影?が、見えた。


誰? 何? 嘘? さっきは居なかったよね! って言うか、さっきは電気つけなかったから、気づかなかっただけかも、って、…あの人、何でこんな暗闇で、じっと、…何してんの?


もしかして、…



次第に、心臓の鼓動が高鳴ってくる。



勇気を振り絞って、正体を確認する。

長い髪を、ざんばらに垂らして、顔も、表情も見えない。

その奥から、何を見ているのかも、判らない。

白い、白衣の様な上着を着て、猫背気味に、じっと立ち尽くしたまま、動かない。


もしかして人形?


人間じゃなくて、マネキンか何かじゃない? …多分、そんな感じ。



藤森:「あの、…すみません、」


一応、挨拶してみる。


藤森:「…もしもし、」


魑魅魍魎の類は、言葉をうまく操れない。「もしもし」とは、電話が普及し始めた頃に、受話器の向こう側が人間か、アヤカシかを確かめる為の、合言葉だった。


返事がない、やっぱり、マネキンだよね。…とんだ、笑い話だよ。


どうする?


でも、もしお化けだったら、どうすればいい?

そうは言っても、階段のドアは鍵が閉まったままだし、逃げ場は、…無い。



「あんなもの」は、気にしない!

見えない振り、もう、話しかけちゃ駄目だ。


「あんなの」は、無視して、早く、地上と連絡できるモノを、探さないと。


私は、恐る恐る、辺りを見回してみる。

廊下には、電話の類は、見当たらない。


仕方がないよね、…非常ベルを、鳴らすか。


マネキンだか、幻覚だか、お化けだか判らないけど、何時迄も「あんなもの」と同じ空気を吸っているのは、…気味の良いものではない。



私は、消火栓を、非常ベルを探す。

それは、廊下の真ん中で、いつも通り、赤い光を放っていた。


つまり、そこまでは、「アレ」に近づかないといけない、…つまりそういう事だ。


私は、大きく一度、深呼吸をして、…覚悟を決める。

何、「あんなの」ただのマネキンに決まっている。 後で笑い話の種になる、そういう奴に決まってる。


私は、恐る恐る、一歩一歩、非常ベルの方へと、歩いて行く、


と、…突然!







その、長い髪の女の「何か」が! …私に向かってすごい勢いで!!


走ってきた!!!!



…えええっ! えええええーっ? うそ! 嘘嘘!

(注、驚きと恐怖で、実際には声が出ていません!!)




足がすくんで、…動かない、腰が抜けて、…動けない、


ざんばら髪の「それ」は、私を、…私に、…私の、…ほんの10センチ迄近づいて、

廊下にへたり込んだ私の頭上から、覆いかぶさる様にして、



それ:「お前、ポマードを知らないかい?」


えっ?


何で、ポマード? この人、口裂け女の従姉妹か何か??



それ:「私のポマードを知らないかい? お腹が空かないかい? あたしゃもう4年以上何も食べてないんだよ。 お前、ポマードを知らないかい?」


知らないって答えたら、どうなるんだろう? あるいは知ってるって答えたら、どうなるんだろう?



長い前髪に隠れた黒目だけの瞳が、確実に私を、…ロックオンしている!



それ:「ポマードだよ、ポマード、知っているんだろう、さてはアンタが隠したんだね酷い子だね、そんな事をして何が楽しいんだい? さああああ、早くお出し! ポマードを出すんだよ!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!ポマード!」


うるさい! こいつ、うるさい!



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